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第六十五話 モーソン山の麓

 俺達はギルドでゴルドナ迄の護衛の依頼があるか探したが、残念ながら見つからなかった。どうしても南には王都があり、王都周りでゴルドナに行く者ばかりで、わざわざ遠回りしながらゴルドナを目指すものなどいなかった。


 諦めて宿屋へと戻ったのだがラルフの姿はなく、ラルフが戻って来たのは夕食時でその姿は見るも無残なほどボロボロだった。


「どうした、一体何があった」


「喧嘩とかではないので心配しないで下さい。ゴンザさんに紹介してもらって剣士の方と手合わせをしていたのですよ、かなりやられてしまいましたけど」


 ラルフは食事を流し込むように食べてから直ぐに部屋に引き上げて行った。その様子をただ黙って見ていたが、ラルフが居なくなってたのでアーシャに尋ねる。


「急にどうしたんだ、何かあったのか」


「当然あの事だよ、ラルフは剣士として幼い頃から鍛えていたのに、ワイバーンには一太刀も入れる事が出来なかったからね、かなり悔しいんじゃないかな」


「まだ二十歳だろ、それにゴンザとアーシャが攻撃をしていたのだからしょうがないじゃないか」


 アーシャは首を横に振る。


「年齢なんか関係ない。冒険者として依頼を受けたのだからちゃんと仕事をしなければ駄目なんだよ、冷たい言い方すると、途中で抜けたD級の二人組の方が正解だったかもね、それが分かっているから鍛え直しているんだろうね」


「それなら黙って見守ってやるしかないな」


 食事を終えた後で部屋に戻って見ると、すでにラルフは熟睡していた。簡単にパーティに向かい入れてしまったが、それがラルフにとって良かったのだろうか。


 翌朝になり、俺達はカスルの村へ定期便の馬車で行く事になった。馬車の中は俺達ともう一組しか乗っていないのでかなりくつろげる。ラルフはぐっすり眠れたせいなのか、元気を取り戻したようだ。


「仁さん、カスルの村からはどのようにして次に進むのですか」


 アーシャに任せっきりなので、直ぐにアーシャに視線を送る。それに気が付いたアーシャは代わりに答えてくれた。


「村で情報を仕入れてから決めるつもりだよ、モーソン山を越えて一気にいくか、北に迂回してジオスコの村経由で行くのかの二択だね」


 その話をしていると、馬車の中にいたもう一組の中の一人の男が声を掛けてきた。


「聞こえてしまったので教えるが、モーソン山を越えて行くのは多分無理だぞ、この間山道で土砂崩れがあったので道はかなり危険な状態になっているはずだ。いつもだったら王国が修繕依頼をしなければいけないのだが、今はモーソン山のトンネル工事ばかりに予算を使ってしまい、山道なんかどうでもいいのだろうな」


 俺がお礼を言おうと立ち上がると、急に馬車が揺れ始めたので転んでしまった。


「敵なのか」


「仁、慌てないでいいから後ろから外を見て見なさいよ、理由がちゃんと分かるから」


 言われた通りに後ろのカーテンを捲ると、南の王都へと続く道はちゃんと舗装されているのだが、今俺達が通っている道はまるで獣道のようで、辛うじて馬車が通過できる程度だった。


「どう分かった。モーソン山の周りは開発が進んでいないからこんな感じなんだよ」


「けど、この道からでもゴルドナに行けるのだろ、それなのに何故なんだ」


「別に何もしていない訳じゃないと思うけど、王都周辺の整備の方が最優先だからね、だからゴルドナから王都迄の街道はちゃんとしているよ、ただ王都周りなんだよね」


 アーシャに相談されたとしても、ヨアキムの伝言にあったから王都周りで行く事はなかったが、何故に王都に近寄っては駄目なのだろうか、アーシャに聞こうと思ったら、急に吐き気が襲ってきた。


「仁さん、今ヒールを掛けても意味が無いので、到着するまで頑張って下さい、もう少しですよ」


 目を開ける事すら出来ず、ただひたすら時間が過ぎるのを待っている。昼過ぎにはカスルの村へ着いたので、急いでラルフに「ヒール」を掛けてもらった。そのおかげであっという間に苦しみから逃れられることが出来た。


「助かったよ、もうここから馬車は勘弁して欲しいな、馬の方がいいのかな」


「そっちの方がましだね、この先は盗賊が良く現れるから野営しなくていいようにしたの朝に出発しようよ」


 アーシャの提案に従いこの村で一泊する。宿は一泊銀貨七枚の普通の宿だったので、個室浴場などある訳もなかった。


 暇つぶしに三人でこの村を探索しようとしたが、ラルフはこの村のギルドに向かって行った。またしても練習相手を探しに行ったのかも知れない。


「アーシャか俺なら只で相手してやるのに、何でわざわざ探しにいくんだ」


「いいんじゃない、好きにさせてあげようよ」


 ラルフはその日もボロボロになって戻ってきたが、自分の練習だけでは無く、盗賊の情報も持ち帰って来た。 

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