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第十一話 最初の狩りの最終日

「お早うもう朝だよ、早く入口を開けてよ」


 ミネルバが毛布を剥ぎ取って起こしてきた。部屋の灯りは魔道具のランプしかなく本当に朝なのか分からなかったが、入口を解除して二人で外に出て見る。


 朝靄の中、胸いっぱいに森の匂いを感じてすがすがしい気分になるが、フランがまだ起きて来る気配が無いため二人で朝食の支度を進めながらたわいのない会話をしてフランが起きて来るのを待った。


「おぅお早う、起きて直ぐ飯があると楽でいいな」


「お早うございます。さっさと食べて行きましょう。前に出没した場所は岩場の周辺ですからね」


 食事が終わり地下の部屋を元に戻した後で出発する。フランが先行しながら歩き、その後ろを俺とミネルバが続く、朝靄のせいなのか何度か滑ってしまいその都度ミネルバに支えられた。


「ほらっ気を付けて」


 実際年齢はかなり上だけども外見は俺より若く見える為、若干照れ臭く感じてしまう。フランは右へ行ったり左へ行ったり戻ったりしながら魔獣を避けて進んで行く。魔力感知がかなり鋭いためか全く魔獣と遭遇せずに安全に進む事が出来ている。


 出発してから二時間を経過した頃、だんだんと植物は減っていき石コロだらけの寂しい場所に出た。岩ネズミが石の間から顔を出し入れしている。その岩ネズミを狙ってオークが以前現れたと言うので暫くこの場所で待つ事にする。待っている間には風が落ち葉を蒸したような匂いを運んできている。


「運良く風上の方にいるな、仁はなるべく音をたてないようにして付いて来い。ミネルバは仁のフォローを頼む」


 言い終わるとフランはあっという間に先に進んで行ってしまった。俺はミネルバの指示を受けながら慎重に進んで行く。時間が掛かってしまったが転ぶ事なく岩場を抜け、草むらに隠れているフランに追いつく事が出来た。


「上出来だ。風上だからオーク共に見つかる可能性は少ないからじっくり観察してみろ」


 フランに言われて初めてオークを観察した。三m程の人型で猫背のオークの顔は人と豚の中間のような顔をしているが、知性は全く感じられず醜悪だ。恰幅のいい体系で四匹とも何かの死体に群がって一心不乱に食べているので無防備だ。


「どうする、俺達は一切手伝わないが今の状況で倒すか、それとも姿を見せて襲ってくるところを倒すかだ、選べ」


 焦ったようにミネルバが口を開く。


「何言っているのですか、二匹ぐらいならいけると思いますが四匹ですよ、この距離なら少しでもミスしたら近づかれて終わりですよ、せめて数を減らしてからにしましょうよ」


 俺は昨日考えた作戦を思いだしシュミレーションしてみて、いけると判断する。


「ちょっと姿を見せてきます」


 フランはとても面白そうに言う。


「よく言った、実はなハイポーションを持っているんだ。死ななきゃ何とかなるから安心しろ」


「駄目です。仁なら一撃で確実に死にます。仁の遠距離攻撃が失敗したら手伝っていいのならまだ許せますが、それ以外は駄目です」


 ミネルバはかなり心配してくれている。それは有り難いのだがもう少し信用してくれてもいいのだけれども。


 この後もフランとミネルバの話合いが続き、ようやく折衷案としてオークの攻撃が届く距離になったらミネルバが助っ人に入る事になった。フランは小声で耳打ちをしてくる。


「絶対に手を出させるなよ、もし出されたら暫く森に籠るからな」


 俺としては別にまだ森に居てもいいのだが、そんな雰囲気ではないのでただ頷く。


「では行ってきます」


 もう音を気にせず進み出てオークに近づいて行く。一歩踏み出す度に逃げ出したくなるが気持ちを押さえて進んで行く。オークとの間が五十m程になった時、両手を振りながら大声を張り上げた。


「おーい、こっちだぞ」


 直ぐにオークは醜悪な顔を此方に向け、走り出してきた。


「ホールブレード、ホールブレード……」」


 四匹の進行方向に掌を向けながら唱えると目の前に縦長の落とし穴が現れる。二匹は吸い込まれるように落ちていき、その底の下で待ち構える刃で串刺しになる。


「ウォールアンドニードル」


 突然現れた壁に対処出来ないオークは、ぶつかり数あまたの針の森へ沈んで行く。


 最後の左側からくるオークはすでに目の前に近づいて来て狂気めいた目を俺に向けながらそのスピードのまま棍棒を振り下ろそうとする。俺はかなり焦りながら右足を前に踏み込み唱える。


「ブレード」


 オークの足元から奴の身長の三倍程の太さの刃が現れオークを貫き分断する。長さもアドレナリンがでまくっていたせいか五十m程になってしまい斜めの刃の塔が出来た。


 つばの範囲を失念していた俺は、案の定つばの部分で弾き飛んで全身の骨が砕け意識が深い闇へと落ちて行った。


「じーーーん」


 ミネルバが悲痛な叫び声をあげる。


「あの馬鹿が」


 かなり焦ったフランは直ぐにハイポーションを振りかけると、鈍い光が仁を包み込み粉々の骨を治していく。


「これだけじゃ無理だな、神殿に行くぞ」


 フランが意識の無い仁を抱え、ミネルバは周辺を警戒しながら全速力でシャペル様の元へ駆けだしている。

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