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第二十七話 アルゴ王国東第三小隊

 遠くの方から砂煙を上げ、かなりのスピードをで此方の方に何かがやって来る。


「馬車の中に入って下さい、何とかします」


 俺は若干焦っているが、アトラスさんは冷静に告げる。


「仁さん、あれは騎馬なので大丈夫ですよ、行方不明の一台の馬車が街へ逃げたのでしょう。それで兵士が盗賊の討伐に来たのだと思います」


 話している間に三十人程の兵士の騎馬隊が馬車の手前で止まり、その中の一頭の黒馬に乗ったまだ十代であろう兵士が、黒馬に乗ったまま近づいて来て横柄に話始める。


「私達はアルゴ王国第三小隊である。貴様らが盗賊に襲われたミサン商会のものか」


 言い方が少し生意気のような気もするが、アトラスは気にする様子もなく答えた。


「私がアトラスでございます。盗賊は討伐してもらいましたが、それよりイーランズ村がゴブリンに襲われて壊滅しております」


「はぁ何だと、本当なのか、ちょっと来い」


 それだけ言うと小僧は黒馬から降りて、アトラスの襟を掴んで騎馬隊の列へ引っ張っていく。俺は思わず飛び出しそうになったが、アルメイダに袖を掴まれて止められる。


「まだ行かない方がいいです。それにあれは貴族ですね、貴族の中には平民は全員が家来か何かと思っているような奴がいるんですよ、けどほら見て下さい」


 アルメイダが顎で指した方向では、先程の小僧が上官と思わしき人物に思いきり殴られている。小僧は吹っ飛ぶが、直ぐに立ち上がり殴って来た上官に詰め寄って睨み返すがさらに殴られ、周りの兵士に押さえつけられている。


「あれは上官の方が貴族だとしても位は多分下ですね、もしかしたら平民かも知れません。だから小僧は睨んだと思いますが、軍は階級で上下関係が決まるので、まだそこが小僧には納得いっていないようですね」


 アルメイダの解説は適格で分かりやすいが、少し楽しんでいる様子がある。貴族に何か恨みでもあるのだろうか。


 小僧を殴った上官がアトラスを真ん中に構えている偉そうな人物の元まで連れて行き、アトラスはその人物と話始めた。そのうちに懐から地図を出して指で何かを示している。多分、盗賊のアジトを教えているのだろう。


 その偉そうな人物が殴った上官に指示を出すと、彼を含め五人の騎馬が森の中を駆けていき、さらにもう五人の騎馬がイーランズ村の方へ駆けて行った。


「仁さん、ちょっと来て貰えますか」


 アトラスが手を振って呼んできたので騎馬隊の方へ歩いて行く、アトラスが話していた人物は、見た目がいかつい中年ではあるがどことなくフランを思い起こされるような気がする。


「君がエルフと行動を共にしていた仁殿か、私は小隊長のヨアキムだ。まずは向こうに転がっているかなりの数の骸骨は盗賊だと聞いたがそれは本当なのか」


「仁で結構です。盗賊達の死体はそのままにしておけないと思ったので燃やしました。討伐した者はB級ですので、盗賊ぐらいならあんなものじゃないでしょうか」


 遠慮しているわけでは無く、面倒な事に巻き込まれたくないと防衛本能が働いたので、大部分をミネルバ達の活躍ということにして討伐の様子を詳しく話した。


「流石はエルフ達だな、君はエルフ達とパーティを組んでいたのか」


「そうではありません、記憶を無くして彷徨っている時に、エルフ達に助けられて彼らの里で魔法と狩りを教わっただけです」


 そう話すと周りの兵士からどよめきが起こった。エルフの里は滅多に人間が入れずそこに入っただけでも珍しいのに、魔法を教わったと聞いてさらに驚いている。


「そうか、仁殿、いや仁か君も魔術師なんだな、記憶は少しだけでも戻っているのか」


「いえ、全く分かりませんが、とろあえず街で冒険者をやろうと思っています」


 ヨアキムは顎に手を当てながらじっと仁を見つめる。


「魔術師なら軍に入ったらどうだ。冒険者だと厳しいぞ。何なら俺の部隊に入れ、一度テストを受けないか」


「申し訳ないのですが、もし記憶が戻ったらそっちへ行ってしまうかも知れないので、俺なりに冒険者を暫くやります」


「そうか残念だな、話が脱線してしまったが君の口からもイーランズ村の事を詳しく教えてくれ」


 俺はイーランズ村の現状とアルメイダから聞いた原因を話し、さらにゴブリン村の事も話した。ゴブリンの村があった場所は一応アルゴ王国にあるらしいので地図で場所を教えておいた。


 すると兵士達の間に何とも言えない空気が流れ始めた。イーランズ村の在中の衛兵の中に先程殴られた小僧の兄で、リンツ家長男のトルスティが赴任していたからだ。

 

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