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『哀しき妻の綴り唄』

作者: タコアシ

最近、連日のように親子間や夫婦間や友人や恋人の間での哀しくも痛ましい事件がニュースで流れてきてとても悲しくてやりきれない想いをすることがあります。

互いを慈しんだり、愛し合ったり、大切に思ったり、笑い合った確かな日々があったはずなのに、どうして人間はこうも悲しい結末を繰り返すのだろうと考えてしまいます。

人間は、心のどこかで平和など求めていないのでしょうか。

平和を守ろうと合言葉のように連呼するけれど、いつになったら事件や争いがない日がくるのか・・・・・・。

病床で 最期の夜が ひっそりと更けてゆく


窓を打つ 嵐の呻きに返事する かすかに聞こえる 白い死に息


共に生きると誓った指環が光る あなたの動かないこの手


臨終と 医師から聞いて 悔し泣き



孤独な二人を結んだ 愛の誓いと硬い握手は 現実から遠い思い出


あなたに告げることが叶わなかった 幸せの種を 身に宿したままで


遺骸の去った死に床に 生きてた証の しわと温もり


嵐が魂を連れ去った 病棟の 開かずの扉から脱け出る 今は屍



念仏やお経が何になろうか 腹さすり我が子に歌う子守唄


参列もない密葬で 揺れる線香の煙が頼りなく


遺影は笑っているのに動かない 横たわるあなたは朽ちてゆく


荼毘に付す その身と燃やす我が心 二人はいつか黄泉で逢うから


もう融けて これっぽっちのわずかな骨になった あなたの最期



骨壺に入ってしまった あなたの燃え殻を抱いて床に就く


絶望に身を焦がしては死を想う 布団が苦しい独り身の夜


夢に出た愛しい夫が抱いている 赤子が泣いて大騒ぎ


困った夫に手渡され 途端に笑顔で泣き止んだ 嬰児の可愛さ


目が覚めて 床からはみ出て転がった 夫の骨を拾う朝



旅支度 身仕舞い整え家を出る 埋葬の地を探す旅路へ


いつの日か 暮らす日が来るこの部屋は 赤子とわたしが戻る住処か



                    <了>


(注)この作品はタコアシのものです。

不正な転載や盗作、並びに違法行為に

なることは固く禁じさせて頂きます。

こんばんは、タコアシです。

今回は愛し合い、未来を約束した二人が予期せぬ病で最愛の命を奪われて残される遺族を描きました。

これは殺人ではないけれど、別の意味で悲しい死の結末。

人は自然に生きていれば、自然に歳を取り、いつか寿命がきてあの世に旅立つものなのに何故に無用な争いと醜い権力闘争や殺し合いをするのか。

死そのものの状態は同じでも過程と意味合いの異なる死は別次元であり、遺族の悲しみも歴然の差があるように思えるのです。


愛しい人の死を深く哀しむ行為は真に美しい姿だと思います。

だからこそ人間は愛する人を殺めたり、他人から勝手に奪ってはいけないのだと改めて認識すべきなのではないでしょうか。


現代は総じて愛が足りていないと感じてしまうのです。

何だか寂しくて怖い世界になってきたなと危機感すら覚えます。

未然に防げる犯罪や救える命は、皆で協力していけるような世の中にならないと平和など単なる理想と片付けられて悪化の一途を辿る気がします。


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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