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第三十一話 鋭いなコスティ

 穏やかな風が流れている中、ハクに操縦を教わりながら進んで行く。馬を軍馬に変えてあるせいか今までよりスピードが速いが、街道が整備されているおかげもあって振動も少なく快適な旅だ。


 馬車の中からはたまに笑い声も聞こえてくるので、これまでと違い誰もが大分リラックス出来ているように思える。


「仁君、どうだい馬に乗って見ないか」


 コスティが馬車に並走しながら声を掛けてきた。


「いや遠慮するよ、乗った事がないから迷惑を掛けそうだ」


 ちゃんと断ったはずなのに全く聞き入れてもらえず、コスティにしがみ付きながら馬に乗るはめになってしまった。コスティはさりげなく最後尾まで下がり進んで行く。


「ここまでくると誰にも話を聞かれないから聞くけど、仁君は嘘をついているね」


 どの事を言っているのか分からずに戸惑っていると、コスティは笑いながら話を続けた。


「ごめん、ごめん、別に何処かの国の間者とかで疑っている訳じゃないんだ。間者なら直ぐに勧誘に乗るだろ、けど君はあまり興味を示さなかったから違うと思っているんだ。僕が言いたいのは迷い人じゃないかって事さ」


「どうして…………………………かな」


 俺は一体何かミスをしたのだろうか、色々思い起こすが多少心当たりがあるのでやはり言葉に詰まってしまう。


「やはりそうか、駄目だよこんな事で動揺していたら直ぐにバレてしまうよ、昨日の事を全て聞いたけどほぼ詠唱なしであいつらを懲らしめたそうだね、それにバズーカだっけ、一応小声で詠唱したって言ったいたそうだけど無理がありすぎだよ」


「どうしてなんだ、エルフの秘術だぜ」


「そもそも魔法はエルフや魔族にとっては自分の中の魔力だけで行うんだ。人間は魔力が弱いから言霊を使って自分の周りの魔素も利用する。だから詠唱は人間だけしか使わない。エルフの秘術なんてものはある訳ないんだよ」


 知らなかった。どうしていいか分からずまた黙り込む。


「ちなみに詠唱ははっきりと言葉にして意味を理解しないと魔法は出せないし、あの規模だとちゃんとした詠唱をしたとしても五分以上はかかるよ、まだ聞くかい」


「いや、もいいいや、何か面倒になってきた。ところでエルフ達は詠唱を使わないでは無くて使えないのか」


「そうなるね、それより秘密にしたいのならもっと注意するんだ。街を滅ぼしかねない魔法なんか使ったら目立つに決まっているよ。この部隊だと僕がたまにでかいのを見せるから騒ぎにならないけど、普通は無理だからね」


 コスティはただ自分が納得したいだけで、別に隊長にすら報告はしないと言ってきた。どうせならと思い隠し方を相談したところ、快く相談に乗ってくれた。


「ありがとう、まぁ何とかやって見るよ」


「何かあったら言ってきなよ、相談にのるし、うちの隊長も信頼できるよ」


 話が済んだ後で馬車に送ってもらい、今度は操縦ではなく馬車の中で眠らせて貰った。食事の時間になるとまたヨアキムに呼び出されて話をしている最中に、イーランズ村へ行っていた兵士が戻りその惨状を報告した。もう関係の無い話なので馬車に戻る事にしたが、その帰り道にあの小僧から話し掛けられた。


「昨日は本当にすみませんでした。あの村の警備責任者は兄でして、あの任務が終わり次第で家督を継ぐ流れになっていたので頭に血が上ってしまいました」


「だからと言って魔物扱いした事や、平民を馬鹿にした事はまだ許す気にならないからな」


 俺はまだムカついているので立ち去ろうとした。だが彼は追いすがって来る。


「俺はそんな事言っていません。俺はあの報告は嘘だと思いたくて怒鳴りましたし、横柄な態度もとりましたがそんな差別はしません」


「あれっ君じゃなかったっけ、けど俺を殺すって言っていたよね」


「そんな事は言っていません。多分ですがエックハルト先輩です。彼が育った土地は貴族以外の差別が酷いので有名な場所ですから」


 アトラスさんを乱暴に連れ行ったので印象がかなり悪く、最初に突っかかってきたのは彼だったが、差別的な事を言ったのは彼に便乗したエックハルトだったようだ。


 それでも嘘つき呼ばわりした彼にはムカついているが、まぁこれ以上この話題を引っ張っても大人としてふさわしくないので、普通に話を聞く事にした。


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