第四十四話 ダンジョンに入る
ダンジョンの側にある休憩所で一晩過ごした後でいよいよダンジョンに向かう。ダンジョンの周りではまだ入るかどうか悩んでいるパーティがかなりいてかなり煩わしい。
「だらしない連中が多いね、そんなに怖いのならこんな所にいないで、さっさと帰ればいいのに」
アーシャはそんな彼らを見て毒づいた。入口にはギルドの職員が立っていて入場証の確認をしている。俺達は悩んでいる連中を横目に見ながら、昨日受付で貰った入場証を見せた。
「お早うございます。お二人は二日間の予定ですね、ご存じかと思いますが行方不明のパーティが出ました。ギルドからのお願いになりますが、⦅バウマウの指⦆に関する情報を発見しましたらお知らせください。ではお気をつけて⦅さまよう黒杖⦆さん」
入口を通り過ぎ坂を下ってその内に平地へと落ち着いた頃、ダンジョンの壁がうっすらと明るくなっていて魔道具なんていらない事に今更気が付いた。どうせアーシャに聞いてもまともな答えは返ってこなそうなので、もう一つの疑問を聞いてみる。
「あのさ、俺達のパーティ名は⦅さまよう黒杖⦆なのか、なんだか恥ずかしくないか」
アーシャは首を傾げ、あまり意味が分かっていないように見える。
「なんで、恰好いいでしょ、直ぐ決めた割にはセンスのいい名前だよ」
アーシャにとってはいい名前なのだろうが、俺にとってはみっともない名前に思えてしまう。この世界ではこんな風な名前が当たり前なのだろうか。
「それより、何で私がダンジョンに乗り気じゃ無かったか教えてあげようか」
アーシャは、灯りの魔道具を出し、ダンジョンの中がはっきりと見えるように壁を照らした。
「仁、訓練所で見せた壁を出してみてくれる」
俺は「ウォール」を出そうとしたが地面からは何も出て来なかった。続いて「ニードル」も試すが出て来ない。「バレット」もどうせ出ないだろうと思ったら、こっちは普通に出たのだが思わず弾幕をはる状況になってしまい、見えない前の方で何かが倒れる音が聞こえた。
「ちょっと何しているのよ、壁だって言ったでしょ、何かに当たったじゃないの」
アーシャは焦っている感じで怒りながら走って行く。俺も追いかけるが中々追いつかず、少ししてから地面から何かを集めているアーシャに追いついた。
「同業者じゃなくて良かったね、小さいけど魔石が拾えたよ」
そう言って見せてくれた魔石は小さいながらも綺麗な色をしている。適当に撃ってしまったので魔物を倒した実感は全くないけど、冒険者でなくて本当に良かった。
「そうだ、なんで壁が出せないんだ」
「やはり分かっていなかったんだね、ダンジョンの中にある物質は見たままじゃないの、自ら生み出す魔法は使えるけど、ダンジョン内にある物を利用した魔法は使えない。仁が直ぐにダンジョンに行きたがっていたから何も分かっていないんだなって思ったの」
全くの予想外だった。ダンジョンは俺にとっては有利でしかないと思っていたが、これでは使えるカードがかなり減ってしまう。
「まぁしょうがないか、調べなかった俺が悪いんだな」
「そうだよ、行く前に自分で聞いたり調べたりしないといつか痛い目をみるよ。仁は魔法に自信を持ちすぎなのかも知れないね、余裕があるのはいいけど危なっかしいな」
確かに俺はダンジョンについて何も調べなかった。ここのダンジョンに出現する魔物の事すら聞きもしなかった。
「ほらぁここで落ち込まないでよ、その為に私がいるの、街に帰ったらギルド長にお礼を言うんだよ。⦅金貨五枚も奪ったのだから基本をちゃんと教えてやれ⦆って言われたんだから」
別にさほど落ち込んではいないが、ミネルバ達と別れてから意外と順調に進んでいたので余裕をかましすぎたのかも知れない。迷い人は無敵じゃないってことを心に刻まなければ。
考えながら歩いていると前の方から、床を布で引きずっているような音が聞こえてくる。その音が聞こえてきた途端にアーシャは嫌そうな表情を俺の方に向けてきた。
「ダンジョンに来たくなかった理由のもう一つがこれだよ、ここ最近はアンデッド系が出るようになったから嫌なんだ。私の武器は汚したくないから全部仁に任せるよ」
魔道具を照らすと四体のゾンビが迫って来るのがはっきりと分かる。近づいてくるにつれ腐敗臭が漂ってきて吐きそうになる。
「バレット」
ゾンビに向けて弾を撃ちまくる。四体とも顔を吹き飛ばし綺麗に後ろ向きに倒れた。少し経つとゾンビの身体はダンジョンに吸収されそこに小さな魔石が現れた。




