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ダンジョンでもやし栽培

作者: Futonize

 俺は高1生の山々(やまやま) 琢磨(たくま)

 今日はいつものように登校……のはずだったが、なにかがおかしかった。


 学校で自分の教室に入ったはずだった。

 しかし、そこは見慣れたクラスでなく洞窟だった。

 後ろを向くと、さっき入ってきたはずのドアもなかった。


 本当に洞窟。

 テレビのアドベンジャー系のバラエティーにて出てきそうな洞窟。

 周りは土壁。あと出口もしっかり見える。


 そして、洞窟の真ん中にはダイヤモンド状の水晶が。

 触ってみた。


『あなたはダンジョンマスターになりました』


 はい? なんか声が聞こえた。

 人工知能のような声。


『チュートリアルは必要ですか?』


 もちろん。

 まず、ここがどこだかが知りたい。

 僕がそう言おうとしていると、僕の意志を読み取ったのか返事があった。


『ではチュートリアルを行います。

 ここは……あなたがいた世界とは違う世界です。

 あなたの脳から過去の記憶を参照したところ、それはこの世界とは適合しませんでした。


 あなたはダンジョンコア(私)に触れたことにより、ダンジョンマスターとなりました。

 これからは、ダンジョンマスターのあなたにこのダンジョンを管理してもらうこととなります』


 異世界っぽい。まあ来ちゃったなら仕方ないか。

 ダンジョンとは?


『ダンジョンとは、人間を招き入れて殺生して、吸収し、ダンジョン自身を発展させていく、そんな場所です。

 人間を吸収するごとに、ダンジョンに犠牲者の魔力がたまります。

 ダンジョンは魔力を使うことにより拡張、成長が可能です。

 また、魔力はダンジョンマスター、つまりあなたを生かす際にも必要とします』


 うむ。

 じゃあ人間の僕からも『魔力』とやらは供給されているのかな?


『いいえ。あなたには魔力が無いようです。

 よって、あなたからこのダンジョンに魔力を供給することは不可能です』


 ほう。

 要するに、人を殺してダンジョンを豊かにしろと。

 そうすれば僕も生きられると。そういうことかな。


『はい』


 うーん。倫理観的にお断りだ。

 ダンジョンマスターをやめたいけどそれってできる?


『不可能です』


 うーむ。まいった。


 それは置いておいて、魔力を使えば、どんな成長ができるんだい?


『ダンジョンの進化。あなたの進化。罠の設置。魔物の設置。魔物の生育、成長。食事や武器との交換……』


 食事との交換って?


『にんじん、牛乳、れんこん、きゅうり、なす、シュールストレミング、うめえ棒、大豆……』


 品揃えの順番が適当なのは置いておいて。

 大豆。これって重要じゃないか?


『なぜですか?』


 大豆を植えると、もやしができる。

 もやしは水さえあれば育つ。

 ダンジョンの中のように、日光がなくても。

 おまけに1週間近くで収穫できる。

 だからいいんじゃないかな?


『収穫してどうしますか?』


 収穫したもやしをダンジョンに吸収させる。

 もやしにどうにかして魔力を込められたら、それをダンジョンに吸収させると魔力が手に入るんじゃない?


『それは……可能です。もやしを通じてダンジョンに魔力を提供できます。

 また、魔力のこもった水でもやしを育てれば、もやしに魔力を入れられるでしょう』


 うむ。

 そうなれば早速実行したい。

 魔力のこもった水って何があるか分かる?


『魔力のこもった水なら、魔力ポーションはどうでしょうか。

 純粋に、水に魔力を込めただけの水です。

 低濃度の魔力ポーションなら、現在のダンジョンの魔力と交換できます』


 よし。

 あと、もやしを育成する容器が必要だ。

 もやしを育成する容器ってある?


『ガラスの容器と交換可能です。

 底面積は1m×1m、高さは30cmです』


 おっけい。

 じゃあ早速、もやしを栽培しちゃおうか。


 ガラスの容器をまずは1つ交換。

 大豆は……大豆を直径1cmとすると、底面積1m×1mに10,000粒入る。

 じゃあ10,000粒の大豆。

 そして、低濃度の魔力ポーションは……ガラスの容器に高さ1cmで満たすとして(中略)4.73Lくらいあれば十分だろう。


 じゃあそれを頼む。


『ガラスの容器1個、大豆10,000粒、低濃度の魔力ポーション4.73Lでいいですか?』


 うむ。


『現在の魔力値がMP100。そして、この交換のコストはMP68です。

 コストを消費してそれらを交換しました』


 その声が聞こえたとたん、僕の目の前に物が落ちてきた。

 ガラスの容器に大豆と魔力ポーションがしっかり入った状態で。

 しっかりしているなあ。


『お褒め感謝します』


 それほどでも。


 それは置いておいて、もやし。

 もやしは生育~収穫までに1週間くらいかかった気がする。

 その間、僕はどうしようか。


 というか、洞窟というのが気に入らない。

 いつ誰かに入られるかわからないのが不安だ。


『洞窟の出入り口を土で閉めますか?』


 えっ。閉めていいの?


