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第三十三話 クリフトの街に到着

 アトラスに案内されたミサン商会は想像していたよりもはるかに大きく、店舗は二階建てで裏には店舗の倍ほどの倉庫があり、さらにその奥には三階建ての寮がある。店舗、倉庫、寮の全てを合わせたよりも大きい家が隣接されていてそこがアトラスの自宅だそうだ。


「アトラスさんって滅茶苦茶に凄い商人だったのですね」


「ははっ、この街では一番だと自負していますが、他の街に行けばもっとおおきな商会はいくらでもありますよ。仁さん一旦私の自宅へ行きましょう」


 アルメイダ達は店舗に行ったので入口で別れ自宅の方へ向かうが、従業員がアトラスの姿を見つけ仕事そっちのけで集まって来る。


 集まった従業員もアトラス達も再会できたことに喜んだが、亡くなってしまった従業員の事を聞いて殆どの人が声を上げ泣き出している。暫くしてからアトラスが声を大きくして皆に告げる。


「みんな聞いてくれ、亡くなってしまった者達は本当に残念だ。今迄もこのような事はあったが、今後は更に対策を強化していこうと思う。明日の朝に会議室で対策を練るので各班の長は集まってくれ、それとここにいる方は魔術師の仁さんだ。私達をゴブリンや盗賊達から守ってくれた恩人だ。仁さんがこの街にいる間は寮で生活してもらうから客人として接してくれ」


 アトラスが言い終わると従業員が集まって次々に感謝の言葉を言ってくれた。アトラスがどれほど慕われているのかがよく分かる。少ししてからアトラスはこの場を締めて三人で自宅へ向かう事になった。


 自宅の門をくぐると今度は執事達が先程と同じように涙を流しながら出迎えていてくれると、一人の女性が走ってきてアトラスとサントを抱きしめた。アトラスが優しく頭をなでると俺の方を見ながら紹介を始めた。


「仁さん、妻のコヨミです。そして執事のオラヴィ、マティ、ソニア、ロイネです」


 アトラスの妻はかなり若くサントに似て綺麗な顔立ちをしている。オラヴィはハクと同年代の様だがいかにも執事といった雰囲気がある。マティは最年長の女性で主に寮を若いロイネと一緒に管理しているのだそうだ。ソニアは俺とほぼ同じ位の年齢に見えサントの家庭教師を兼任している。


 アトラスはまたも恩人だと紹介したせいで、またも感謝の言葉を貰うことになってしまうので照れてしまう。


 その日はアトラスの家で夕食を取る事になったのだが、あまりの豪華で手の込んだ美味しい料理に驚きっぱなしだ。元の世界では結婚式ぐらいにしか食べた事の無いフルコースがここで食べられるとは思ってもいなかった。


「仁さん、いつもはもっと質素なのですよ、今日はお祝いですから」


 コヨミが本当に嬉しそうに答えた。その隣ではサントが夢中で食べている。


「仁さんは本当に冒険者になる予定なのですか、もし気が変わったら何時でも相談して下さい。直ぐにいいポジションを用意しますので」


「ありがとうございます。その際はお願いします」


 ヨアキムもそうだったがアトラスも心配してくれている。魔術師はもっと特別なものだと思っていたが、やはり魔道具が便利すぎるせいで魔術師の勝ちが低いのだろう。少し経つとサントの瞼がかなり重くなってしまったのでこの場はお開きとなった。寮に移る前に大事な話をする。


「アトラスさん家賃の話なのですが、正直に言うと相場が分からないのでいくらお支払いしたらいいのでしょうか」


「仁さん本当に要りません。命の恩人ですし寮の部屋も余っています。勿論食事もそこで取って下さい。無理している訳では無いので気にしないで下さい」


 その後も押し問答はあったのだが、頑なに断ってきたので甘える事にする。マティに案内され寮に向かった。


「マティさんすみません。わざわざ」


「いいのですよ、私は一階に住んでいますので気にしないで下さいね」


 アトラスの家からは直ぐ近いのであっという間に寮に着いた。案内された部屋は三階の一番奥の部屋で寝室の他にもう一つ部屋がある。


 一階には大浴場があり何時でも利用可能だというので早速堪能させてもらった。風呂から上がると新品の下着や部屋着が用意してあるので、マティの心使いに驚かされる。


 久しぶりのベッドで眠る事になるので余りのも心地よく瞬く間に眠りにつく。明日はいよいよ冒険者にならなくては。



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