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彼女に浮気現場を見られた俺は、しぶしぶ仲直りのチューをしにいったwww

作者: のすお

『突然だけど、明日話し合いたいことがあります』


会話の流れを全て無視して彼女から送られてきた文章

いつもぼくが使い慣れないような絵文字を使っていたのに今回は『。』もない

しかしこの話し合い、原因は知っている


一昨日、ぼくが女性と二人で会ってたからだ

その日の夜にストーリーで彼女も近くのお店の写真をアップしてたから、遠くからぼくが見知らぬ女と楽し気に歩いているのを見かけていたんだろう

もちろん、誤解だ。来月彼女の誕生日、ぼくにとっては一回目の。

何か月も前から彼女の好みのブランドや、欲しいコスメをさりげなく聞き出して、一昨日ついにその買い物に出かけていた。

一緒にいた女性はぼくが頼んで選ぶのを手伝ってくれていた、ただの友達


軽率だった

プレゼント選びなんか、遠くから見かけていた彼女からしてみればただの言い訳だ

明日会って言い訳せずに謝ろう

付き合い始めてからまだ半年も経っていないけど、彼女はいつもぼくの話をちゃんと聞いてくれた

しっかり経緯を説明して、そのうえで謝罪して、終わり。

喧嘩するカップルなんてしょせんこんなこともできないやつらだ

問題ない。いつも通りの会話がまたできる

ぼくが悪い。謝ろう謝ろう

もう夜も遅いし寝よう


電気を消して、目を瞑って必死に別のことを考えようとした

…喧嘩なんて初めてだなあ



呼び鈴を鳴らす。ぼくにとってもいつもの場所になった彼女の家

地元を離れ、1人暮らしを始めてからもう3年も経つそうだ

実家でずっと過ごしてきたぼくにとって、彼女は恋慕と共に尊敬の対象でもあった

就活が終わって東京にでたら、彼女を呼んで同棲する。ぼくの将来の夢。


「おまたせ、わざわざ来てくれてありがとうね」


いつもの笑顔だった

ドアを開けてぼくを手招いて、部屋に入れてくれた

また部屋を散らかしている。クリスマスにあげたブランド物の財布の紙袋が出しっぱなしだ


今となっては懐かしくも感じるクリスマス。初めての記念日だからと奮発して、バイトの給料の半分以上もする財布をあげたんだ。

『まだ前の男からもらった財布を持っているのか。そんなもの捨ててこれを使えよ』

友達のアドバイスでこんなキメ台詞までつけて。


ぼくは悟った。誤解していたのはぼくの方だった

すこし汚い部屋も、テレビから延々と流れているアイドルのライブ映像も、彼女の笑顔も全部いつも通りだった

喧嘩なんてなかった


彼女はリモコンのボタンを押してテレビを切った。

笑顔が消えていた

いつもの汚い部屋が突然知らない部屋になったような感じがした


「大事な話があるの。電話でもラ〇ンでも言えない話」


頭が重たくなってきた。ぼくは誤解してなかったのか

彼女の言い分を聞いて、謝ろう

嘘も偽りもなく正直に喋って彼女に許して貰わなきゃ


「あなたの他に好きな人がいるの」


あなたのほかにすきなひと

頭が重たくて言葉の意味が入ってこない


「前の男の人がまた好きになって。地元の人。わたしが付き合ってたころ、その人には他に女がいて。最低って言って連絡とか全部無視してた。でも最近また連絡が来て、もう会えないかもしれないくらい遠いところに転勤になるって。そしたら気持ちが戻ってきちゃった。この人のそばにいたい。また付き合えるかもわからないし遠距離でいつ会えるかもわからないけどその人が好き。だからもうあなたとは付き合えない」




「あなたのことを本気で好きになってずっと大切に思っていたけどこんな中途半端な気持ちじゃ続けられない。ごめんね」



考えがまとまらない

彼女と出会ってから今日までの出来事が走馬灯のように駆け巡る。


『あなたが行くところにわたしもついていくよ』


『会社の飲み会、抜けてきちゃった。あなたとお酒を飲むのが一番落ち着くね』


『バレンタインチョコ三つ買ったんだ。あなたの分と、お義父さんお義母さんの分。だから今度会いに行かせてね』


『ずっとずーっと楽しかった。また旅行行こうね』


『財布、ほんとにうれしいよ 大切に使うね』


ぼくは考えるのをやめて、上着を着た。逃げるように家から飛び出してきた。すっかり歩きなれた道はどこか知らないところへ続いているようだった。

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