第十六話 ゴブリン狩りの開始
三日目の朝を迎えた今日はいよいよゴブリンの村を討伐する。ここからは音もなるべく起てずに歩いて行き、まずは村を見渡せる高台を目指す。
日差しが真上から降り注いだ頃、辺り一面に異質な匂いが漂い始めようやく高台へ辿り着いた。見つからないように姿勢を低くして村の様子を見る。
「こりゃこの前とかなり違っている、やはり進化した個体がいるな」
アサドが驚いたように声をあげた。今の村の構図だが崖を背としたら五百mの直線で三方を簡易な柵で覆われている。中には枝で作られたテントらしき物が八個あり、崖の下には洞窟があってゴブリンが出入りしている。
「この規模だと連れ去られた者がいるな、まだ生きているかも知れないから救出を踏まえた作戦にするぞ」
フランの立てた作戦は洞窟の上の崖にアサドが配置に着く、右回りにフラン、俺、ミネルバ、ルーク、イマームで村を囲むように六角形に広がる。アサドは勿論だがミネルバも高台になっていて残りは平地にて待機する。
アサドが配置に着いたら火矢を空に放つ、最初にアサドとミネルバがテントを避けて広範囲魔法を仕掛け、その後でフランの合図により残りの四人がその場からゴブリンに向け幾度も攻撃をする。
フランが村の中央に水柱を出したら突入開始、ルークとイマーム組、フランと仁組の二チームを作り村の中へ入り駆除しつつテントの中を救出する者がいないかを調べ、いないのならテントを潰す。
その間アサド、ミネルバは脱出するゴブリンがいたらその場から排除をする。全てのテントを潰したらフラン組は洞窟へ、ルーク組は村の中をもう一度くまなく調べ洞窟へ向かう。
「それだと捕まっている人達がいたら、人質にされるか殺されてしまうのではないですか」
俺はフランの作戦が少し心配になり聞いてみた。
「大丈夫だ、あいつらにとって人間や獣人は道具か食糧としか思っていない。敵が現れたらそれに対処する事しかしないんだ。だから最優先は討伐で次に救出でも問題ない。じゃあサクッと終わらせようぜ」
フランの号令により各自が自分の配置に向かう。俺は向かう前ミネルバに肩を叩かれ軽い握手を交わした。
じりじりと太陽が照り付けるなか、俺は村の西側に配置につき空をじっと見つめ火矢が飛ばされるのを待つ。
ゴブリンの煩わしい声が聞こえるときに、空に一本の火矢が上がった。続け様に先程よりも大きい火矢と氷矢が上空高く舞い上がり、それぞれ二十本位に別れて急降下して外にいるゴブリンを串刺しにしていく。次は俺達の出番だ。
異変に気付いたのかテントからかなりの数のゴブリンが出て来る。
「ホール」
俺は近くにある二つのテントの入口にテントよりも大きくて深い穴を開けて待つ、馬鹿みたいに飛び出してきたゴブリンは次々と穴の中へ姿を消して行く。
「圧縮」
一気に穴を埋め中のゴブリンを圧縮して潰す。そのテントの右ではフランの出した炎のつむじ風がゴブリンを巻き上げながら焼き尽くす。さらに俺の正面からは熱波が飛んできた。ルークが火の斬撃を飛ばしているのだろう。イマームは俺の「ブースト」に近い魔法でゴブリンを真上に飛ばして落下死させている。
さらにもう一度、火と氷の矢が降り注いで見えているゴブリンが死に絶えた頃、村の中央にかなり大きい水柱が上がった。いよいよ突入開始だ。フランに近づき村の柵を飛び越える。
「仁はそっちの二つを見てくれ、テントは後で燃やすから駆除だけしておいてくれ」
「はいっ」
俺は一つ目を覗き中で怯えていたゴブリンを撃ち殺す。二つ目のテントの中はゴブリンが奪ってきた武器や防具や装飾品で山になっていた。かなりの数だ。
「誰かいないのか、助けに来たぞ」
怖くて隠れているかも知れないので、大声をあげながら物をどかしたが誰も居なかった。外に出て邪魔なゴブリンの死体を乗り越えながらフランを呼ぶ。
「フラン、こっちは両方とも大丈夫です」
「わかった、離れろ」
凄まじい音と共に二m程の火球がテントにぶつかって全てを燃やし尽くす。
「仁、洞窟へ進むぞ」
一方、ルークとイマームは二人でテントを回っていた。一つ目は四匹、二つ目は三匹と中にいたが難なく瞬殺し、三つ目のテントの中に入ろうとすると、いきなりサッカーボール程の火球が飛んできた。
「イマーム、中にメイジゴブリンがいるぞ」
イマームは直ぐに長剣に風を纏わせ袈裟斬りをする。テントと共にゴブリンを真っ二つに叩き切った。
「おいイマーム、ゴブリン以外がいたらどうするんだよ、中を少しは見ろよ」
「悪い、忘れていた」
幸いにも中はゴブリンの死体しかなく、次の四つ目は空だった。
「じゃあ、隠れている奴がいないか探すか」
ルークはイマームに声を掛けて村の探索を始める。




