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第六十一話 その他のワイバーン

ワイバーンが現れる少し前、シルビオは震えて来る身体を抑え込む様に腕を組んで誤魔化しながら、ただじっと空を眺めていた。


 何で隊長が居ないときにこんな事になってしまったのだろう。隊長も大部分の部下たちも王都の呼び出しで行ってしまった。はっきり言ってここに残されている部下たちは二軍ではないか。


 それに手伝ってくれる冒険者も一人はB級とはいえ隻腕だし、もう一人のB級は中年の亜人ではないか、そのくせ主張だけはしてくるなんていい加減にして欲しい。村に甚大な被害が出てしまったら私が責任を取らなくてはならないのだろうか、どうせワイバーンがくるならここに来て欲しい。

そうしたら楽に殺してあげるのに。


「副長、東でワイバーンが現れたようです」


「西も何か動きがあるようです」


 射手が上から声を掛けて来た。一瞬だけ強く唇をかんだ後で指示を出す。


「今から此処を二つに分ける。マリトから右にいる五人は西に救援に行け、残りは私に付いて来い」


 くそっ、頼むからせめて民家だけは守ってくれ、東の奴を殺したら直ぐに西に向かうしかない。冒険者なんかどうでもいいが、村民に被害が出てしまうとせっかくここまで築き上げた経歴に傷がついてしまう。


 こちらもワイバーンが現れる少し前、モーリッツは兵士の三人は勿論の事、弓を持つ二人と補佐として更に二人の合計七人を塔の上に配置させた。地上にはモーリッツのパーティメンバーの三人しかいなく、かなり偏った編成になるが、ワイバーンを地上に落とす事が最重要だと言い彼らを納得させた。


「モーリッツ、大丈夫なのか、もう一人か二人を下に配置しておかないと厳しい戦いになるぞ」


「心配するな、それよりお前ら魔道具はちゃんと点検しているだろうな、威力が弱かったら話になんないぞ」


 モーリッツの仲間は魔道具の確認をするが、最近は使用していないので多分平気だろうと判断した。その時に塔の上から声が掛かった。


「一体接近してくるぞ」


 モーリッツは上を見上げながら叫んだ。


「射程距離じゃ無くても構わないからどんどん撃ちまくれ、頼んだぞ」


 その指示に従い射手はワイバーンに向けて撃ちまくる。モーリッツの仲間はいつ落ちてきてもいいように広がろうとした。


「お前ら動くな、音も出すな、塔にくっついて気配を消せ」


 ワイバーンは弓矢を躱しながら塔の方へ接近してくる。バリスタもうなりを上げながらワイバーンを狙うがギリギリで躱されてしまう。


 モーリッツはその様子を黙って見ている。やはりあいつらは下手くそだったな、弓矢もバリスタも全く当たらないし連射も出来ていない。運が良ければ撃ち落としてくれるかと期待したが無理だな、だったらさっさとエサになってくれ。


 ワイバーンは最初家畜を食べに来たのだが、煩わしい連中がいるので先にこっちを食べてしまおうと考えた。


 兵士たちの奮戦もむなしく、ワイバーンが塔に取り着き兵士達を捕食し始める。彼らは必死で抵抗しているが傷一つ負わせることが出来ない。そんな中そっとモーリッツ達は壁から離れ、ワイバーンの胴体が見える場所まで移動した。


「いち、に、の、さん、死ね」


 油断していたワイバーンの胴体を目指し三人同時で火柱をぶつけた。三本の火柱は装甲の薄いお腹を貫いて、ワイバーンはなすすべもなく上から落ちて来る。


「よし、終わったな、これで暫く働かなくても楽に暮らしていけるぞ」


 三人でひとしきり喜んだあと、一人は上に様子を見に行き、モーリッツともう一人で解体を始めようとしていた時にシルビオ達が到着した。


「流石だな終わっていたのか、部下は何処にいるんだ」


 モーリッツが指で上を指したと同時に後ろの方から轟音が聞こえ、がれきや木材が舞い上がりながら西へと進んで行く。


「もう一体は倒せなかったのか、それとも別なのか、まぁいいお前ら追うぞ」


 シルビオ達は塔の上の惨状を確認する前にワイバーンを追っかけて行った。まさか塔の上があんなことになっているとは気が付きもせずに。


 仁達は三体目のワイバーンに向けて行動を開始しようとしていた。


「仁、ちょっと待っていて」


 アーシャは家畜小屋の影に隠れ、更に獣化を進めていき偃月刀を器用に口加えながら四足歩行のまま現れた。アーシャは顔の動きだけで合図をしてきたので、仁はその背中に跨りながらゴンザに言う。


「俺達は先に行くから後から付いて来てくれ」


 言葉も終わらない内にアーシャは走り出し南に向かうが、ワイバーンは目の前を通り抜けてしまった。それでも奴の魔力を見る事が出来たので奴の動きが分かる。


「直ぐにこの位置に帰ってくるぞ、アーシャは奴の前で全力でジャンプしてくれ、低空飛行だから近づけるはずだ」


 アーシャの腹を足でしっかりと挟み込み、片手で杖をしっかりと握り絞めながらその上に「ブーメラン」を出現させる。


 ワイバーンは大きく村から離れ、また加速しながら戻って来る。衝撃波で村を壊したのが面白かったのかまた低空飛行で迫って来る。


「アーシャ、今だ」


 アーシャがワイバーンに向かって大きくジャンプをする。俺は頭上に杖を掲げ、更に大きくした「ブーメラン」を目の前に来るワイバーンに向けて発射させる。


「おやすみ」


 ワイバーンに当たった時、ほんの一瞬だけ金属音がしたがそのままワイバーンを半分に斬っていった。



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