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第1話

短編です。10話以内に終わる予定でいます。

宜しくお願いします。

 私には生まれ変わる前の記憶が存在している。


 生まれ変わる前を夢の中で繰り返し繰り返し、見たくもないものを見るようになったのは、いつだったのか。それも思い出せないような小さな頃から見ていたせいで、生まれ変わる前の事を夢のせいで芋蔓(いもづる)式に思い出したのは。


 そこで生きていた私は、朝から晩まで、ただ、ただ、こき使われるだけのしがない農家の嫁だった。


 夫になった人は、結婚するまでは優しかったし、気も弱くて、私に無理強いもしないし、私の理想の人だった。気弱で優しく、でも、自分の決めた事は頑固として変えない人だったから、そんな所も好きだった。


 そんな理想の人でも、私と結婚した後は、誰よりも声の大きさを誇り、私と言う嫁の失敗や欠点を論(あげつら)い、面白おかしく娯楽の様に扱って、嫁が仕えないのだと嘆き、近所の人を味方につけ、意見の強い義両親、特にその姑の言う事を聞く、ただのマザコンのイエスマンに成り下がってしまったのだった。


 義両親に逆らえない鬱憤(うっぷん)をパチンコとスナック通いと、私への後継ぎを生ませると言う名目で、私を好き勝手に扱う人の一人となって、私を下に見るだけの人になってしまった。


 そんな中でも、私は子供を3人ほど産み、育てた。子供達だけが生きがいだったと言える。その為に、苦しくても辛くても耐え抜いたのだから。


 子供達は大学へ行くのだ、進学するのだと言って、都会へ出て行ったまま、そのままそこで独り立ちしてしまい、私や夫の居る田舎へは3人とも帰らなくなった。


 それで、舅や姑、それに夫にまで詰(なじ)られたが、散々、私を手酷く扱ってきていた姿を見ていた子供達が、あなた達の為にここへ戻っては来ないだろうと言いそうになったが、今更だと思えたので、黙っていた。


 ここでないどこかなら、子供達も幸せになれるだろうと私が思えたから。


 今はそんな事はないだろうが、『嫁は金を払わなくても無料で動き、無休で働く従業員で、家ではお手伝いさんで、孫と言う後継ぎを産む便利な生き物。老後は介護要員としても使える。』な扱いだったので、散々な人生だった。


 最後の記憶は、凄い頭痛に襲われていて座り込んでしまった私を、怒鳴りつける姑の五月蠅い声がしていたような、そんな姿を見る余裕もなく、視覚が狭く暗くなった所で、目の前が真っ暗になった所で途切れている。


 楽しい事や嬉しい事が無かったとは言えないが、子供達に出会えた事は幸せだった。


 そんな経験をした記憶を夢で見て、思い出した事があったからだろうか、幼少時から可愛げのない子だと両親から疎(うと)まれていた。


 単身ではなく、乳母の付き添いで、領地の屋敷へ追い出されるような形で、馬車に乗せられたのだった。


 両親と住んでいた都の屋敷からは、私自身が厄介払いをされたのだと自分でも理解をしていたのだから。


 だからだろう、私を不憫に思った乳母が、私が10歳になる頃まで、祖父の住んでいる領地の屋敷で面倒を見てくれていたのでしょう。


 屋敷で優しかったのは、祖父だけでなく、屋敷の皆もでした。

 屋敷の皆と、領地の領民も貴族のお嬢様だと区別をせずにいて過ごしたから。


 幼馴染も友人も出来たし、川で水遊びもしたし、畑を耕して水をやり、雑草を抜いて、肥料を与え、害虫駆除をし、収穫後に枯れた作物の後始末までした。


 両親の居た都の屋敷からは、「領地は、儲(もう)かっているのだろうから、いつもの様に金を寄越せ。」という手紙が祖父の所へ来るだけで、私への気遣いをする一言が両親からの手紙のどこにもなかったと、祖父がよく嘆いていただけで済んでいた。


 それ以外では、両親が都で散財した請求書だけが届いていたのだから、両親は都で生きて暮らしているのだろうと私には推測出来たし、祖父が2度程、都にいる両親の所で子が生まれたと出産祝いを送っていたから、私には2人の妹か弟がいるのだろうと思っている。


 私より後に産まれてきた妹か弟は、私の様に領地の屋敷へ送られてこなかったので、あの両親と仲良くやっているのだろうとも予測出来たので、少しだけ安心した。私の様に追い出されずに済んだ妹か弟を思うと、寂しかったし、悔しかったけど、どうにもならない事なのだと諦めるのは、前世の影響で簡単だった。


