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第六十七話 ジオスコ村のトンネル

 ジオスコ村はカスルの村と何故か雰囲気が似ていて少し違和感を感じた。アーシャによると理由は単純でモーソン山を囲んでいる村には純粋な村民が僅かしかいないらしい。あくまでもトンネル工事の為に作られた村なので、その関係者と村の周りで活動する冒険者だけで村の人口の殆どを占める。農家もいない為、手が空いた奴隷が畑仕事をしているそうだ。


 当然に畑仕事の最中は足かせが外される為、脱走を考える者が増えてしまう。脱走者には捕まってしまった場合は未来など無くなってしまうので、ずさんな警備の割にはまだいい方らしい。トンネルが完成した暁には入村者が増えると思われるがそれはまだまだ先の話になるだろう。


「どう、少しは四つの村の事を理解できたかな」


「今は長居する村ではないって事は理解出来たよ、トンネル工事なんて意味あるのかな」


 宿屋で部屋を確保した後で三人でトンネル工事を見学しに行ってみる事にした。村の端にあるトンネルはかなりの大きさで、機械も使わずに手作業だけでやっているとは思えない程の出来栄えだ。


「かなり凄いな、けど手で掘るのではなくて魔法でやった方が速いんじゃないか」


「仁さん、そんな事をする魔術師なんていないですよ」


 ラルフの仕入れた情報によると、最初は東西南北でトンネルを作り始めたのだが、今は殆どの人員を北と南を繋げることに集中しているそうだ。ただ繋がったとしても北には栄えている街がある訳ではないので、一説によると牢獄が一杯だからトンネル工事を利用しながら間引きしているのではとも言われているらしい。


「死刑の変わりなのがトンネル工事か」


「あくまでも噂ですけどね、大体トンネル工事はつい最近始まったらしいですよ、僕もクリフトの街にいた時は知りませんでしたから」


 最近になって国の中が色々と変わりつつあるらしい。まぁ冒険者である俺にはあまり関係は無いと思うが。そんな話をしながらトンネルを眺めていると、終了の時間になったらしく犯罪奴隷達が続々と出て来る。両足は鎖でしっかり繋がれていて、さらに鉄球までもが繋がれている。その鉄球を両手で持ちながら歩いている。


「あれじゃ、死亡事故が増える訳だね」


 アーシャが哀れみを顔に浮かべながら呟いた。その時に目の前を歩いている二人の男が何故か俺に詰め寄って来た。


「手前、お前のせいでこんな所に来ているんだぞ、何か言ったらどうなんだ」


 アーシャの顔を見るが、アーシャにも覚えが無いようだ。それでも彼等がもっと俺達に近づいて来ようとしたときに、彼らの背中に向け強力な鞭による一撃が与えられた。


「貴様ら、何を勝手に列を乱しているんだ。そんなに元気ならお前らの休憩は無しだ。とっとと中に戻れ」


 無理やり引きずり起こされた二人はまたトンネルの中に戻されて行った。ただ二人の内の一人が捨てセリフを置いていく。


「お前、もう隻腕になっていやがる。お前も直ぐに死ぬのだろうな、それまで亜人と楽しくやっていろよ」


 俺の事は別にどうでもいいが、アーシャの事を馬鹿にした事は許す事が出来ず、そっと「ニードル」を出現させ足裏をずたずたにしてあげた。当然そいつは立つ事は出来ずに兵士によって蹴り上げられている。かなり深く迄伸ばしたので、当分は歩く事すら出来ないだろう。彼らが何者であったか、最後まで分からなかったが、ラルフはクリフトの街で見かけたような気がすると言っていたが、もうどうでもいい事だ。


「何か白けたな、とりあえずここのギルドでも覗いて見ようか」


 ギルドは閉まる寸前だったようで職員が後片付けをしている最中だった。掲示板にはほとんど依頼表は張っていなく、職員によるとここで稼ぎたいのなら、北の森へ魔獣退治しに行った方がいいと言われてしまった。北の山にはたいした魔獣はいないはずなのだが、たまに帰って来ない冒険者がいるので、行くなら十分に注意しろと言ってきた。


 これ以上この場にいても仕方がないので宿屋に向かう。この村では犯罪奴隷は一ヶ所に集められている訳ではなくバラバラに隔離されているようなので、歩いていると村の至る所から鎖の引きずる音が聞こえてくるのが何だか不気味だった。


 その日の夜、眠りについていると、いきなりけたたましい鐘の音が鳴り響いた。窓を開けて外を見てみると兵士がトンネルに向かって走って行く姿が見える。


「仁さん、どうします、行ってみますか」


「そうだな、とてもじゃないが寝ている場合じゃないようだな」


 一応アーシャの部屋を訪ねたが、いくら待っても応答がないので二人で行く事にした。

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