表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/181

第二十話 ミネルバへの思い

 アトラスはミネルバとルークがB級冒険者であると知り、村か街まで護衛をしてくれたら一人に付き金貨二枚払うと言ってきた。


 本来ならば街道までは進まずなだらかな丘陵を登り切ったところで、ゴブリンを探していないようならば二人は南下して里を目指し、俺はそのまま西に進んで街道沿いにでて、さらに西のクリフトの街かイーランズ村へ行くかの選択をする予定だった。


 ミネルバとルークは俺に待っているように言い、少し離れたところで真剣な顔をして話している。少し経つと俺を呼びよせた。

 

「仁、本当だったら別れる時に言おうと思っていた事があるけど、いい機会だと思うからこの護衛の依頼を受けるよ、いいよね」


「任せるよ、ミネルバ達がそれでいいのなら」


 ミネルバは頷き、アトラスと契約の話をしに行った。こちらの条件はやり方に口を出さない事と、元のルートに戻ってからクリフトよりは近いイーランズ村へ向かう。仮に盗賊が現れて危険が無くなったと判断したら二人は終了するその三点。アトラスは元のルートには嫌悪感を覚えたが、それでも早く村に辿り着けるのでその条件を飲む事にした。


 それから直ぐに出発する事になり、俺達も馬車に乗りこんだ。従者のハクには荷台に移ってもらい、操縦はルーク、その隣に俺、荷台の一番後ろで背後の監視をミネルバが受け持つことになった。

 

 ルークは馬車を操縦しながら後ろには聞こえない声で人間の村の常識を俺に教える。特に重要なのはやはりお金で、この世界には銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨があり、銅貨が十枚で大銅貨一枚と同じ価値を持つように十枚でランクが上がっていくようになる。


 今回の護衛は盗賊が出ているが、明後日の昼には着くのでちょっとおいしい仕事だそうだ。但しB級ならもっと稼げる仕事が転がっているので、ランクは早めに上げた方がいいがお前は目立つなとも言われた。中々難しい塩梅を求められる。


 それ以外にもいろいろ情報をくれ、いかにエルフの里が特殊だったのかと改めて思う。荷台の中は物音ひとつしないので覗いて見ると、三人とも死んでいるかのように眠っていた。昨日からずっと心が休まる事が無く、眠る事すら出来ずに逃げまくっていたのだからしょうがないだろう。


 順調に進み小川が見えた頃夕闇になったので、この辺りで泊まる事にする。地下に部屋を作る事は余り好ましくないので、四方に壁を出し天井を草木で覆った。俺が簡易の家を造っている間にルークが狩りにいき。ミネルバが食事の準備を始めた。


 ルークは鹿を捕まえてきたので荷台に合った野菜と一緒に、かなり贅沢な鹿シチューが完成した。匂いにつられたのかアトラス達が荷台から降りてきて、まず四方の壁を見て驚いている。従者のハクは自分が寝てしまった事にしきりと恐縮し、サントはシチューから目が離せない。


「何と言ったらいいか、この壁は凄いとしか言いようがないですね」


 アトラスは驚きを隠せず言った。


「そんな事気にしなくていいから、温かい内に食べて、サントもいっぱい食べるんだよ」


 ミネルバはサントにシチューをよそい、サントは夢中でシチューを掻っ込んで食べている。聞いたところ、逃げるのに精一杯で食事を作る事は出来ず、生野菜をかじる事しか出来なかったそうだ。

 

 アトラスもハクも穏やかな目をしてそんなサントを見ている。アトラスの年齢は五十歳だが、子供は十二歳のサント一人しかいなく、とても可愛がっているようだ。


 ハクも長年使えてきたアトラスの子供なので言葉では出せないが孫のように思っている。だがサントにとっての初めての行商がこんな事になってしまったのを残念に思っていた。


 夜半になり、今までだったら全員で眠る事が出来たが、ここではそれが出来ないので三人が交代で見張りにつく事になった。最初にミネルバが見張りに立つ事に決まったのでルークは眠りについた。俺はそっとミネルバに近づいて行く。


「ちょっといいかな」


「いいけど、寝なくて大丈夫なの」


「平気だよ、そんな事より突然決めてしまってゴメンな」


 俺は頭を下げる。


「いいの、どうせフランが言い出したのでしょ、私達の時もいきなり冒険者に憧れているならとっとと出ていけって言って、その場で親も説得してルークと二人で追い出されたんだから」


 そう言いながらミネルバがほほ笑んだ。それから朝になるまでミネルバの子供の頃や冒険者時代の頃、それに俺の向こうの世界での学生時代や社会人時代といろいろ話した。話している最中に何度抱きしめてようとしたが、決して動かずただただ耐えていた。抱きしめてキスをしてそれがいい思い出になる…………………………………………………………などどはしたくなかった。


 時間は瞬く間に過ぎて朝を迎えたのでルークを起こそうとして、肩を揺らそうと手を伸ばすとその手を掴まれた。


「ちゃんと話したようだな、少しはましな顔になっているじゃないか、俺がちゃんと見張りしているから二人して荷台で寝ていな」


 ルークにしては小憎らしい事を言う。ハクがルークの指示で馬車を操縦してルークは荷台の屋根に登る。


 アトラスとサントは荷台から外を眺め、俺とミネルバは二人して肩を寄せ合うようにして眠った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