 前世の義両親に、ストレス解消か八つ当たり目的で、理不尽な扱いをされるのは日常茶飯事だったのだから、どうしようもないと諦めるのにも慣れていたんで。


 現世では、私を不憫に思った祖父が両親の代わりに、祖母の色彩を髪や瞳に写していると祖母を描いた絵を見せてくれて、私をなお一層、可愛がってくれたので、祖父を悲しませないように自分の感情を誤魔化す事も上手くなった。


 だから、私にだけ優しい肉親の祖父にだけ、生まれ変わる前の知識を活用して、領地の基幹産業であった酪農牧場と農場を持つ、貴族の家長であった祖父の為にと、生まれ変わる前に知って学んでいたあれこれのノウハウと、どうしたらいのかとかの改善点を告げていった。


 祖父は幼い私の意見や考えを否定せず、丸ごとの私を受け止めてくれて、一緒に考えてくれたので、私は生きているだけでも幸せだった。


 例え、産みの親である両親からの愛情が無かったとしても。

 今、思えば、この頃が私の人生のピークであったのだと思う。だって、その後にこんな事があるとは思わなかったから。


 家業が私の前世の知識を活用して順調に、そして、緩やかに右肩上がりで業績を伸ばしてゆくのにつれ、下流(ししゃく)から中流(はくしゃく)貴族の仲間入りをしたばかりの貴族の娘としては裕福だった家が、更に裕福になり、表では祖父の機嫌を取りに来ていた貴族共も、裏では成金貴族だと馬鹿にしていたのも知っていた。


 その話をしている大人達の中に、両親がいたのは衝撃だったのだが。祖父もとっくにそれを知っていたのだろう。

 私が悲しそうにウロウロしていたのに気付いて、「気にする必要もない。ずっと前からだ。」と言って、どこか諦めたような顔をしていたのだ。


 私も、外見と中味の年齢が違っていたので、「そっか。前からなんですね。でも、次の代はどうするつもりですか?」と、うっかり聞いてしまったのでした。


「孫娘のおかげで、業績も評判も良い。お前(リエンヌ)を後継者に指名した届けを国へ出してある。

 その件についての調査がなされ、国からの承認が下りたのだ。リエンヌは、女だてらに爵位を継ぐ事になったのだぞ。家を継がない貴族の次男三男以降が婿に選び放題だ。どんな者でも選べるぞ。ただし、王家だけは無理だがな。」と、言って、お茶目にウインクをしてきたので、


「お爺様に任せますわ。私はまだ10歳になったばかりで、人を見る目がありませんので。お爺様のお眼鏡に叶えば、大丈夫でしょう。」と私も笑って言い返した。


「そうか。12歳までには婚約を決め、15歳の成人と共に結婚式を行うようにしよう。私もいつまで生きて居られるか分からないのでな。安心したいのだ。」

 そう言って喜んでくれたお爺様の言葉通りに、私が12歳になったと同時に婚約者が決められ、15歳になってすぐ、結婚式を行った。


 私は婚約の時も婚約者とは顔を合せなかったし、結婚式の当日に、挨拶に来た婚約者と初めて顔を合わせて、一言だけ挨拶を交わしただけだった。


 それでも、お爺様は、婚約の時も結婚式の時も私の産む子供が楽しみだと、とても喜んでくれたわ。


 で・も・ね、夫になった相手には長年にわたって、仲良くしている愛人がいて、5歳の隠し子までいたの。びっくりよね。


 それも、その話を新婚初夜に打ち明けて来たのよ!!


 だ・か・ら、打ち明けたから、さぁ、初夜だと迫る夫の頬を引っ叩いて!!人体の急所を思いっきり蹴ったわ!!

 それから急いで、新婚夫婦に用意された寝室から走って逃げて、お爺様の部屋に押しかけて、打ち明けられた話を話しましたわよっ!!ありえないわ!って。


 その夜、屋敷の中には緊張が満ち満ちて、お爺様と屋敷の執事から下働きまでの従業員による、私の婿への聞き取りと言う名の尋問がされました。


 そこで、新たな事が幾つもポロポロと出てきました。


 婿曰く、婚約したのが評判のイイご令嬢(わたし)だったので、自分が働かなくても代わりに仕事をしてくれそうだし、自分が27歳で、愛人が22歳だから、婿にとって、愛人が要らなくなってから愛人を捨てても、嫁はまだ今が15才だから、若くて楽しみだと思った。とか、家から厄介払いをするのにいいと婿の家が張り切ったのだそうだ。

