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第六十二話 討伐の後で

 低空飛行と言ってもそれなりの高さが有った為に、着地の時に足を挫いてしまったようで立ち上がる事が出来ない。アーシャに肩を貸して貰おうとしたが、何処に行ってしまったのか見当たらなかった。少し経つと路地の暗がりからアーシャが出てきた。


「何処に行っていたんだ」


「着替えに決まっているでしょ、あのまま人型に戻ったら裸になってしまうじゃない、何も身に付けていなかった事を気が付かなかったの」


 黙って頷くと盛大に溜息を吐かれた。アーシャの服は完全な獣化でも伸び縮みするので問題はさほどないのだが、動きにくくなってしまう為に服を全て脱いでいたようだ。ただそれだけが理由の全てではないようだが。


 ラルフ達がようやく追いついてきたが、半分になったワイバーンを見つけ唖然としている。


「ラルフ、悪いけどそっちを見ていないで、先に俺の脚を直してくれないか、挫いてしまったようでかなり痛いんだよ」


「分かりました。すぐヒールを掛けますね」


 ラルフが仁の側に駆け寄って詠唱を唱えていると、シルビオ達の騎馬隊が到着して仁と、ワイバーンを見ながら茫然としている。


 モーリッツの方はどうしていたかと言うと、今まさに解体をしている最中だった。塔の上を見に行っていた奴が一人の頭から血を流している意識の無い兵士を抱えながら降りてきた。


「いやぁ重たかった。こいつ以外はもう駄目だな、まだ生きている奴も上にいるが時間の問題だな」


「じゃあもういいだろ、そいつはその辺に寝かしてこっちを手伝ってくれよ」


 モーリッツ達は助かる可能性が低い上の人達の事は無視して、ひたすらワイバーンを解体し、売り物にならない部分は燃やし始めた。


 その頃になるとようやくシルビオは冷静に戻っていき、状況を確認する為に仁達に近づいて行った。


「誰か状況を説明してくれないか」


 すると、バリスタを担当していた兵士が進み出て、シルビオに説明を始めてくれたが、二体目の事は知る訳もないので、視線が此方の方に注がれた。


 シルビオが近づいてきたので、やむを得ず立ち上がるとシルビオは馬から降りてきて手を差し伸べてきた。


「今回は本当にありがとう、それより君達二人だけでこのワイバーンを倒したそうだな、詳しく隊舎で報告をしてくれないか、解体は全て部下にやらせるから」


 シルビオに従い最初に集まった部屋で俺とアーシャは討伐状況を報告する、ラルフ達はワイバーンの解体の処理をしてくれている。全て報告が終わった後、シルビオが聞いてきた。


「その魔法は何なのだ、そんな強力な魔法なら耳にしない訳がないのだが、申し訳ないが教えてくれないか」


 コスティと魔法の開発をしていた時に言われた展開道理の事が起こっているので、コスティに言われた通りに話を進めて行った。


「第三小隊のコスティは知っていますよね」


「勿論だ、軍にいて知らない者などいないだろう」


「彼と極秘に開発したものなので、これ以上は魔法部を通して下さい」


 納得が余り言っていない様だが、そこにモーリッツが部屋に入って来た。


「よぉ、お前らも倒したんだってな、お互いいい稼ぎになったな」


「そうですけど、村に被害が出てしまっているので、手放しでは喜べないですが」


「何だよ、俺達はそんな事きにする必要はないっての」


 その言葉にシルビオは怒りに身体を震わせながら怒鳴り始めた。


「貴様はどんな神経をしているんだ。お前のとこでは五人が死んだそうじゃないか、それに一人は瀕死の状態で塔の上にいたそうだな、何で助けないで解体をしていたんだ」


 モーリッツは全く表情を変えず、淡々と話す。


「おいおい、ちゃんと一人は助けて下ろしたぞ、更に上に生きている奴がいるなんて知らなかっただけだよ、それなのに俺達が全て悪いっていうのかよ、全くおたくら兵士は何の役に立たないくせに死んでも俺に迷惑をかけるんだな」


 その言葉を聞いた。シルビオは机を蹴り上げ、部屋から出て行った。


「せっかく討伐してやったのにあの態度はないよな、だったら俺も帰るかね」


 モーリッツは兵士から奪い取るように金貨の入った袋をとり、そのまま部屋から姿を消した。 


 部屋の中に残された兵士の顔はとてもではないが見れなかった。あんな奴と同類と思われたくないので、俺はそっと部屋から出る事にした。


 部屋の外にはアーシャが待っていて、今までの会話は全て聞こえていたようで涙がにじんでいる。腕を引っ張られついて行くと、その部屋の中にワイバーンに殺された遺体が並べてあり、シルビオが土下座のような形になりながら、遺体に誤っていた。


「仁、さっき聞いたのだけど、亡くなったのは全員塔の上にいた人で、モーリッツの仲間は全員が無傷だってさ、あいつら上の人達をわざと犠牲にしたのかな」


「もし、本当にそうだとしたらやるせないな」


 何とも言えない思いを胸に二人で戻って行く。モーリッツの行動が本当だったら許される事ではないが、俺に出来る事は何も無い。俺は正義の味方では無いのだから。

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