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1014A:我々は推理を語った。まるで、犯人を追い詰める刑事のように

「私の名前は真柴ハツ。国民学校高等二年」


 列車は池之端駅を通過した。ここから先は宝台という地域に入る。そしてここは、日本人にとって因縁深い地域だ。


「なぜ、こどもが汽車のハンドルを握ってる。学校へ行かなきゃならないんじゃないのか」


「学校はパルチザンに焼かれたわ。男たちも同じように、殺された」


 列車は急にカーブを曲がり始める。ここは宝台ループ橋。住民を虐殺するパルチザンと、日本の治安維持部隊が最終防衛線を行ったまさにその場所。

 今でも、その枕木に血がにじんでいる。その場所を通過しながら、井関達はいま、パルチザンの手先かもしれない少女と対峙している。


 井関の指先は、なぜだか急に震えだした。


「君は事故当時の機関助士だった」


「ええ、そうよ」


「機関士に何をした」


 そう言うと、笑い声だかくしゃみだかわからないような声を出した。


「意味が分からないわ。まずは、あなたの推理を聞かせてよ」


「いいだろう。我々の推理ではこうだ」


 井関はコートを着なおすと、人差し指を立てた。


「列車が脱線した原因は、列車を運転していた機関士が気絶または死亡したことによるものだ。状況から、失神は瀧ノ沢駅通過直後だと思われる」


 その言葉の続きを、笹井が引き継いだ。


「もし何者かが機関士を失神させたとするならば、それが出来るのは機関助士だけだ。なぜなら、機関車内は機関士と機関助士だけの密室であるからだ。ちょうど、今のようにね」


 笹井が、ハツの横顔にこれでもかと顔を近づけて糾弾する。


「そして機関助士は、君だ」


「素晴らしい推理。なるほどね、それなら犯人は私になるわ」


「認めるのか、罪を」


「その前に一つ聞いていいかしら」


 列車はそろそろ第一の山頂へと達する。それを前にして、彼女は少しだけ気を抜いたようで、顔をやっとこちらへ向けた。


「機関士が気絶したとき、私がそこに居たって、証明できる?」


 彼女ははなをズルズルとすすりながらそんなことを言ってきた。小林はふざけるなと声を荒らげる。


「君が、自分で言ったんじゃないか! 私が機関助士だと」


「ええ。でも、その当時私がその列車に乗っていたとは一言も言ってないわ」


「なんだとぉ?」


 恐怖と怒りの感情がないまぜになっている小林をどうにか宥めすかして、井関は問い質す。


「じゃあ君は、当番を割り当てられていたものの、当時列車に乗ってなかったというのか?」


「ええ、そうよ」


「犯人だと、ひいてはゲリラだと疑われて、適当言っているんじゃないだろうね」


「冷静に考えてほしいのだけれども、もし私が犯人だとして、どうやって今ここに生きているのだというの?」


 それとも私は幽霊? ハツは屈託のない笑みでこちらを見る。


「そりゃあ、機関士を殺害してから飛び降りたんだろう」


「じゃあそれが本当にできるかどうか、今ここで列車から飛び降りてみれば?」


 彼女はそう言って扉のほうを手で指した。まるで、どうぞ? とでも言うかのように、眉を寄せて。


 井関は扉の方へ近づく。景色がとんでもない速さで流れていくのを感じる。


「ちなみに今、時速45キロ」


 ね、無理でしょ? という彼女の心の言葉を聞いて、井関もとうとうむしゃくしゃとした感情を吐き出した。


「じゃあ、君は何を知っているんだというんだ!」


 井関の怒りに触れて、彼女はしまったという顔になった。


「そうよね、オジサンも怒っちゃうわよね。じゃあ、今から教えてあげる」

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