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第五十九話 作戦会議

 俺達は指定された隊舎の中に入って行く。隊舎と言っても元の世界で言う校舎のような建物だった。講堂のような場所に案内されたのだが、中にいた冒険者は僅か十人程しかいない。実際にこの村にはこの人数の倍以上いるはずなのだがワイバーンを恐れているのだろう。


 それでもこの討伐はあくまでも任意なので、これでも集まった方なのかも知れない。誰一人として無駄口をしている者はいない中、一人の目が細い女性が壇上に立った。


「集まって頂き感謝する。私は第八小隊副隊長のシルビオだ。まずは紙を回すので、名前と級そして何か記入する事があったら書いてくれ」


 いかにも顔に似合った厳格そうな言い方だった。若い兵士が紙を配っていくが、当然俺はアーシャに記入を頼んだ。アーシャは少し文句を言いたげだったが何とか黙って記入してくれている。書き終わったと同時に回収され、シルビオはそれを確認しながら話始める。


「今の状況だが、此処から僅か二キロ先にある山の中腹でワイバーンが二体確認されている。この村には家畜が多いので奴らが狙う可能性は高い。だが明日の早朝には救援部隊が到着するので申し訳ないがその間だけ手伝って欲しい。報酬は朝までで大銀貨一枚だ」


 すると端に座っていた狼種らしき獣人の男が手を上げた。


「そんなはした金はどうでもいいが、討伐した場合はどうなるんだ。そこをはっきりしてくれ」


「仮に討伐した場合だが、まず我々は所有権を放棄するが、君達は全員が同じパーティではないので調整は我々が行う。必ず公平に分配できるよう努力するのでそこは信じて欲しい。それしか今は言えないがいいだろうか」


 男は肩をすくめてたので、それが了承の合図なのだろう。この村には数年に一度ワイバーンがやって来るので、村でありながらもバリスタが六ヶ所配備されてあり、今回の進行方向と思われる北側に対処出来るのはその中の三ヶ所になる。


 北側に兵力を集める事になるので、その三ヶ所に兵士と冒険者を振り分ける事になった。各班をまとめるのが副長のシルビオ、B級の俺、同じくB級の獣人族狼種のモーリッツだ。B級であるというだけで、俺が一つの班をまとめる事になってしまった。


 ここまではすんなりと決まったのだが、編成にはモーリッツがかなり口を出してきた。彼は分け前が減ってしまう冒険者よりも只で使える兵士を多く自分の班に入れろと騒いだためだ。露骨に言った訳では無いのだが誰もがそう感じている。


 結局時間もないと思われるため、シルビオが独断で決める。中央は兵士のみ十人、西側にモーリッツと冒険者六人と兵士三人、東側に俺と冒険者五人と兵士三人となった。この村の規模に対して兵士の数の少なさに驚いたが、今は聞いている暇はない。


 俺達の方に加わった二人の冒険者は共にD級でモーリッツが自分の所に入れるのを拒んだので此方に入って貰った。さらにモーリッツはアーシャとゴンザを弓使いの二人と交換するように言ってきたが、あっさりと本人が拒絶した。自分の班だけを強くしようとしているこの行動にシルビオがいい加減イライラし始めた。


「もういいだろ、これ以上は時間の無駄になるから早速持ち場に向かってくれ」


 シルビオの号令ともいえる声により、各班に分かれて向かって行く。


「なぁアーシャあのモーリッツってやつの事知っているか、かなり感じが悪いな」


「噂で聞いたことがあるような気がするけど、興味が無いから覚えていないや」


 アーシャと話していると後ろからゴンザが会話に入ってきた。


「奴はタンベル所属だ。ああ見えてかなり年齢はいっているが、実力はあるぞ」


「お話し中すみませんが、仁さんに此方の二人が話したい事があるそうです」


 ラルフがD級の二人を連れて来た。彼らはD級とはいえ最近D級に上がったばかりで、今回はその他大勢の中に潜り込めれば分け前が楽に貰えると思って参加したのだけれども、予想以上に人数が少ないのでどうしたらいいか悩んでいるそうだ。その事を聞いたゴンザは怒鳴り声をあげる。


「悩む位だったら邪魔だから消えろ、ガキのお守りをしている暇はこっちにはないんだ」


 ゴンザの剣幕に二人は何も言い返す事が出来ず姿を消した。その様子を見ていたアーシャはゴンザに怒っているようだ。


「ちょっとあんな言い方はないでしょ、相談したかっただけじゃないの」


「相談しなければ戦えないのならそんな奴はいらない。ワイバーンが相手なんだぞ、自分の命を守る自信がないのなら逃げる事を考えた方がいい」


 かなり険悪な雰囲気になってしまったが、俺が二人の仲裁に入る事にした。


「まぁまぁ落ち着けよ、アーシャも想像してみなよ、お守りをしながらこの人数で戦って勝てる相手ではないだろ、俺はゴンザに賛成だ。あれぐらい強く言わないとあいつらはこの先も無理な事に顔を突っ込んで死ぬことになってしまうぞ」


 アーシャは何も言い返せず、黙って頷くとそのまま無言で歩いている。そんな雰囲気を変えるべくラルフが言ってきた。


「アーシャさんは最近俺みたいな弱い奴と組んでいたからついフォローしたくなっただけですよ、もういいじゃないですか切り替えていきましょうよ」


 そう言いながら俺とアーシャの間に入り肩に手を回してくる。アーシャは振り返り、俯きながらゴンザに言った。


「ごめん、ちょっとむきになっちゃった」


「いいって、気にするな」


 とげとげしい雰囲気が消え去ったような気がする。ラルフのおかげだ。 

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