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三題噺  作者: 平成兎
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メイク キラキラ 渾身

人が何かに集中している顔が、昔から好きだった。そういう顔は、どうしようもなく綺麗で、どうしようもないほど焦がれてしまっていた。

そして、そんな顔を、人の目を盗んでノートに書くのが好きだった。気づいたら沢山の顔がノートに出来ている事はザラだった。

 それが普通じゃない事に気づいたのは、クラスの皆が気味の悪いものを見る目で私を見ていた時だった。

気味が悪くて何をするか分からなかったのか、幸いいじめられる事は無かった。

 これも、幸いだけど両親は私の趣味?に理解があったから、気味悪がられる事はなかった。友達が居ないことについては、相当心配掛けてしまっただろうけど……。


まあ、そんな感じで元々そんなに友達が欲しい訳じゃない私は、趣味を隠そうとする事もなく、友達一人作る事もなく、お節介な先生と心配性な両親以外と会話する事もなく、ずっと書いて向上した画力を活かしてイラストレーターになって、誰と深く関わらずに生きるんだろう……。


何て、思っていたのに……。












「ねぇ、お願いだよぉ。絶対に可愛くするからぁ~。メイクさせてよ~」


なんでこうなったんだろう…………。



++++++++++++++


高1の二学期の始め。この時期には異例の転校生が私の学校に来た。名前は、高原 唯。

ショートの金髪(校則では髪を染めるのは禁止されてない)で、身長が高くて、ボーイッシュな、女の子にかっこいいと言われるタイプ。

 

そんなイケメン系女子は、授業中も授業が終わった後も質問攻めにあっていた。その後、誰かが案内役をするという話になり、女子全員が立候補した。私を除いて……。

誰が案内役をするか論争が暫くあった後、結局イケメン系女子に決めて貰おうという話になった。唐突に丸投げされたイケメン系女子は、暫く困った顔をしながら教室を見渡した後歩き始めて………。


「君が良いな」と、窓際の席で運動場を眺めて、適当に絵を描いていた私を満面の笑みで指名した。


 私が指名された事にクラス中が驚いた後、女子達からは恐ろしい目で睨まれた。

その後、案内役を辞退する隙もなく、昼休みにこのイケメン系女子を案内することが決定してしまった……。


昼休みになり、何故か席も隣になってしまい逃げられず、仕方なく昼御飯を食べてから案内する事になった。因みに弁当も一緒で食べさせられた。


++++++++++++++ 



 指名されて断れない以上は、さっさと案内だけしてもう関わらないようにしよう……。

そんなに大きな学校じゃないし、そこまで時間とられることもないだろうしね。

 そう言い聞かせて、渋々案内を始めた。


なのに……。



「此処は図書室です。高1は5時までしか使えないので注意して下さい」

「君は、よく来るの?図書室。本とか好きそうだけど」

とか……


「此処は美術室です。美術の授業は基本此処でやるので覚えておいて下さい」

「そういえばさっき凄く上手な絵描いてたけど、描くの好きなの?」

とか……学校の事ではなく、私の事についてしか聞いてこない。

学校のことに関しては、全く聞いてる様子もない。 


……本人が聞く気ないなら、もういいよね。



「あの……」

「何々?何か質問?何でも聞いて!」

振り返って話し掛けると、グイグイと近付いてくる。


私に積極的に関わろうとする人、初めてみたなぁ……。

……変な人。

でもまぁ、私はこの人と関わるつもりはない。

……精々コッソリ絵のモデルになって貰う位だろう。



「私はこの学校の案内役にされましたけど、イk…高原さんはこの学校の構造なんか興味ないですよね。なら、この時間も煩わしいですよね?

私も正直案内なんてメンドクサイです。だから、もう解散しませんか?その方がお互いの為になると思うんですが……」

多分この人は、興味半分で私に関わってきてるんだろう。そういうのは、迷惑だ。

 

だから、この場はさっさと分かれてしまおう……。


言った後、そんな事を考えていたら、突然顔を両手で捕まえられて強制的に上を向かせられた。

 顔を掴んだ犯人と目が合う。私の顔を固定して、ジーっと見てくる。暫くその体勢が続けた後、転校生さんが私の顔を隠してる長い間切ってない前髪をどかされる。

視界がハッキリして、さっきよりもハッキリと転校生さんの顔が目に映る



綺麗な顔だなぁ。特に目が凄く綺麗……。宝石みたいな瞳ってこういうのを言うんだろうなぁ。

……描きたいなぁ。


転校生さんの奇行を無視して、綺麗な顔に見惚れていると……顔の宝石がキラキラ光り出す。

「やっぱりカワイイなぁ……」


 うっとりとした顔で、マジマジと私の顔を見る。

私がカワイイ?この人は何を言ってるんだろう。というか何がしたいんだろう……。


「あの教室で、君が一番人の外見に目を向けてるのに、君が一番自分の見た目に頓着してないから、不思議だなぁって思ったんだよね」

「……だから、私を指名したんですか?」

「うん!それで、よく見てみたらスッゴクカワイイから、もったいないなぁって」


 最初に言ってる事は分かる。確かに私は人の容姿を気にしてるし、私は化粧なんて生まれてこの方一度もやった事もないから…。

でも……


「私はかわいくなんかないですよ?

誰にもそんな事言われたことありませんし」

「それは顔が見える程、君を見た人が居なかったからでしょ?

カワイイと思っても、君にわざわざ言わなかっただけかもしれないしね」

「いやいや、そんな訳…」

「無いかどうかはぁ……メイクしてみれば分かるよ!」


そう言うと転校生さんは、私を教室の方まで、引っ張ろうとしてくる。


……分からない。


「お・こ・と・わ・り・します!!」

渾身の力で引き剥がして、全力で逃げる。


何で逃げたかは私にも分からない……。

でも……これだけは言える…。


「私は……かわいくなんて、ない!」


++++++++++++++



「あちゃぁ、逃げられちゃった。

でも、次は絶対メイクしてやるぞぉ!!」


あぁなった、事情は知らないけど、着飾れば絶対可愛くなる!ていうか、もう可愛いし…。


「先ずは名前、聞かないといね……」


まぁ隣の席だし、チャンスは幾らでもあるでしょ!









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