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第四十話 コンフォールの森

 走トカゲはその見た目に合っていなくかなりのスピードがあって、その分激しく揺れる。軽く腰に掴まっているだけでは振り落とされそうになるのでどうしても抱き着いてしまう。それがアーシャにとっては煩わしいらしく先程から舌打ちが激しい。


 街を出てから一時間程で目的地に着いて、アーシャはかなり長いロープを走トカゲと木に括り付けている。俺の方は乗り物酔いになってしまい今日の朝食を全て森の養分に変えている。


「帰りは操縦させてくれ、気持ち悪くてたまらない」


「そうしてね、馬よりは簡単だから直ぐに出来るよ、それよりこの後だけど基本は命の危険が無い限り手伝わないけど口はだすよ、それから気になる事は何でも聞いて。一応教官だからね」


 まずはモウリュ草の生えている場所を地図で指してもらい早速出発する。胃がまだムカムカするが歩いているうちに治るだろう。


 コンフォールの森はミーツ大森林に比べ歩きやすく、木々もそれほど密集しているわけでは無いので、視界も良く魔力感知が下手な俺でも早めに危険を察知する事が出来そうだ。


「随分と歩き慣れているね、何かやっていたの」


「自給自足だったから狩りを少々って感じかな、ところでアーシャはその姿で歩くのか、獣化した方が楽じゃないのか」


 アーシャは朝からずっと人型のままなのでほんの少しだけ気になった。


「仁は意外と常識が無いよね、そんな事も知らないの。獣型は魔力を常時消費するんだよ。別に平気って言ったら平気だけど、もしいざって時に戦えなくなったら不味いでしょ。だから冒険者をやっている獣人は戦闘時しか獣型にならないのが主流だね」


「ふーん、そっか、けど獣型に変化って羨ましいな、それに昨日のアーシャの姿はかなり恰好よかったよ」


 アーシャは照れているのか嬉しいのか、若干尻尾が左右に揺れている。


「そんな事初めて言われたよ、人間の一部の奴は亜人って言って差別する奴もいるのにさ、まぁ面と向かって言ってくる奴は滅多にいないけどね」


「力ではかなわないから亜人なんて差別用語があるのだろうな。人間より獣人の方が力はあるし、魔力は人間よりエルフの方がある。人間なんて劣っているからか数だけは多いからな、進化する事が出来なかった種族が人間かな」


「仁は変わっているね」


 話しながら歩いていると森の中にゴルフ場のグリーンのような場所が現れ、その周りには所々にモウリュ草が生えている。


 アーシャはただ座って見ているだけだが、仁は必死になってモウリュ草を摘んでいる。密集している訳ではないので時間が掛かったが、ようやく昼頃には一袋がいっぱいになった。


「なんとかノルマは達成したか、アーシャ食事にしよう」


「それはいいけど、食べたらもっと頑張んないと駄目だからね」


 苦笑いしながら食事にありつく。マティに用意してもらった弁当はパンに朝の残りの肉が挟んであるものや、サラダが沢山入っている。かなり美味しく腹いっぱいになり眠くなりそうだ。勿論眠る訳にもいかず、一休みしたら移動する事にした。


「アーシャ、もっと森の奥に行こう」


「ちょっと待ちなよ、まだここに生えているよ、次の場所を探す前にもっとここで採取した方がいいよ」


「ちょっと考えがあるんだ、いいから行こうぜ」


 不満げなアーシャを連れてさらに森の奥へ進んで行く、途中で鹿が前を横切るが何もせずただ進んで行く、森が深くなってきた頃、ようやく仕掛けた。


「きゃぁーーーーーー、きゃぁーーーーーー」


 わざと甲高い声で叫ぶ。アーシャは気が狂ったのかと心配になり未だ叫んでいる仁の肩を揺らした。


「正気だよ、声を出せば獣は逃げるけど人間をエサと思っている魔獣は寄ってくるだろ」


「あのね、それじゃ何がくるか分からないじゃない。沢山来たらどうするの、基本は手伝わないって言ったよね」


 俺は口に人差し指を立てて黙るように合図をして目を瞑る。暫くして聞こえてくるのは、そよ風にふかれ木の葉がこすれる音と、大地を揺るがし鼻息を荒くしながら走って来る音が聞こえた。


「よしっ。罠に掛かった。アーシャは木の上にでも隠れて見ていてよ」


 さぁ何が来るのだろうか、あえてこの森に何がいるのか聞かないようにしている。なるべくなら自分の目と肌でこの森を先入観なく感じたいからだ。


 汚らしい声が聞こえ、どうやらやって来たのは三頭のオークだったようだ。オークは手に石槍の様なものを持って走って来る。お互いに姿をしっかりと確認出来る距離になった時に杖をしっかりと持ち直した。


「バレット」


 オークは獲物を見つけた喜びを抱えたまま二度と目を覚ます事はなく、あっけなく倒れていった。


「アーシャ、オークの討伐証明の部位はどこかな」


「両方の牙だよ、ちゃんと根本から切らないと安くなるからね」


 アーシャは偃月刀を抱えながら木の上で器用に横になっている。



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