第五十六話 新メンバー
受付で依頼内容の確認をする。護衛依頼の内容はタンペレの街までの二日間で大銀貨六枚になり、宿泊費と食事は付いている。護衛対象は商人のキャラバンの五台で、この街で冒険者を追加で三人募集している。既に護衛は七人いて彼らは前から長期契約を結んでいるそうだ。
「仁、これならまぁまぁの条件だよ、これでいいよね」
有無を言わせない迫力にただ頷くしかなかった。すると背後からラルフが声を掛けてくる。
「アーシャさん探しましたよ、此処にいたのですね」
「ちょっとラルフ、いきなり話し掛けてこないでよ、驚いたじゃないの」
「それよりアーシャさんは僕の事すっかり忘れていますよね」
完全に図星だったらしく、アーシャの目は視線が定まらず泳いでいる。
「アーシャさんの代わりにちゃんと報酬を貰っておきましたよ」
そう言って大銀貨三枚を渡してきた。俺は話している間に大金貨をカードから引き出して、その中から一枚を手に取りラルフに渡そうとした。
「ラルフ君、これをお礼として貰ってくれないか」
ラルフは一度、大金貨を手に取ったが慌てて仁に返す。
「さっきも言いましたが、助けてもらったのは僕の方なのでこれは貰えません。ただそれでしたらお金ではなくて、よかったら僕をパーティに入れてもらえませんか」
突然の意外な申し出にどうしていいか分からずにアーシャに意見を求める。
「さっきまで一緒に仕事をしていたけど、別に性格は問題ないけど剣士としてはまだまだかな、入れるかどうかは仁に任せるよ」
ラルフは最近まで組んでいたパーティをあのダンジョンで全て失ってしまっていた。暫く一人で冒険者を続けていたが、たまたまアーシャと同じ依頼を受けたそうだ。
「俺達は拠点をゴルドナに移すつもりなのだが、それでもいいのか」
「ダンジョン攻略専門になるのですか、僕はここに定住している訳では無いので問題はないです。それでは宜しくお願いします」
ダンジョン攻略専門とは意味が分からなかったので、そっとアーシャに耳打ちすると、アーシャはため息をつきながら俺の手を取りラルフにここで手続きをしておくように伝えて、誰も居ない端の方へ引っ張って行った。
「やっぱり何も知らないじゃないの、あそこはダンジョンが無数にあるの、だからダンジョンに潜って魔石を取る事がメインになるから実力のある冒険者が一攫千金を狙う街なんだよ、こんな事ラルフに言っては駄目だよ、かなり仁に憧れているんだからね」
「そうなのか、ちょっと照れ臭いな、そうだ、これから分からない事があったらアーシャにそっと聞くよ」
俺の言葉に反応して、顔では困った風を装っているが尻尾は左右に振れている。この事は見て見ぬ振りをしよう。
受付が済んだのでその足で護衛をまとめる冒険者が宿泊している場所に向かう。「風の香」という宿なのだが、冒険者が良く使う宿では無くて中々の小綺麗な宿だ。
この世界では大体が一階が食堂になっていて、此処の宿も同じだったが、飲み潰れているような集団はいなく俺の事を見ても誰も気に留めない。入口に店員の女性がいたので、護衛のまとめ役のゴンザを呼んで欲しいと告げると奥の個室に案内された。
「すみません、ギルドから依頼を受けた者ですが、どなたがゴンザさんですか」
なるべく丁寧に告げたのだが、俺の方を一瞥した後でため息交じりに髭ズラの男が答えた。
「俺がゴンザだ。それよりお前、護衛なんだぞ、お前は馬に乗って対処出来るのか、それに後ろの二人は子供じゃないか、一体ここのギルドは何を考えているんだ。お前らはもう帰っていいよ」
かなり高圧的な態度だったのでムカついたが、後ろからアーシャがカードを見せる様に囁いた。俺はカードを見せつける様にテーブルに叩きつける。
「試して貰って構わないが、どうする」
その個室にいた者は俺のカードを覗きに集まってくる。誰もがB級の文字に驚いているようだがゴンザだけは立ち上がり試させてもらうと言って宿の外へ向かって行く。外に出るとゴンザは長めの木の棒を手に取り様々な角度で振り始めた。
依頼主達も興味を持ったようで、外に出てきて行く末を見守っている。ゴンザは準備を終えたのか此方に向かって行ってきた。
「悪いな、そのB級が本物なのか確かめないとな、俺達の命に関わる事だからな」
その様子を見ていた、通りがかりの冒険者がゴンザに注意した。
「おいっ、あんた何をする気か知らんが、止めた方がいいぞ、絶対に殺されるぞ」
「誰が殺すか」
あまりの言い草に少し声を荒げてしまう。その冒険者は肩をすくめながら地べたに腰を下ろして手に持っている酒を飲み始めた。完全に野次馬をする気でいるようだ。ゴンザは少し不安げな表情を浮かべたが、木の棒を構え向かってきた。
「ショット」
木の棒を簡単に吹き飛ばすとゴンザは手元を見て動きを止めた。その様子を見て何を思ったのか、口々に何かを言いながら四人の護衛の冒険者が剣を抜いて迫って来るので「ホール」で身体三つ分位が入る深さの穴に落としてあげた。
「やはり噂は本当じゃないか、早速、仲間に教えないとな」
見学していた冒険者は笑いながら消えて行った。




