第二十六話 ルークの置き土産
出だしはサントの視点になります。もっと書いたのですが動きがあまりにも悪くて削りました。
僕は見てしまった。馬車の中は人数が多いので寝ずらく夜中に目が覚めてしまったので、しょうがなく窓の外を眺めていたら、仁さんが焚火の前に立って真剣な顔で森を見ている姿が見えた。声を掛ける雰囲気ではなかったのでそのまま見ていると、かなり低い唸り声が聞こえてきたんだ。すると仁さんは杖の先を森の方に向けて何か呟くと、直ぐに破裂音が響いた。
暗くてよく見えないが、森の中で大きなものが倒れて行ったんだ。杖を構えてからあっという間の出来事で、詠唱があまりにも短い。普通は攻撃魔法を放つ場合は構えてから詠唱をするので溜めの時間が必要で、さらに言葉の積み重ねで威力が上がっていくと聞いていたが、随分聞いていた話と違うように思える。
これがエルフ流なのか知らないけれど仁さんは凄いな。僕が知っている魔術師とは何かが違う気がする。
サントは興奮してしまいこの日は眠る事が出来なかった。空が段々と明るくなってきたので馬車の皆を起こす。何故かサントはやけに元気が良く張り切っていた。やはり少しでも街に帰りたいのかも知れない。
少しだけ街道から外れてしまうが、小川があるのでそこで身体を洗う事にした。ノエルさんに壁で隠そうかと尋ねたら喜んでくれ、その時は流石に魔力の無駄使いとは言われなかった。
「じゃあ、さっぱりしたので行きましょうか、少し仮眠を取りたいので例の曲がり角の前で起こして下さい」
アトラスさんにお願いして俺は直ぐに眠りについた。アトラスはハクの隣に座って前を見つめている。するとサントが寄ってきて、馬車内に聞こえないようにそっと二人に話した。
「ねぇ、昨日の夜中に仁さんが大きな魔獣をあっという間に倒したんだけど、その時に殆ど詠唱しなかったんだよ」
「本当か、何を倒したか見たかい」
アトラスは気になってサントに聞くがサントは首を振る。するとハクがサントに助け船を出す。
「アトラス様、何を倒したかは分からないですけど、仁さんはかなりの腕前だと思います。壁なんて杖の一振りで造ってしまうのですから、そんな魔術師いないですよ」
「B級のミネルバさんやルークさんと一緒にいたのだからあり得なくも無いか、仁さんの本当の名前は何なんだろう、他国の有名な魔術師かも知れないな」
「アトラス様、仮に冒険者でしたらギルドに行けば分かると思いますよ」
「そういえばそうだな」
アトラスとハクは納得したが、サントは意味が分からず首をかしげていたが、眠気に勝てず大きなあくびをしながら馬車の中に戻って行った。
馬車は進んで行き、今は穏やかな時間が流れている。ただ座っているだけのアトラスは眠くなってしまい、うつらうつらしてしまう。何度目か頭が重力に負けてしまった頃に、あの忌々しい曲がり角に到着した。
確か死体がいくつか転がっていたはずだが、何もなく焦げた跡があるのみで、さらに円を描いた壁が丘陵の中腹に佇んでいる。
「仁さん起きて下さい。曲がり角に着きました」
少ししてからかなり眠そうな顔をした仁が起きてきた。仁は馬車を降りて壁に近づき杖の先を向けると、直ぐに壁は砂に戻って行った。だがあろうことか十数体の串刺しの人骨が現れた。
「キャー」
「ギャァー」
全員が既に馬車から降りて仁の行動を見ていたので、まともに見てしまったノエルとその子供達の叫び声が辺り一面に響き渡り、そのまま気を失って倒れた。その他の面々は顔面蒼白となって声も出す事が出来ない。
「ルークめ、火力が弱すぎなんだよ」
俺はボソッと呟いたあとで針を砂に戻し、盗賊達の骸骨はそのまま崩れるように地面に落ちて行った。
「アトラスさん、そういえばあの馬車の荷物はどうしますか」
骸骨の事には一切触れないようにしてアトラスに声を掛けた。アトラスは死体が壁の中にある事は知っていたので、まだアルケイダ家族より立ち直りが早く、一応荷馬車の中を確認しにハクと共に荷馬車へ向かった。
「仁さん、いきなりあれは無いですよ、もっと考えた方がいいと思います」
サントが呆れたように言ってきた。十二歳の子供に大の大人が怒られてしまった。全てルークが悪いと思う。
「仁さーん、ちょっと来て貰えますか」
アトラスが呼んでいるので荷馬車に向かうと、本来ならば村の住民に売るはずだった服が並べてあった。
「仁さんの服装は狩人何ですけど、仁さんは魔術師ですよね、いっその事これを着て下さい」
アトラスはフード付きの赤色のローブでなかなか奇抜なものを渡してきた。何だかおかしな恰好になってしまった。
「これ変じゃないですか」
自信なさげにアトラスに聞くが、一切聞いてくれずにプレゼントされてしまった。服以外には装飾品が少しと食料もあったので、持てるだけ持って馬車に戻り、後は諦めるとアトラスは決断した。
すると遠くの方からけたたましい音が聞こえ、何かがかなりの数でやって来るようだ。