 この場合は、うちが伯爵家だけど、婿の家が侯爵家だったから、愛人と隠し子の事がバレないようにと、家全体で隠し、格下の家に婿へ出すにしては、持参金を多くしたのだと胸を張って婿が自慢していた…。


 その上、領地に、愛人と隠し子が住んでいる家があるって言われた日には、初夜をやり直す気もなくしたし、こんなでも、各上の家からの婿なので、無碍(むげ)に出来ないのだと苦渋の決断をする羽目になった。


 そこで、新しく婿個人と私は契約を交わした。


 この結婚は貴族社会に周知されているので、取り消しが効かない。だから、私と婿殿は白い結婚を貫き、それがバレないようにする代わりに、婿殿が貴族として生活するのに不自由しない生活を約束する。


 但し、妻となった私、リエンヌは、この家の正当な跡継ぎを必要とするので、婿以外との間に出来たリエンヌの子が生まれたら、その子を正当な跡継ぎにするので、その子の父親代わりを務める事。


 婿の実家の侯爵家にも、これらの条件を了承してもらう事と、愛人と隠し子、仕事をする気がない厄介払いしたいほどの者をこの家の婿にするべく、色々と隠匿していた事実をこの家では重く見ているので、これからも、色々な事実の秘匿に全面的に協力する事を契約して交わす事。


 以上の内容を夜明けと共に、伯爵家に結婚式に参加した後、婿殿の初夜が済んだ事を確認するために滞在していた侯爵家の当主様と、私とお爺様と、不甲斐ない婿殿との間に、新たな契約書を交わしたのでしたわ。


 結婚するのにあたり、相手の調査依頼をした家(男爵家)には、お爺様から『調査結果に重大な欠陥があって、縁組としては最悪な部類であった。伯爵家では後継ぎのご令嬢の経歴が汚されたのだ。だから、大量の違約金を請求する。そちらとは、二度と付き合いをしたくない家になったので、それも親しい付き合いのある貴族の家には周知する。』との正式な抗議文と使者をうちから送ったと、教えてもらえたわ。


 平謝りをせんばかりにやって来た調査依頼した家(男爵家)の当主へは、お爺様と私と執事とで立ち会った。

「うちへ婿入りするのに、その相手には愛人と隠し子がいた。仕事も孫娘にさせ、遊んで暮らすつもりでいたようだが、そんな人物を宛がったのだ。男爵家ではどう責任を取るのかね?

 私は依頼時に、「孫娘の良きパートナーになる相手を。爵位や庶民とかは気にしない。」と、依頼した筈だがね?

 王家の庇護があるからと、男爵家でも大目に見てもらえるのだと勘違いも甚(はなは)だしいわ!信用がなくなれば、王家の庇護も消えるのだと言われて、王家との契約をしたのだろうて!

 陛下への報告書も中間報告として済ませたわ!」


 お爺様がそう言って凄(すご)むと、男爵家のご当主も、「請求された違約金を払います。ですから、どうか、周知だけは…!!」とその黒(・)い(・)瞳(・)に涙を目いっぱい溜めて泣くので、気持ち悪かった。


「では、一生を台無しにされた孫娘の立場はどうなるのか、君に答えてもらおうか?

 よりにもよって、一番最悪な縁を結ばされて、貴族としては、面目が潰れたのだ!その責任はどうするのだ!!」とお爺様が言うと、謝罪だけはして、引き返していった。


 調査した家とは付き合いがなくなったし、信用が出来ないとお爺様が秘密を守れるご友人に話したので、あの家は遠からず、王家の保護も消え、家自体が潰れるだろう。何て言ったって、お高くとまって、私をあざ笑った愛人のご実家で、そのご当主が、愛人の義兄だったそうだ・か・ら。


 最低よ!最低だわ!自分の妹を幸せにするのに、私を金を出させる打ち出の小槌扱いしたのですって!!許せないわ!そんな愛人の言いなりになっている婿殿も許せないわ!!と、私があれている内心を隠して、憤(いきどお)っていると、お爺様は「絞れるだけ絞り取ってやるわ!」と、張り切ってましたもの。


 お爺様のご友人経由で、私の相手をしてくれる男性も紹介していただけるようにもなったし、一先ず、落ち着いたかしら?

最終話の手前までは書き終えていますが、終わりをどちらかにするのかだけに悩んでいます。


短い間ですが、お付き合いお願いいたします。

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