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第三十五話 ギルドの受付にて

 階段を登りきると手摺から見ていたと思われる獣人の女性に声を掛けられた。


「ねぇあれはどういった魔道具の魔法なの」


 その獣人の女性は中々露出が激しい恰好をしているので目線に困ってしまう。獣人族は普段は人型で耳と尻尾があるくらいだが、戦闘時にはさらに獣に近い変化をするそうだ。変化をするせいなのか獣人族は薄着で年中過ごすらしい。


「あのさ、何ジロジロ見てんの、いいから早く答えなよ」


 思わず全身を見てしまった事がバレてしまったようだ。顔が熱くなるが見透かされないように答える。


「単なる魔法だよ」


「ふーん、魔道具じゃないのか、それであれはそのままなの」


 そう言って下を指で指した。想像はつくが一応覗いて見ると、先程の奴が早くも意識を取り戻していて抜け出そうとしているが、かなり痛いらしく喚き散らして上半身のみで暴れている。


「頼まれていないからね、じゃ急ぐので」


 彼女は何か言いたげではあったが、奴の知り合いだと面倒なので早々に離れる事にして受付に向かう。


 受付は閑散としていて特に暇そうにしていたのが、いかにも元冒険者らしい隻眼の男性と生真面目そうな女性と新人のような若い女性だったので、無難な生真面目そうな女性を選ぶ事にした。


「冒険者の登録をしたいのですが」


「いらっしゃいませ、登録は初めてでしょうか」


「はい、初めてなので説明を聞きたいです」


 その女性はニナと名乗り、彼女の後ろの引き出しから書類を出しながら分かりやすく説明を初めてくれた。


 冒険者はSからFまであり人数の分布は菱形のようになっていて、C級が一番多くいる。逆にS級は世界に数人しかいない。F級からE級までは一月程で上がれるがD級に上がる段階になると魔獣の討伐がからんでくるので最初の関門らしい。C級が飛びぬけて人数が多いのはかなりの実力がないとB級に上がれないらしい。


 仕事の請け方は朝になると掲示板に依頼表が掲示される。指名依頼以外は早い者勝ちだが失敗すると損害賠償とそれが二度続くとランクが下がる。依頼は自分のランクかそれより下しか受けられないが、例外もある。


 パーティは基本自由になっていて組んでもいいし、一人でもいい。俺は依頼表が読めないがどうしたらいいのだろう。


「大体がこのようになっておりますがよろしいでしょうか、また分からない事はいつでも相談に乗りますので仰って下さい」


「分かりました。では登録をお願いします」


「ではギルドカードの作成になりますので付いて来て下さい」


 受付台の片側が持ち上がりニナが表に出てきて歩き始める。階段を上り三階の小さな個室に連れていかれた。小さなテーブルを挟んで座り、運が良い事にこれから記入する用紙はニナが書くようだ。


「まず名前をお願いします。別名でも構いません」


「仁でお願いします」


「ではタイプと使用武器はいかがしますか」


「タイプって何ですか」


「戦士とか狩人のような職業といったものになります、もし決めていないのなら村人になりますが」


「じゃあ、魔術師でお願いします。使用武器は杖でお願いします」


 ニナの手がぱったりと止まり俺を見上げ。知り合いに冒険者がいないのですかと聞いてきたが、意味が分からず答えに困ってしまう。


「殆どの皆さんは武器などに付与魔道具を入れていますので、魔術師だと相手にされない場合が多いですよ、パーティに入るにはかなり不利になります。それに杖以外に何か扱える武器はないのですか」


「それがセンスが無いようでして、本当は杖すらまともに扱えないです」


 俺の言葉に衝撃を受けたのか、それとも呆れたのか、ニナはため息交じりになる。


「あの失礼ですが、E級やF級だと生活は出来ないですよ、軍なら大規模な魔法が唱えられるのでしたら重宝されますので、そちらをお受けになった方がよろしいかと思います」


「それでもやってみます。別にいいですよね」


「分かりました、無理はしないで下さい。次になりますが実戦試験を行なえば最初からD級になりますがやらなくていいですよね」


 まさか一気に上がれることが出来るとは知らなかったので嬉しくなった。


「勿論やりますよ、D級のテストをお願いします」


 俺の言葉を聞くと、ニナの額に血管が浮かび、せっかくの綺麗な顔立ちが般若のように見えてくる。


「一人で戦うのですよ、D級のテストはビックボアや密林蛙と戦う事になります。詠唱している間に死にますよ。それにその杖の魔道具は攻撃用じゃないですよね」


 ビッグボアは三m程の猪で、密林蛙すら二m位ある。ただ別に初めて戦う訳では無いのだけれども。


「確かにこの魔道具は単なる魔力補充用ですが、まぁ平気ですよ、テストお願いします」


「本当にいいのですね、では地下一階の訓練所に行って待っていて下さい。手前に控室があるので準備がありましたらそこで済ませて下さい」


 言葉は丁寧なのだが顔は完全に怒っている。こんなことになるとは想像すらしていなかった。どれだけこの世界の魔術師はだらしないのだろうか。


 



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