第六十六話 ジオスコ村へ
ラルフに食事をさせながら仕入れた情報を話して貰った。モーソン山のトンネル工事は最初、専門家と低ランクの冒険者でやっていたそうなのだが、かなり事故が多発した為に最近になって犯罪奴隷が冒険者の代わりを担うことになった。
嫌々やらされているので事故件数は増えてしまったようだが、死なない限り作業をさせる事が出来るし変わりはいくらでもいるので進行状況は良くなっていたそうだ。ただ犯罪奴隷の中には隙を見て逃げ出すものがいて、それが盗賊団を作っている。
「こんな田舎だったら、商隊の往来は少なそうだから、とっとと他へ逃げているんじゃないのか」
「殆どはそうだと思いますけど、中にはこの辺りを根城にしている者もいるみたいですね、脱走なんてしたら正規ではもうこの国の村や街には入れませんからね、ちなみにこの辺りの盗賊の死体は大銀貨五枚で引き取ってもらえるそうです」
盗賊一人で大銀貨五枚とはいい稼ぎになりそうだが、出来れば人を殺すのは避けたいと思っているので、ゴルドナに着くまでの間は盗賊に出会わない事を祈ろうと思う。
翌朝になり、走トカゲを三匹借りようと思ったら、アーシャに止められて馬を二頭購入する事になった。一頭はラルフが乗りもう一頭に俺とアーシャが乗る。
長い期間、走トカゲを借りるより馬を購入した方が長い目で見れば安く済むそうだ。今日の目的地のジオスコ村までの道は馬車がすれ違うのがやっとの広さでしかない。木が生い茂っている為見通しも悪く、晴天のはずなのにうっすらと暗い道になってしまっている。
「何だか嫌な感じの道だな」
「そうかも知れないけど、仁の馬の練習にはもってこいだよ」
右手のみで操縦しているのでふらついてしまうが何とか真っすぐ進もうと努力しているなか、いきなり目の前の地面に矢が突き刺さった。
「お前ら、馬と全部の荷物を置いて行きな、後ろにも仲間がいるから逃げられるとは思うなよ、まぁそこの姉ちゃんは帰れないがな」
兵士から奪ったのであろう銀の鎧を着ているのが二人と、皮のジャケットを着ているのが四人いて道を完全に塞いでいる。後方は見えないが、彼らを信じるのであれば数人はいるのかも知れない。
「ラルフ行くよ、魔道具は禁止、仁はそのまま待機していて」
弓矢を持っている奴がいたので、そいつにだけ「ショット」で肩を撃ち抜き、後は二頭分の手綱をしっかり持って待機する。アーシャは人型のままでラルフと同じ速さで盗賊に迫って行く。
「ふざけやがって、男は殺してしまえ」
盗賊もアーシャ達に迫って来る。ラルフは更にスピードを上げて先頭を走っていた盗賊の首を貫き、そいつを前蹴りして剣を首から抜いてから続け様に二人の盗賊を肩口から斜めに切り裂く、さらにもう一人に向かって行こうとしたが、左から槍が伸びてきて進行を塞がれた。
アーシャがその槍を下から偃月刀ではじき、そのまま上から振り下ろす。綺麗に頭上から入った偃月刀はそのままへその辺りまで切り込んでいった。
「ラルフ、視野をもっと広くしなさい」
「はい」
アーシャの声に反応しながら剣を横薙ぎで振り抜き、盗賊の首と胴体は分断された。もう一人の盗賊は既に森の中に消えていき、目の前には五人の盗賊の死体が転がっている。
「ラルフ、何だよやれば出来るね、心配して損したよ」
「ありがとうございます。もっと頑張ります」
後方にいた盗賊は一度だけ姿を見せたが、仲間が簡単に死んでいくのを見て森の中に姿を消す。狙えば簡単に殺す事は出来たが見て見ぬ振りをした。
「仁、この死体はお金になるけどどうする」
アーシャはこっちに戻って来ながら言ってきたので、俺は首を横に振りながら答えた。
「面倒だし、気持ち悪いから止めないか」
二人とも賛成してくれたので、俺は「ホール」で穴を開けた後で、その中に死体を入れ蓋をする。こうすれば魔獣も気が付かないだろう。
「ラルフはお疲れさん、上手く倒せたじゃないか」
「槍の対応に失敗してしまい、アーシャさんに助けられてしまいました」
「魔道具を一切使っていないのだから十分だよ、ただ仁が手助けをしたのは余計だったけどね」
弓使いをラルフにやらせるつもりだったようだ。まぁ倒す事は出来ると思うが心配してしまっただけだ。
その後は無事に進むことが出来て、夕方よりも前にジオスコの村に辿り着いた。




