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第三十二話 最後の行程

先程から他の兵士達が此方の方を何かいいたげな素振りで見ている。あれだけの騒動を昨日起こした二人が話しているのだから心配なのかも知れない。軽く会釈をしながら二人で人目に付きにくい所へ行った。


「ところで、何の話なんだ」


「改めまして、私はリンツ=マルックと申します。本当に昨日はすみませんでした。話と言うのは仁様から見て村の原因は兄達のせいだと思いますか」


 生意気な素振りは無く、昨日の事がなければ好青年のような印象を持った。


「またか、とりあえず様は止めてくれ、あの事だが俺が聞いた話をそのまま信じるならば、兵士達がもっとしっかりしていれば違う結果になっていただろうな」


「ですよね、兄達は見張りにも立たずにどうせ飲み潰れていたのでしょう、狼煙台も何も準備されていなかったようですから。何も起こらないと思って気が緩んでいたのでしょう。最後にとんでもない事をやらかしてくれました」


 マルックは見るからに落胆している。村は大した抵抗は出来ずに崩壊してしまったようなので、在中兵士の怠慢が原因だと国王に報告されてしまうそうだ。


 場合によってはリンツ家は取り潰しか、そこまでいかなくとも爵位の格下げになってしまうらしい。


「すみません、つまらない話をしてしまって、部隊の中ではこの話は微妙でしてはっきりと言ってくれないのです」


 無理やり作った笑顔を浮かべながら部隊の中に戻って行った。その後、他の部隊が村を詳しく調べたところ、在留兵士の数々の失態の証拠が出てきたので平民の兵士には死亡に対する恩賞は出ず、唯一の貴族であったリンツ家は子爵から男爵へと格下げになった。


 そんなリンツ家の未来の事など想像すらせず、馬車に戻りながら青い月を眺めた。まだエルフの里からそんなに経っていないのに、今日はやけに懐かしく感じてしまう。


 翌朝になりいよいよ最後の行程を迎える。何も問題がなければ夕方にはクリフトの街へ到着する予定だ。今日は何故かヨアキムと一緒に馬に乗っている。


「昨日、あれからマルックと話したそうだな、何か言われたか」


 ヨアキムは周りの兵士に聞こえないように真っすぐ前を見つめながら小声で聞いてきた。


「別に大した事は話していないですよ、ただ部隊の中だと貴族としてプライドがあるからあまり関係のない俺に弱音を吐きたかったのじゃないですかね、よりによって俺じゃなくてもとは思いますが」


「有難うな、あいつも悔しいんだよ。あそこの家は最近になって子爵から伯爵に上がる話があるらしくてかなり喜んでいたのだがな、もう確実になくなるだろう」


 子爵が伯爵に上がったとしても、目に見えて何かが変わる訳では無いらしいのだが、貴族の世界の中での立ち位置大分違ってくるそうだ。


「貴族ってやつは、面倒なんですね」


 思わず呟くと、今まで前を向いていたヨアキムが振り返り真顔になって言ってきた。


「街では貴族の事に対し表立って悪口を言っては駄目だぞ、生活する場所が違うからあまり接点は無いと思うが注意しておいた方がいい。面倒な事になるからな」


「そんなに乱暴なんですか」


「何て言うか、法律があるから無茶な事はしないし自らは市民とは一線を引くさ、ただプライドを踏みにじられると一変する。権力があるから貴族の方に有利に進むから避けた方が無難だぞ」


 そうは言われたが既に貴族を四人も半殺しにしてしまった。マルックは大丈夫そうだが、残りの三人は俺の姿を見るだけでも逃げて行ってしまう。ヨアキムはここで起こった事は俺が何とかするとは言っているが、多少は気にかかる。


「それより仁は魔法以外は何が出来るんだ」


「杖ぐらいですかね、もっともエルフの里ではダントツに一番弱かったですけど」


 ヨアキムがあからさまな溜息を盛大についた。


「やはりか、前にも言ったが軍ならおおむね魔術師は重宝してくれるが、人数の少ないパーティで行動する冒険者だと魔法だけじゃ厳しいぞ、魔道具が出回っているからな魔法剣士とかならまだましだが」


「俺はパーティでの行動は考えていないので、一人で出来る仕事だけこなそうと思います」


「それじゃ稼げないけどいいのか、軍なら安泰なんだがな」


 その後もヨアキムはブツブツと呟き俺をどうにかして部隊の中に入れたいようだが、俺はやんわりと固辞し続けた。ヨアキムはかなり「バズーカ」を気に入ったようだが、あんなのは戦争でも起こらない限り使い道がないと思うのだが、一体なにを考えているのやら。


 夕方になる前にクリフトの街が見えてきた。城壁は低いが堀で囲まれていてレンガ造りの街並みが綺麗に並んでいるのが見える。エルフの里とは若干違って人込みに溢れているような感じだ。街の奥に見える城のようなものが領主館でその周りが貴族街だそうだ。近づかないようにしよう。


 西門からの入場に本来ならばなるそうだが、今回は第三小隊と共に軍専用の南門入口から入場する。


「何かあったら中央地区来るようにな、守衛には伝えておくから住むところが決まったら連絡をくれ、じゃあな」


「ありがとうございました。一応暫くはミサン商会の寮に住む予定です、ヨアキムさんもお元気で」


 簡単な別れを済ませたあとで、アトラスと共にミサン商会へ向かう。



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