第十二話 平和なエルフの里
目を開けるとまた聖水の中にいた。さっきまでオークと戦っていたはずなのに何故なんだろうか、ぼんやりと考えながらゆっくりと身体を起こす。
すると部屋に入って来たミネルバが目に涙を浮かべながら抱き着いてきた。困惑しながらもそっと髪をなでて聞いてみる。
「どうした、何でまたここに入れられているんだ」
「お前が自滅したせいだろうが」
いつの間にか姿を見せたフランが怒鳴り声をあげ俺の頭を叩いてきたので、俺の額とミネルバの額がぶつかる。
「痛いですよ、私にもぶつかったじゃないですか、シャペル様を呼んで来ますので仁に乱暴な真似をしないで下さいね」
ミネルバは急いでシャペル様を呼びに走って行く。その間に水の中から出てフランから渡された服を着て待っていると、フランがほっとした顔をして言ってきた。
「とりあえず生きていて良かったよ、まさかあんな隠し玉を持っていたとはな」
「こっちとしては何があったか分からないんですけど」
二人で顔を見合わせて軽く笑った。フランから話を聞いたが、身体中の骨が刀のつばで弾き飛ばされた事や地面に叩きつけられた事で砕けてしまい、内部にもかなりのダメージがあったらしくハイポーション一本ではどうにもならなかったらしい。
二日間眠り続けようやく目を覚ましたそうなのだが、たった二日でここまで治ってしまうなんてこの世界は素晴らしい。
その後でシャペル様に身体の隅々まで診て貰って一週間ゆっくりと過ごせばいいだろうということになり家に帰った。
家に着くと反省会が行われ最後の魔法に関しては暫く封印する事を約束させられてしまった。場所と太さを瞬時に考えないと同じ事の繰り返しをしてしまうので、至近距離の場合は「ウォール」で防いで距離をかせぐかにして武器での攻撃を覚える事になった。
この里には鍛冶屋はいないが杖や弓なら作れると言うので、必然的に杖を作って貰うことになる。鍛冶屋のある町へ行けば当然ながら種類は選び放題だが、近い町まで十日程かかってしまうので面倒くさいし金もない。丁度グラススネークの牙があるのでいい杖を作って貰おう。
翌日になり、ミネルバと杖造りが趣味のライル宅へ向かう、趣味と言ってもそこは時間を持て余したエルフだけあり、一級品以上の杖が出来るそうだ。
ライルは家の前で立っていて、俺達の顔を見つけると満面の笑みを浮かべた。
「おーい、早く来いよ、早く」
俺は腕を掴まれ家の中に連れていかれる、ミネルバも不思議そうな顔をしながら一緒に中へと入って行った。
「フランからこの魔石を杖に付けてくれって言われてさ、もう楽しみでしかないよ」
その魔石は煌びやかな薄い青色で繊細な感じがする魔石だ。この魔石の中には魔力が蓄えられていてかざすだけで魔力が補充される貴重な魔石らしい。しかし魔力の容量が多いと言われる俺にはあまり必要では無いのかと尋ねると、ライルは答えた。
「馬鹿だな、森にあるあの馬鹿でかい刀ってお前の仕業なのだろ、あんなの人間の前で魔石の力無しで出してピンピンしていたら直ぐに迷い人か余程の天才かって騒がれるぞ、ここは皆が知っているからいいけど、外の世界で普通に暮らすつもりなら用心しないとな」
完全に失念していた。いつかここを離れたら迷い人だって事を隠さないと生きにくいのだった。実際普通の人間と比べどれくらい魔力の容量が違うのか分からないが、最初は慎重に行動しようと思う。
「仁は里を出るの」
ミネルバが聞いてきた。
「流石に直ぐには行かないよ、杖の技術を教えて貰わなくちゃいけないし、最低でも一人で森に行けるようにならないと無理かな」
「お前ら早く作りたいから出ていけ、三日後に取りに来いよ」
ライルに邪魔者扱いされ追い出されてしまった。ブラブラと散歩をしながらミネルバと話す。
「ミネルバもルークもB級の冒険者だろ、俺も街に行く事になったら生活費の為に冒険者になるから、その時は教えて貰えないかな」
「そっかそうだね、けど仁は魔法を使わなかったらE級ぐらいの力しかないよ、もっと鍛えないと」
軽く流されてしまったが、その後は俺があまり手を付けていない風属性の魔法についていろいろ相談にのって貰った。さすがB級だけあり色んな経験を積んでいるので為になる。いつかパーティを組む事が出来たら楽しいだろうな。
叶う事が無い事にその時は気が付かなかった。




