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第五十一話 ギルドの中で

 地上は既に陽が落ち始めている。ダンジョンの前にいた門番はアーシャ達の様子をみて声を掛けてきたが、一切無視してギルドの中へ駆けこんだ。


「お前ら邪魔だ、どきさらせ」


「ちょっと、ここの責任者を呼んで」


 ゴルザードは怒鳴り散らし、まだギルド内でたむろしていた冒険者をどかした。マグリットは受付に駆け込んで行く。今の仁はリントと少しだけ回復したラルフによって支えられている。


「ここに寝かせて」

 

 アーシャがどこからか毛布を持ってきたので仁をそこに寝かせるが、相変わらず仁の意識は戻る気配がない。すると受付の方から大きなどよめきが流れ、そこにいる冒険者達はパニックになっているようだ。


 かなりの速さで一人の職員がアーシャ達の横を走り抜けた後、一部の冒険者も慌てた様子でその後を追いかけて行く。


「おい、この部屋をもっと暖かくしろ、それから邪魔な奴はとっとと出ていけ」


 ゴルザードが怒鳴りながらアーシャの隣に座り、仁の顔を覗き込んでいる時にマグリットが水で濡らした布を持ってきてラルフに渡す。マグリットは若干イライラしているようだ。


「本当にここの職員は使えなくてムカつくけど、今はクリフトの街にこの状況を知らせに行かせたから、明日までここで待つしかないと思う」


「ここに治療師が居ないんだったら仁を乗せて街に帰った方が速いよね」


 そう言いながらアーシャは仁を抱え起こそうとするが、ラルフに腕を掴まれる。


「無理ですよ、ここに馬車は無いんです。彼は馬や走トカゲの振動に耐えられるとは思えないし、それに傷口も開いてしまうかも知れないですよ」


「そうだ、ラルフの言う通りだ。助かるって信じていろ」


 ゴルザードがアーシャの頭を優しく撫でると、アーシャは緊張が解けたのか声を上げて泣き崩れた。仁の顔色はますます悪くなってきて呼吸も弱くなっている。先程からハイポーションを使用しているが何も状況は変わらない。


 今より少し前、ギルドがパニックになった原因の一つは、ゴルザードが受付で六人以外にダンジョンには生存者はいなく、それは魔人族悪魔種のせいだと報告したからだ。


 ただ最初は殆どそこにいた者は信じなかったが、マグリットが魔人の魔石を拾っておいたのでそれを見せると冒険者達の間に衝撃が走った。


 その魔石は赤紫色をしていて、魔石に詳しくなくとも分かるくらいの魔力が溢れている。こんあおどろおどろしい魔石は誰も見た事が無く、その存在感は圧倒的な物だった。


 魔人を倒した証拠だと思い、まだ他にも魔人がいると思った冒険者はパニックを起こして逃げ出した。ただ、一番始めに出て行った職員は唯一冷静なギルド職員で、治療師や王国軍を呼ぶために魔石を手にしながら全力で馬を飛ばした。


 アーシャ達はもう仁をただ囲んで見ている事しか出来ない。するとギルドの職員が近寄って来て頭を下げ始めた。


「先程は取り乱してしまい申し訳ありませんでした。もうこのギルドは封鎖を致しましたので、この場所を自由に使って下さい。只今、あなた方の食事の準備をさせていますが、他にも何か必要な物があれば何でも言って下さい」


 いつの間にかギルドの中から人がいなくなり、この中は静寂で包まれた。ゴルザードはおもむろに立ち上がり職員達に向かって言葉をかけた。


「俺の方こそ怒鳴って悪かった。魔人の事をあんな大声で話したらパニックになるのは当たり前だよな、ただ魔人は一体だけしか見ていないし、ダンジョンも何故か戻りつつあるから心配は無いと思う。調べた訳ではないので確実ではないが」


 その後は運ばれてきた食事を誰もが作業のように口に運び、ただひたすら夜が明けるのを待った。


 陽が昇ってきて一番高くなってきた頃、今まで静寂だったギルドの周りが騒がしくなり、勢いよくギルドのドアが開いたと思ってらコスティが飛び込んできた。


「仁君は何処かな」


 仁の姿を発見するとコスティは直ぐに詠唱を始める、仁の身体は優しい光に包まれ一語一語唱えるたびに光が熱を帯びた様に強くなっていく。すると死人のようだった顔色がどんどん血色が良くなってきて、穏やかな呼吸もするようになってきた、


 それでもコスティは詠唱を止めないでいると、そこに兵士と共にヨアキムが姿を現した。


「コスティ、仁は生きているのか」


 その問いに答えるかのようにコスティは詠唱を止め、ヨアキムに答える。


「最初はかなり不味い状態でしたがもう大丈夫です。仁君はかなり無理をしたのでしょうね、暫く休めば魔力の回復と共に目を覚ますと思いますよ。ただ左手だけは手遅れです」


 コスティに促されヨアキムは仁の無くなってし舞った腕を見て言葉を飲み込んでいる。


 ただアーシャは仁が助かると聞いて、涙を流しながら仁を抱きしめた。コスティはゴルザードに声を掛ける。


「最初に仁君にヒールを唱えたのは誰かな」


 ラルフはおずおずと手を上げる。そんな様子をみたコスティは優しく微笑んだ。


ポーシャんだけでは死んでいたな。


 コスティは部下に指示を出し数十人がダンジョンの中に入って行く。そこにヨアキムが大声を上げた。


「もうすぐ馬車が来るから着き次第、仁を乗せて出発だ」


「あの、私も乗ってもいいですか」

  

 アーシャがヨアキムに頼み込む。


「あぁ勿論だ」


 

 

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