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第百三話 開戦直前

 魔族の女性カミラと向かい合い慎重に話始める。


「竜魔王派が一体何なのかはこの際置いておくが、この街に迫っている魔族の国と君の国は違うでいいんだな」


「だからそうだって、私はただこの街に潜入してたまにこの国の情報を流しているだけだよ、けど別に市民として暮らしているから、大したことは知らないけどね」


「それなら君はこの事を急いで国に報告しなくていいのか」


 カミラは新しいカップにお茶を注ぎながら答える。


「この街の行く末を見届けてから報告するつもりだけど」


「それだと手遅れのなってしまうが君の立場は大丈夫なのか」


 カミラは手を止め、首を傾けながら俺を見つめている。まだ言葉の意味がよく分かっていないようだ。


「どうして私の立場が関わって来るのかしら」


「この街の城壁が破られると人間側との戦争になるぞ、先代の竜魔王様がせっかく休戦を結んだのに終わりを迎えてしまう。それなのに君は此処にいるのに悠長に行く末を見ているだけでいいのか。その判断は現在の竜魔王様が決める事じゃないのか」


 カミラは立ち上がり奥の部屋に入って行く。暫くして出て来た時には大きな荷物を抱えていた。


「のんびりしている場合じゃないよね、情報を流す為にこの街にいるのに終わってからじゃ意味ないんだね。一旦国に帰って報告してくる」


 カミラは荷物を抱えながら走って行く。どうやって城壁を越えるのか分からないがなるべく早く国に戻って欲しい。僅かな可能性だがこの街に攻めに来ている国に何らかの圧力でも掛けてくれる事を期待する。


 もうこれで今日は俺に出来る事は何も無い。とっとと家で休んで魔力を回復させてから城壁にむかうとしよう。


 翌朝の早朝になると早速王都からの第一弾である援軍が到着した。援軍を率いて来たノアベルト将軍は司令官のボーイェンがいる指令室に入って行く。


「ボーイェン殿到着致しましたぞ、我らは全て貴方の指揮下に入るのだが。まだ敵が近くにいないのであれば少しだけ兵を休ませたいのだが」


「勿論だ、隣の隊舎に準備が出来ている。今日には敵が来ると思うがそれまでの間はそこで待機していてくれ」


 この増援により兵士と冒険者の数は約七千人となった。まだまだ数は足りないのだが、出だしに比べれば希望が少しだけ持てるようになった。


 陽が昇ると同時にペガサスの偵察部隊が飛んで行く。誰もが魔族が消え去ったという報告を期待しながら待っているがいともあっさり裏切られる事になってしまう。


「遠くの森が動いている」


 城壁の上にいるどの兵士が叫んだのか定かでは無いが、肉眼で見えるギリギリの森が揺れている。もしあれが魔族だとしたら確実に数時間後は目の前に姿を見せるだろう。

 

 城壁の上に動揺が駆け巡った頃にフェドセイ率いる冒険者達が到着した。先頭にいるフェドセイはかなり機嫌が悪いような顔をしながら歩いている。その原因は仁が時間が来ても集合場所に現れなかったからだ。


「あの野郎は何処に行きやがったんだ、それとも逃げ出しやがったか」


「逃げたりはしそうにない感じだったけど、今はイリーナさんが彼の家に見に行ったみたいだね」


 隣を歩くエンシオが淡々と告げる。フェドセイを落ち着ける為に行ったが、別に仁がどうなろうともどうでもいいとエンシオは思っている。「赤腕の魔術師」らしいが実際に見た訳ではないので別にちょっと魔力が強い魔術師程度にしか思っていない。


「城壁の上にいる者以外は全員中央門に集合して下さい」


 何人かの兵士が馬で駆け抜けながら伝言を伝えて回っている。続々と兵士や冒険者が中央門の前に集まり出し人数が増えて行くに従い緊張感が高まって来る。


 全員が見渡せる高台の上にボーイェンが立つと緊張がピークを迎え誰もが口を閉ざし静寂が訪れた。ボーイェンは大きく息を吸った後で全員に聞こえる様に声を張り上げた。


「偵察に行っていたペガサス隊が先程戻って来た。魔族どもはやはり此処を目指して進んでいるようだ。奴らは数時間後には姿を見せるだろう。しかし王国軍の本隊が到着するのは四日後になってしまう。それまで何としてでもこの街を守り抜かなくてはならない。諦めてしまったらこの国は滅んでしまう。俺達が最後の砦なんだ。死んでも守り抜くぞ」


 誰もが興奮したように雄たけびを上げそれぞれの持ち場に向かって行った。北門には兵士二千、中央門に兵士三千、南門に兵士と冒険者合わせて二千。興奮は暫く続いたがその中で誰かがぽつりと呟いた。


「本隊が到着したところで五万じゃねーか、意味あるのかよ」


 ボーイェンの話が終わった頃、イリーナは仁の家の扉を叩いている。一度来た時は出て来ないので違うところを探し回っていたのだが見つからずもう一度家に戻って来た。


「お早うございます、どうかしましたか」


 髪の毛がボサボサの仁が二回の窓から顔を出した。


「どうかではないですよ、もう皆さんは城壁に行きましたよ、仁さんは何をやっているのですか」


「えっもうそんな時間ですか、直ぐに着替えて行きますので、もう大丈夫です」


「頼みますよ、私は先に行っていますので」


 魔人の事を考えていると中々寝付けなかったが、いつの間にか爆睡をしてしまったようだ。けどそのおかげで魔力は完全に回復している。慌てて家から飛び出してイリーナの後を追うように城壁へと馬を走らせた。


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