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第三十話 副長コスティ

 同い年のヨアキムと話していると、何やら外が騒がしくなり、「止めて下さい」だの「許して下さい」と言った声が聞こえて来る。


「おいっ何事だ」


 ヨアキムが言いながら立ち上がりテントから出ようとすると、長身でやや細身の男がロープを手に入って来た。


「隊長、戻りました。俺達が死にそうになった原因ってこいつらのせいらしいじゃないですか」


 息を荒げながらロープを引くとあの貴族の小僧共が引きずられてくる。見かけによらずかなり力がある様で、四人とも引きずられてここまで来たようだ。不思議な事に全員の顔がはれ上がっていて、誰も彼もが同じ顔に見えてしまう。


「おいおい、またボロボロになっているじゃないか、お前がやったのか」


「勿論です。教育中です」


 そのように言うと小僧共を今度は蹴り上げた後で跪かせた。俺は驚きの余り声を出す事も出来ず、ただ事の成り行きを見ながらこの人物を思い出した。小僧を最初に殴った上官らしき人物がこの人だった。


「コスティ、もういいかな、ほら仁がドン引きしているじゃないか、こいつらにヒールを掛けてテントに戻してあげな」


「反省するまでヒールはかけませんが、隊長が言うのであれば今日のところは休ませます。ほらっお前ら帰れ」


 ロープを小僧達に叩きつけこの場から追い払った。かなり怖い人だ。よくこの人にあの時、睨みつける事が出来たのかと思うとほんの少しだけあの小僧を見直した。


「紹介するよ、副長のコスティだ」


 コスティはアルメイダの予想通り平民だった。ただアルゴ王国の中で五本の指に入るほどの魔術師でなりのハイスペックの人だ。


「本当に部下が屈辱的な事をいってしまい失礼した。これだからボンボンの貴族は邪魔なんだ」


 そう言うと綺麗に腰を追って頭を下げた。


「俺も一応貴族なんだかな」


「隊長は貴族に見えないから大丈夫です」


 この部隊の人数は三十人いてその中で貴族は五人いる。隊長が伯爵家次男で将来の将軍候補であり、その他の便乗した三人はそれぞれ領地無しの男爵家で、最初の生意気な小僧は子爵のリンツ家の次男で軍歴はこの中で一番若い。


 この国は貴族だからと言って出世するわけでは無いらしいのだが、普段の生活で貴族社会が染みついてしまっているので、平民の先輩が貴族の後輩を咎めにくくなっているようだ。


「それよりも仁殿、あれはかなり危なかったのだが、確認出来ない所に撃つのは止めた方がいいと思うな」


 あの時コスティは強力な魔力を感じ、部下たちに全力で左によけるように指示したそうだ。もし気が付かなければ直撃は何とか避けられたかもしれないが、何かしらの被害は出ていたかも知れないとの事だった。


「その件はすみませんでした。これからは考えて使うようにします。それと殿は止めて下さい」


 俺は素直に謝った。コスティは手を差し伸べて握手を交わし、どうたらこれで手打ちのようだった。


「それよりも随分と早かったが、アジトはどうだった」


「残っていた奴がいたので処分をする前に聞いたのですが、おとといから誰も帰って来ないそうです。それと財宝が若干あったので回収させています。もうそろそろ帰ってくると思いますよ」


 その言葉通り、間もなく兵士が馬に財宝をぶら下げて戻って来た。ヨアキムはアトラスに見せて、「ミサン商会の物は全て持って行って構わないし、別に報告も要らない」と言ってテントに戻って行った。コスティも俺も一緒にヨアキムに付いて行く。


 明日からの行動予定だが、本来ならば今日を抜かして二泊しなければならないが、馬車も軍馬に引かせる事によって一日縮め明後日にはクリフトの街に着く事になった。


 行程の見張りは全て兵士が受け持ってくれ、何かあっても全て対処してくれるそうなので初めてのんびりとした旅になりそうだ。


 二人から軍の誘いを受けながら色々この国の軍の情報を聞いたが、思っていた以上に貴族社会との兼ね合いが複雑で面倒くさそうだ。但し現在は戦争もなく、冒険者より安全で魔術師の俺ならかなりの高給が見込めそうだ。


 ちょっと冒険者をやって見て余りにも上手くいかないのならば、軍に入って安定収入を得るのもいいのかも知れない。


 三人で色んな話をして盛り上がり、あっという間に朝になってしまった。

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