第十九話 この世界での最初に会った人間達
二つのチームに別れて進み始めたが、ミネルバ達に先に行ってもらい俺は一人でフランの後ろ姿を見えなくなるまで見送った。フランは一度振り返った後で森の中へ消えて行った。
自分の顔を平手で叩き、気合を入れなおしてミネルバ達を追い駆ける。二人には直ぐに追いつきミネルバを先頭に一列になって進んで行く。
俺とフランの別れを見て何かを察したのか、ルークもミネルバも黙ったまま歩き続ける。出来る事ならば歩いている時ではなくて食事のときにでも話そうと思っていたが、この重い空気には耐える事が出来ずに口を開く。
「あのさ、俺は草原に出たらそのまま西に進んで街を目指す事にしたんだ。里には戻らない」
何て話して良いのか分からなさ過ぎてぶっきらぼうに言ってしまう。ルークは振り向いてサムズアップをしたが、ミネルバは未だ無言のまま進んで行く。
「なぁ二人はもう冒険者はやらないのか、出来れば一緒にやりたいのだけれども」
思わず口走ってしまったが、ルークは振り向き首を横に振る。ミネルバは空を見上げ街には行きたくない理由を語り出した。
昔、ミネルバとルークと人間二人でパーティを組んでいたころ、勢力が大きい盗賊の討伐依頼があり、B級のパーティだったミネルバ達が中心となって十組の合同で行った。
討伐は順調に進んでいたが、一人の裏切りによって頭のガルダと幹部の一部が逃走してしまう。それ以外は全員その場で処刑され、その中にガルダの妻や娘や二人の息子の四人も入っていた。
ガルダ自身、元B級の冒険者でまだまだ力が健在の為、逃げた先でも力を持ち直し「緑の風」という盗賊団を結成している。
ガルダは参加した冒険者全てを逆恨みし、裏の世界で懸賞金を掛けた。しかし参加した冒険者はそもそも力があるので、殆どが街などでは被害に遭っていないのだが、ダンジョンなどは別で魔物だけでは無く襲撃者にも注意しなくてはならない状況に嫌気がさして、冒険者を廃業する者も現れた。
但し元は国をとしてのギルドからの依頼なので、ギルド側も国も「緑の風」のメンバーに懸賞金を掛けているし追っている。
しかしミネルバとルークはそんなめんどうな状況に我慢できずに里に帰る事を選択する。どうせ五十年も経てばガルダも幹部も死んでいるだろうし、その前に「緑の風」が滅ぶかもしれない。それからまた冒険者に戻るか否かを考えようと決めた。
「だからまだ行きたくないんだ。大体私達とパーティを組んだら仁も狙われるよ」
「俺なら大丈夫だよ、俺にはこの魔法があるしな」
その容易な言葉に初めてミネルバが切れた。
「馬鹿なの、迷い人は無敵じゃないんだよ、魔法を封じ込まれたらどうするの、封じ込めの腕輪とかあるんだよ、ゴブリンをいくら倒したからと言っても所詮は雑魚のゴブリンなんだよ、それに人里では魔法をセーブするんでしょ忘れたの、迷い人って事は秘密にしなきゃいけないんだよ」
「姉ちゃん、落ち着いて、仁もそんなつもりで言った訳じゃないんだから」
俺は直ぐに謝ったがミネルバは全く此方を振り返りもせず、ひたすら歩いて行く。空気はますます重くなっていき、昼食も歩きながら済ませたのでこのまま別れを迎える事も覚悟して歩いていた時、ルークが叫んだ。
「仁、魔物がいる。姉ちゃんもしっかりしろよ、走るぞ」
ルークがミネルバを押しのけて走って行く、俺達も急いで追いかけ森をぬけると直ぐ目の前を馬車が通り抜け、その後をゴブリンが追いかけている。
「バレット」
後方のゴブリンを撃ち殺す。馬車に取り着こうとしていたゴブリンはルークによって全て斬り殺された。離れたところで様子見しているゴブリンはミネルバにより足を射抜かれている。ミネルバはそのゴブリンに近づき何かを話した後、額を撃ち抜いた。
「ハイゴブリンかと思ったけど違ったみたい。これで終わりだと良いけど」
ミネルバが戻りながら普通の口調で話し掛けてきた。少しだけゴブリンに感謝したくなる。未だ気が付いていないのか馬車は進み、暫くしてから大きく弧を描いて戻って来きて一人の男が馬車から飛び降りた。
「ありがとうございます。助かりました冒険者の方ですか、私はミサン商会のアトラスと申します。こっちが私の子供のサントです。従者はハクと言います」
「あのさぁ、それより何でこんな所にいるの、街道から随分と東に来ているんだけど死にたいのかよ」
ルークは呆れたように尋ねた。
「違うんですよ、ちゃんと護衛もいて三台の馬車で街道を進んでいたのですが、曲がり道の峠で盗賊に襲われまして護衛が何とか防いでいる間に逃げようとしたのですが、その時に街道を離れこっちの方へきてしまったので、そうこうしている内に今度はゴブリンと出会ってしまいこうなったのです」
「とことんついていないね」
ミネルバは憐れむ様に言った。




