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第六十四話 つかのまの平穏

 ゴンザを先頭にはやる気持ちを押さえながら入ろうとしたが、肩をしっかりと掴まれてしまい前に進みことが出来ない。かなり力が入っているらしく今にも肩が潰されてしまいそうになるほど、俺の肩に指が食い込んでいる。嫌な予感しかしないがゆっくりと振り返ると、案の定そこには無表情のアーシャがいた。


「様子がおかしいから後を付けて見たら、仁もこういうとこが好きなんだ」


「いや、ゴンザが話があると言うので、俺はただ付いてきただけなんだ」


 案内を始めていた獣人族の女性は既に中に入ってしまい、入口の前にただゴンザとウンナが呆れた顔をして立っている。ゴンザは諦めたように首を振りながら爆弾を落としていく。


「ごめんなアーシャ、今日は何故か仁が元気が無いようだったから連れて来たんだ。仁のタイプが綺麗目の大人の女性だって言ってたからさここにしたんだ…………もう無理だな、またな仁」


そう言いながらウンナと共に違う店へと消えて行った。


「別に仁も行けば、心配して損したよ」


 アーシャは振り返りもせずに帰って行く。俺はただアーシャの後ろに付いて行く事しか出来なかった。暫く歩くと突然振り返り言ってきた。


「何かムカつくな、明日のギルドの後は買い物に付き合ってよね、勿論仁の驕りだからね」


「分かったよ、奢らさせてもらうよ、この街にはいろんな店があるみたいだからな、いくらでも付き合うよ」


 何とかアーシャの機嫌が治まりつつあるので、もう店の事は諦めて宿に戻る事にした。別にアーシャに気を使う必要は本来ならば無いのだが、これ以上同じパーティの仲間として気まずくなりたくないので我慢するしかない。宿の部屋の中ではラルフが剣の手入れをしている最中だった。


「やはり見つかってしまったようですね、僕はアーシャさんを必死に止めようとはしたのですが、言う事を聞いてくれなくて駄目でしたよ」


「気を使わせてしまって悪かったな、今日は諦めてまた次回チャレンジするよ」


 そのままベッドに潜り込むと直ぐに眠りに落ちて行った。


「この二人は一体何をやっているのか」


 軽く呟くと、またラルフは手入れを再開する。


 朝を迎え、部屋を激しくノックする音がしたので目を開けると、窓の外からは陽がすっかり上がっているのが見え、今日は随分と深く眠ってしまったようだ。ノックをしてきたのはやはりアーシャで、部屋に入ってくるなり支度を早くするようにとせかしてきた。ゴンザとギルドで待ち合わせをしている事を思い出し、急いで出かける事にする。


 この街のギルドはクリフトの街のギルドと大きさに違いは無いようだが、違いと言えば一階が受付で二階に食堂がある位だ。ゴンザはギルドの前で馬車に乗りながら待っていた。


「お前ら遅いぞ、待ちくたびれたじゃないか」


 そう言っているゴンザの顔色はかなり悪く、完全な二日酔いをしている。若干羨ましかったがその事には触れずにギルドの中に入って行くと、流石に昼近くになっているので受付には殆ど人がいない。ここの職員は全てリタイヤした冒険者しか雇わないのか、誰しもが目つきの鋭い老人達だ。


 一番端の受付で依頼完了の証明書とシルビオから貰ったワイバーンの討伐証明書を見せ、さらに表に止めてある馬車の中に素材が入っている事を告げると、直ぐに作業員が現れたのでラルフは彼らを案内した、


「随分とあっさりしていないか、ワイバーンなんだぜ、もっと驚いてくれると思ったのだが」


 ゴンザががっかりしたように告げると、受付は冷静に答えた。


「朝一でモーリッツが大騒ぎしながら来たんだよ、その時は久し振りのワイバーンにギルド中で盛り上がったさ、その時にまだ持ってくる奴がいるって聞いていたからな、驚かないのもしょうがないだろ」


 討伐の第一功労者はアーシャになっていたが残念ながらB級に昇格するまでは届かず、C級のままだった。本人はあらかた予想は付いていたらしく別に落ち込んでいる様子はない。俺がD級からB級に一気に上がったのは相当のイレギュラーな事だったのだと今更感じてしまう。


 清算が全て終了しゴンザと最後に食事でもしたかったが、二日酔いでそれどころではないらしく、その頃にはさらに具合が悪くなってきてしまったのでラルフが送って行く事になった。


 早くも二人だけになってしまったが、アーシャの希望通りに買い物に付き合う事にする。一体何軒回ったのか分からなくなるほど色んな店を回ったが、久しぶりにアーシャの笑顔が見れているので嬉しい限りだ。


 ただアーシャはまだ旅の途中なので、あまり荷物の邪魔になってしまうような物は買っていない。アーシャもいつか定住先を見つけ安定した居場所を見つけて欲しいものだ。


 人の事ばかり言っている場合では無いのは承知の上だ。



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