第二十八話 仁の暴走
ヨアキムと話していると小僧がそこに割って入って来た。
「いい加減な事言いやがって、それじゃ何か、イーランズ村が襲われたのは兄上達のせいだって言うのかよ。手前らふざけた事言ってんじゃねぇよ。大体本当に襲われたのか、嘘じゃねぇのか」
「面倒くさいな、だからおたくらの仲間が見に行っているんだろ、だったらお前も身に行って来いよ」
かなりこの小僧にはイラついていたので怒鳴ってしまった。平民の俺が騎士でありさらに貴族である小僧に楯突いたのが悪かったのか、小僧だけではなく小僧の側にいた三人の兵士までもが罵声を浴びせて詰め寄って来た。周りの平民と思われる兵士はどうしていいか分からずに戸惑っている。
「お前らいい加減にしろ、あっちへ行け」
唯一ヨアキムが大声を上げ罵声を出していた四人は仁から離れたのだが、離れ際に爆弾を落としていった。
「どうせゴブリンの村も眉唾物だろ、それか魔物どうしエルフとゴブリンで村を襲いやがったか、それとも手前ら盗賊か、仲間割れで殺したんじゃねぇのか、これだからただの平民は」
俺の中で何かが切れる音がした。エルフが魔物だと、馬鹿な奴らのせいで村があんな事になったのに、何を言っているんだこいつらはゴブリンとミネルバが同じだと言うのか、さらに盗賊扱いまでしやがって、俺の視界が徐々に赤く染まっていく。
俺は小僧達に向け杖を一振りする。四人の足元に腰までしっかりと入るように穴を開け、落とす。直ぐに圧縮が始まり下半身の骨を粉々に砕く。叫び声をあげる前に小僧達の側から「ニードル」で指の先から肩にかけて満遍なく突き刺す。そして苦しんでいる馬鹿どもに近づく。
「なぁ言えよ、誰が魔物なんだよ」
動く事も出来ず、泣き叫ぶ事しか出来ない奴に杖を脳天に打ち下ろす。他の兵士は突然の出来事に圧倒されていて、動けず立ちすくんでいる。
「もう止めなさい、仁、流石にやりすぎだ」
ヨアキムだけが急いで動き出し、仁を羽交い絞めにして遠ざけようと引き離す。力の差がかなり違う為振りほどこうと暴れてはいるが、仁にはどうする事も出来ず引き離されていく。
「早くポーションを掛けて助けろ」
ヨアキムの指示でようやく兵士が動き救出を試みるが、どうやっていいのか分からない。一人が剣で「ニードル」を折ろうとしたが、数本しか折れないばかりかその振動で肉はえぐられ小僧共は更なる絶叫を上げる。
ポーションを掛けても傷の原因が全く取り除けていないので意味をなさない。どんどん地面に血の染みが広がっていく。
「仁、もう許してやってくれないか、この馬鹿な部下には処罰を必ず下す。それよりも彼らが死んでしまったら君を捕まえなくてはいけなくなるんだ。頼むよ」
「仁さん、もう止めましょう。彼らの為に仁さんが罪を背負う事は無いのですよ」
ヨアキムとアトラスが必死に仁を説得する。仁は暴れる事を止め少しだけ冷静になった。
「分かりました。離して貰えますか」
「本当に大丈夫だね」
頷くとヨアキムは羽交い絞めしていた手を離した。仁は未だに泣き叫んでいる小僧達に近づき、目の前で腕を組んで見下ろした。
「お前ら何か言う事はないのか」
仁に気が付いた四人の内、三人は痛みに苦しみながら許しを口にした。三人に対して「ニードル」を解除し地面のせり上がりによって地中から解放する。
足の太さは通常の半分以下の太さになっていて、血だらけの状態になっている。それをみた兵士達は恐怖を覚えながらも必死にポーションを振りかけたり飲ませたりする。三人の身体は光に包まれてみるみるうちに傷が塞がって足も元の太さに戻っていく、激痛から逃れる事が出来た三人はようやく気絶する事が出来た。
「お前はどうする」
まだ誤りもしない小僧に向かって聞く。
「ふざけろよ殺してやる、俺をこんなにしやがって絶対に殺すぞ、早く出せよ俺が死んだら生きて街を歩けないからな」
「いい加減にしろ、それでも兵士か」
ヨアキムが怒鳴るが俺はそれを遮って、小僧の前を広く開けて貰う。小僧の前には俺と森しかいないようにしてから杖を掲げた。
「バズーカ」
杖の前に巨大な岩が現れスピードを上げ飛んで行き、さらに大きくなりつつ森の大木をなぎ倒しながら、地面をけずり真っすぐに突き進んで行く。どこまで飛んでいったのか分からないが遥か彼方の方で轟音が響いた。
「で、誰が俺を殺すんだ」
どうしようもない力の差やヨアキムの言葉に完全に心が折れた小僧は只ひと言震えながら俺に言ってきた。
「殺せません」
まだ怒りは収まらないがとりあえず地中から出してやった。三人よりも長く埋まっていた為に瀕死の状態だったが、大量のハイポーションのおかげで何とかなるそうだ。
「この事はあいつらが目を覚ましたらまた話し合おう、本当に申し訳なかった」
ヨアキムは頭を下げて誤って来た。俺も多少はやりすぎたような気がしたので曖昧に返事をしてこの場をやり過ごそうとしたら、一人の兵士がこれでもかというぐらい真っ青になってやって来た。
「隊長、副長達がアジトを探しに行ったのはあっちですよね」
その兵士が指を刺したのは勿論、「バズーカ」が通過した道だった。俺の顔から血の気がどっさり引いていった瞬間だった。