『はい。しかし、外部から破壊される可能性もあります』


 それでもいいよ。洞窟が空いているって考えてみると落ち着かない。


『日光が遮られてしまいますが、本当にそれで構いませんか?』


 イエス。

 僕がそう思ったとたん、その洞窟には日光が全く通らなくなった。


『出入り口を封鎖しました』


 といっても、ダンジョンコアが案外光っていたのでそこまで暗いわけでもない。

 しかし、結局暇だ。何をしようか……


 寝よう。


『目覚まし機能を使いますか?』


 うん。

 もやしが収穫できるくらいに生育したら起こしてくれ。


『かしこまりました』


 ……







 ……


『起きてください』


 ……おはよう。

 えーと、ここは?


 ああそっか、ここは異世界か。


『もやしが育っていますよ』


 そうか、もうそんな時期か。

 もうもやしを植えてから1週間ぐらい経ったのか……


『いえ、半日です』


 そうだよな、もう半日も

 ……はい?


 僕がガラスの容器に目をやると、もやしはしっかりと育っていた。

 もやしは、高さ30cmの容器からあふれ出し、たくましく成長していた。

 つまり、どれも長さ30cmを超えているようだ。


 ……え?

 成長がおかしくない?


『魔力のこもった水による影響なのでしょうかね』


 魔力のちからってすげー。

 まあ成長しているっていいことだ、収穫。

 ……ダンジョンに吸収させるってどうやるの?


『あなたの体で物に触れるか、ダンジョンの壁や地面で物に触れれば吸収できます』


 よし。

 自分の体で回収するか。

 もやしはこれでも食べ物の一つだ。地面に置くのは気が引ける。


 僕が手でもやしに触れて、吸収しようとすると、もやしは消えていった。


『収穫成功です。ダンジョンにMP0.1が吸収されました』


 よし。引き続きもやしを収穫していこう。

 僕は勢いで育った全てのもやしに触れて収穫した。


『収穫成功です。合計9740本のもやしを収穫。

 ダンジョンに計、MP1524が吸収されました』


 よし。

 元手MP68からMP1524を手に入れられたぞ。

 利益率20倍。結構いいじゃないか。

 こんな感じでもやしを育てたいんだが、どう思う? コア。


『いいと思いますよ』


 人間たちと関わる必要はないだろう。

 僕は人間だ。同じ人間を殺すことはできない。

 でも、これなら殺生をせずに生きられる。

 どう思う?


『あなたは殺生をしなくても生きられそうですね。

 コアは魔力さえあればあなたに文句は言わないので気にしないでくださいね』


 なら良かった。


 じゃあ、もやしを作っていきますか。

 大豆と魔力ポーションをガラス容器に入れておいてくれ、ダンジョンコアよ。


『はい』


 しっかり大豆10,000粒と魔力ポーションが中に入ったようだ。

 あと。

 ダンジョンコアの名前を決めたい。正直このままだと言いにくい……


『コアとお呼びください』


 じゃあコアよ、よろしく。


『よろしく』


 それは置いておいて、もやしの量産化計画だ。

 もっとガラス容器が欲しいが、ダンジョンが狭くて入らない。

 だから、もっと拡張できる?


『可能です。

 高さ3m以下の道を作るのでしたら、底面積1m2(平方メートル)につきMP100で作れますよ。

 あと維持費がかかりますがほんの僅かです』


 じゃあ拡張しよう。

 今の魔力値はどれくらいだっけ?


『魔力はちょうどMP1500です』


 じゃあ8m2ほど道を作ってほしい。頼む。


『かしこまりました。残り魔力は700MPです』


 その瞬間、道が完成した。

 じゃあここももやしコーナーにしよう。

 ここでももやしを作れる体制を整えてほしい。


『ガラス容器に大豆10,000粒と魔力ポーション4.73Lで合っていますか?』


 うむ。頼む。


『かしこまりました。合計8セットで、合計MP554。残りMP146です』


 よし。これでもやしを量産できるな。



 どんどん作っていこうか。

 もやしを使えばダンジョンを育てることすらも可能なようだ。


 そうして僕は、ダンジョンマスター、改めもやしマスターとなった。

 ダンジョンでもやしを作り続けるのであった。


 平和。

 ダンジョンでスローライフ……快適。

終わり方が適当かもしれませんが、「スローライフが流行ってるしダンジョン系と組み合わせても面白いんじゃないかな」ということが言いたかったのです。


最後まで読んでくださりありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 何か栽培するにしても、もやしというのは思いつかなくて面白かった。 [一言] この調子だと、恐ろしくでかいダンジョンができそうですね…
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