第十七話 洞窟の中のゴブリン
洞窟の中は思ったよりも広く、何より驚いたのが壁にランプの魔道具が所々に置いてあったことだ。
「ゴブリンが作ったのですかね」
ランプを一つ手に取り、よく見ながらフランに聞いた。
「違うな、村や商隊を襲った戦利品だろう。ゴブリンのくせに知恵を付けやがって」
稀にゴブリンの中に進化して知恵を持つ者が現れる。知恵には個体によって差は出るがそれらをまとめてハイゴブリンと呼称する。ハイゴブリンの中には言葉を理解し話す個体も現れるので、フランは生け捕りにして群れ全体を確認したかった。
洞窟は自然に出来たものに改良を加えてあるらしく、道は剥き出しの地面ではなく整地されたゆるやかな曲線をしている。表の騒ぎを全く知らないのかたまに出会うゴブリンは武器も持たないでのんきに歩いて現れた。フランの風刃により簡単にゴブリンの胴体と首が分かれる。
少し進むと左側に小部屋が見えたので、本道にはフランが残ってもらい俺だけで見に行くことになった。
部屋と言っても扉はなく、ただ学校の教室ぐらいの広場があってその中には、肌が今までのゴブリンとは違い張があり、体長が五十cmにも満たないゴブリンが広場の奥の方で三十匹ぐらいが遊んでいる。身体の色や顔のパーツの大きさは人間とは違うが、それでもまだ子供である事には間違いない。
俺はあまりの衝撃で動けずにいると異変を感じたフランがやって来て俺の背中に声を掛けて来た。
「何をボサッとしている、早くしろ、まさか子供だから殺せないのか」
言い終わると俺をどけようとしたが、俺は踏ん張りゆっくりとフランに話始める。
「あれ見て下さい、親とは違いまともな顔をしていますね、それなのにあいつらがボールみたいに投げ合っているのって頭蓋骨ですよね、それに奥で……」
それ以上は言葉にならず杖を下、左、上、右と円を描くように一周し生きているのはゴブリンの子供だけしかいない広場中に響き渡るように叫んだ。
「手前ら、人間を持て遊んでんじゃねぇ、ニードル」
広場の壁の至る所から何百万もの針が伸びてきて、全てのゴブリンを一瞬で串刺しにし、広場の空間は針で埋め尽くされる。床は緑の血で溢れかえり息が詰まるほどの臭気が起ち込めた。
「すみません、あまりにもムカついてしまって」
肩で息をしながらフランに振り向き言った。
「まぁいいよ、それより杖の魔石に手をかざして魔力を補充しておけ」
手をかざすと魔石の色が若干濃くなり、代わりに魔力が流れ込んできて完全に回復した。
「フランこれ凄い、完全に魔力が元に戻ったよ」
「そりゃそうだ、これはレア度S級の魔石だからな、夜寝る前にでもそれに魔力を補充しとけ、何日かすればまた元の色に戻るから」
二人で本道に戻り奥へと進んで行く。俺がもたもたしていたせいでゴブリンが外へ出てしまったか多少気になったが、先に進みことにする。
奥に行けば行くほどかなり生臭い匂いが鼻を衝く。道の奥にはひと際明るくなっていて、魔力感知が出来ない俺でも分かるくらい気配がビンビンに感じる。
「何時でも撃てるように準備しろよ、この先にうじゃうじゃいるからな」
ゴブリンが出て来る気配が無いので近づきそっと覗いて見る。そこは中々の倉庫の様な広さがあり、その中には三百匹位のゴブリンが全く危機感を感じていないで、何かを食べていたり寝転んでいるとか思い思いの行動をしている。一番奥には玉座らしき物がありかなり大きなゴブリンが座ってくつろいでいる。
「じゃあ行くぞ、玉座のあいつは殺すなよ」
フランは掌の上に風刃玉を出した。この玉は飛ばした後は近づくだけでも身体が切り刻まれる羨ましい魔法だ。
フランが風刃玉を飛ばし俺は「バレット」を唱える。風刃玉はゴブリンを追いかけながら縦横無尽に暴れまわり、何とか逃れたゴブリンを撃ち漏らす事が無いように俺は弾をばら撒く。五分もしない内にハイゴブリン以外のゴブリンは動かなくなった。
ゆっくりと近づいて行くと玉座の様子が分かってきた。玉座は人間や獣人の死体や骨で作られてあり、あまりにもおぞましい物だった。
「化け物が……ニードル」
両手、両足、それぞれに四本ずつ刺しながら後方の壁に昆虫採取のように張り付ける。
「フラン、どうぞ」
「おいっお前の部下で村から出ている奴はいるのか」
「ぐぎゃぐぎゃぐがや」
ハイゴブリンは苦しそうに話すが全然意味が分からない。
「くそがっ、出来損ないかよ」
忌々しくフランは吐き捨てハイゴブリンを風刃で細切れにし、何の爽快感もないままふたりして洞窟を後にした。




