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第十三話 三年後

 この世界に来てから約三年が経過した。もう二十八歳になりすっかりアラサーになってしまったが、流石エルフの里だけありここではまだ若者だ。


 最初に着ていた服は大事にしていたがとっくにボロボロになってしまったので、今は全身にグラスウルフの皮で出来た深い緑色の上下を身に付けている。元の世界だとこの格好はまるでコスプレだが、この世界では特に森の中だと目立たないので狩りには最適な服装になっている。


 杖の訓練もかなり本気でやっているが、才能のかけらも無いのかなかなか上達している気がしない。フランは勿論のこと、ミネルバにも打撃を当てる事すら未だ出来ないでいる。


 魔力の容量は二年目あたりでパッタリと成長が止まってしまったらしい。何故らしいのかというと、容量を測る魔道具がここにはなくただ感覚的に増えている感じがしなくなった。


 ただフラン曰く勇者の足元にも及ばないが、それでも人間の有名な魔術師より三倍はあるそうだ。


 勇者が優遇されすぎてやしないかと思ったが、実はフランに聞いた話だと勇者と呼ばれる前に魔国でのある出来事が原因らしい。そのことは思い出したくないと勇者に言われたそうなので本当のことは分からない。ただそこでの出来事が原因で身体能力や魔力が上がったそうだ。いつか調べてみるのも面白いかも知れない。


 昨日、訓練中にグラススネークの杖を折ってしまったので、今日はルークに杖の材料探しに付き合って貰っている。また同じにするかそれとも別の物にするかは出会いで決めようと思う。大型の魔獣が多い森の中心を散策する為に険しい道を歩いて行く。


 ルークはフランやミネルバ程では無いが魔力感知はかなり鋭い。おかげで今のところ煩わしい雑魚魔獣と戦わないで先に進める。雲一つない晴天の中気分良く歩いていると、突然ルークが真剣な顔を向けてきた。


「なぁ、最近姉ちゃんとどうなっている」


「何だよいきなり、どうって何だよ」


 いきなりの事で動揺してしまったが、何が言いたいのか流石に分かる。ここのところはよく二人だけで狩りに行き、当たり前のように一緒に過ごす時間が多くなっていた。


「分かるだろ」


 ルークは真顔だ。


「あぁ、一緒にいるとそりゃ楽しいよ。けどその先に進みそうな雰囲気にはならないようにお互いしているよ」


 なるべくならこの話題を避けたいのだが、まだルークの追求は続く。


「やっぱり帰りたいのか」


 確かに答えがそれだけだったらどんなに楽だったろう。


「どうなんだろうか、俺はそろそろ里を出ようかと考えているんだ。そこで元の世界へ戻る為に迷い人の痕跡を探すのか、諦めてこの世界で暮らすのか決めようと思うんだ。勿論、ミネルバに話している」


「そっか、お互い子供じゃないからな、姉ちゃんは暫く此処で暮らすつもりだからしょうがないか」


 ルークに言った通り、ミネルバは暫くこの里から出る気はないと俺に告げてきた。実はその事をフランにさりげなく聞いた時、「言いたくなったらいうだろうから、今はそっとしておけ」と言われてしまった。まぁフランのように人間嫌いとは違うようなので気にしない様にはしている。そんな空気を一気に変えてしまうようにルークが興奮して叫んだ。


「仁、こんなところに黒曜の木があるぞ」


 そう言いながらルークは木に抱きついた。黒光りしたその木はこの森ではもう生息していないと思われていたらしく、その枝はしなりが良く丈夫で、幹は硬く杖にも柄にも適しているらしい。


 それ程大きい木ではないので、ルークが「水刃」で分解し持って帰る事にする。あまりにも雑に切ってしまうので心配になりルークに尋ねた。


「あんな簡単に切ってしまっていいのか、貴重な木なんだろ」


「だよな、興奮しすぎてやらかしちゃった。後で一緒にフランに謝ろうぜ」


 勘弁しろと思ったが、今更どうにもならないので諦めて里に戻り、早速ライルの元を訪ねて杖と弓の依頼をしてから嫌々フランの元へ向かう。結局フランはもとよりシャペル様からもかなり長い時間説教を受けてしまった。森を愛するエルフをそこに感じる。


 一週間後、杖と弓が完成したのでフランの家で自慢していると、狩りに行っていたアサドが血相を変え入って来た。


「フラン大変だ、コンソル山の崖下にゴブリンが村を作っていやがった」


 かなり急いだのだろう、ルークが渡した水を一気に飲み干した。


「数は」


 フランは落ち着いている。


「だいたい二百弱はいたな」


 あんなのが二百もいるのかと思うと背筋が凍り着くような気がしたが、それなのにフランは未だ落ち着いていて、口に手を当てながら独り言なのか指示なのか分かりずらい音量で告げる。


「四日、頑張って三日で行けるか。俺とミネルバ、ルーク、アサド、イマーム、仁なら余裕か」


 ゴブリンは狩らないでほっとくと集まって村を形成してしまう。一匹一匹は雑魚だが、集まるとかなりやっかいな存在になってしまう。この規模だと既にどこかの村が襲われている可能性があるそうだ。男や子供は食べ、若い女は犯し子を産ませ産めなくなったら食べる、害虫だ。


 ゴブリン狩りが始まる。


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