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第四話 夢か現実か

箱一杯に水が溜まる頃、神官はかなり疲れているようで崩れ落ちるように箱の脇にある長椅子に腰を掛けた。


「かなりお疲れのようですが大丈夫ですか」


 ミネルバは神官の隣に座りそっと背中をさすった。ルークは姉の後ろに座り先程ミネルバに踏まれたつま先を揉んでいる。


「大丈夫だよ、聖水の詠唱はやはり疲れるな、それよりもルークは平気か」


「すいません。姉ちゃんは力加減が俺に対してだけ壊れているから痛いんです」


 ミネルバが冷たい目をしてルークの無事な方のつま先を踏みつけた。


「いてーーーーーーー」


「静かにせんか、この馬鹿者が、あと一時間程で目が覚めるから二人とも黙っていなさい」


「ごめんなさい」


  

 景色が揺れていて深い海の中にいるようだ。身体はどこも痛くなく、現実か夢なのかはっきりしないが水の中で息をしているので間違いなく夢だろう。夢の中で夢を認識するとは初めての経験だ。そろそろ目を覚まそうとして身体に力を入れ起き上がる。


 どうやら何故か実際に水の中にいたようで、下半身はまだ水に浸かっている。窒息する前に何とか起きる事が出来た様だ。この場所に覚えが無く、顔を左に向けると美形な若い男女と優しい顔をした中年の男性が此方を見ていた。


「おはようございます」


 こんな時でも挨拶がでてくるとは我ながら呆れてしまうがパニックにならないようにしなければならない。


「あの、ここはどこですか」


「目が覚めた様だな、ここは我々エルフの里だ。意味は分かるか」

 

 目の前の中年の男性が意味不明な事を言ってきた。


「ちょっと何を言っているのか分からないですね、映画の撮影か何かですか」


 何が起こっているのか全く分からないが出来るだけ落ち着いて話してみる。


「よく聞き取れないが、とりあえず出てきて落ち着いて話しをしようじゃないか、いいかね」


 水の中から出ようとするが、何も身に付けていない事に気が付いた。


「あの、申し訳ないのですが裸なのですが」


 少しだけイライラしながら言ってしまった。


「そうだったな、すまんがルークはさっきの服を持ってきてくれ」


「分かりました。ついでに綺麗にしておきますよ」


「ミネルバは食堂にシスターがいるから、私達の分も飲み物だけでいいから準備するように言ってくれ」


 ミネルバと呼ばれた女性が出て行ったのを見計らって水の中から出て見る。身体を拭きたいのでタオルを借りようと思ったのだが、その必要はなく、すっかり身体が乾いている現象に少し混乱してきた。


「あの」


「何だ、今は無理して話さなくていい、君を助けた姉弟も気になっているはずだから後でまとめて話す。今は心を落ち着けなさい」


「はい」


 激しい足音が聞こえてきて、勢いよく男が戻ってきた。その手には俺の服や下着が丁寧に畳んであり、それを俺に渡してきた。


「さぁ綺麗になっているから早く着替えなよ」


 渡された服はかなり綺麗になっている。化け物に追いかけられて服が泥だらけになったのは夢だとはいえ、今日は整地をしていたのだから大分汚れていたはずだ。どうなっているのだろうか。


「おいおい、俺はこんな見た目だけど、これくらいは出来るよ」


 俺があまりにも驚いた表情をしていたのだろう、何故か嬉しそうに言ってきた。


「もういいだろう、ほらっ早く着替えて食堂に行くぞ、向こうで答えてあげるから」


 三人で連なって食堂へ歩いて行く、既に食堂ではミネルバが座っていてテーブルの上にある木製のコップからは湯気が出ている。シスターの姿は見えないが厨房にでもいるのだろうか。中年の男性がミネルバの前に座ったので俺はその隣に座った。ルークは俺の正面に座っている。全然状況はつかめないがなるべく落ち着いて話すように心掛けて話始める。


「えっとまず、水澤仁と言います。千羽キャンプ場の先にある山にいたはずなのですが、どうなっているのでしょうか」


 正面の二人は真剣な顔をして俺を見ている。中年の男性は斜め上を見つめながら声を掛けてきた」


「水澤仁、仁君か君に変わった事が起きたと思うのだが全部話してくれないか、決して笑ったりしないからお願いするよ」


 夢か現実か分からないと伝えたうえで全てを話した。中年の男性は強く目を瞑りこめかみを揉んでから意を決するように俺を見た。


「私は神官のシャペルでこっちの君を助けてくれた姉弟は姉のミネルバと弟のルークだ」

 

 俺は目礼だけして神官の言葉の続きを待つ。


「まず、話しても理解出来ないと思うのでみて欲しいものがある」


 神官は両方の掌を上に向けるとその上に直径十㎝ほどの玉が浮かんできた。左は水色をしていて右は赤い色をしている。


「そっと手を近づけてごらん、危ないから決して触らないように」


 俺はゆっくり手を玉の方に近づけてみる。水色の玉は冷たく、赤色の玉はもの凄く熱い。


「君は多分見た事が無いと思うがこれが魔法だよ、君が経験した事は夢ではなく現実だよ」


 俺の頭の中に段々と一つの言葉が支配してきた。その言葉は異世界。 




ここから四話ほど世界観の話が続いてしまいますが、お付き合いしてくれればうれしいです、

その後は物語が動いて行きます。

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