避難場所までの移動
グレンと僕でホウカがどんなモンスターか意見を言いながら歩いた。
グレン曰く引っ越してきたばかりでここの辺りの魔物に詳しくないので、お前がなんとかしろ。と任された。モンスターの事はテイマーの名にかけて勉強を怠った訳ではないので知識には自信がある。スイちゃんがこん詰めすぎないでと心配になるぐらい5年間暗記してきたのだ。発見されていない魔物の可能性は十分にある。この世界は断定する事が難しいのだ。計り知れない未知ばかりで図鑑の本数に気が遠くなるが、ユールレの近くの森に居るモンスターで分からないとはちょっと不安になる。
まだまだ庭先に出た程度でこれなのだから、修行の必要性を感じてる。何か策を考えなくては…
あと1つホウカの事でちょっと引っかかる事。物分かりが良い事だ。高位の魔物なのだろうか、はたまた精霊なのか?なんにしろ、ウホウホしか言わないが一般的魔物じゃない気がする。うーん、なんだろう?
今も状況が分かってるみたいで、普通に二足歩行で横を歩いている。グレンとそう気配も変わらないしな…謎の生命体だ。
僕が任された事を眉間にシワを寄せながら考えてると、どうやら屋敷に着いたみたいだ。
「着いたな…」
「本当だ、ボロボロだね…昼間で良かったお化け屋敷みたいだから、夜は怖くて堪らなくなっちゃうよ」
「ウ?ウーホ、ウーホ、ウーウー。ウホホ。」
バシンと胸をホウカが叩いて任せとけって言ってるみたい。道中に結構3人で話たりしたので意思の疎通が出来てきた。なんてったって今は運命共同体だかね。
屋敷の敷地はぴっちり長方形に整えられていた。奥側に屋敷があり、長方形の真ん中から手前が庭になってるみたい。通りながら庭にある模様を不思議に思った。
「レン!屋敷に入るぞ!」
っといけない、立ち止まってしまっていたみたいだ。二人が玄関までもう着いてる。
「ごめん!今行く!」
ホウカが扉を慣れた様子で開ける。建て付け悪そうなのに、下ら辺のいい具合の所を蹴ってお手の物だ。日本に居た頃テレビの写りが悪かったら叩いて直してた誰かみたいだ。毎日やってたらコツが分かるらしい。ホウカの住処も建て付け悪かったのかな?
「…おい」
えっでも魔物の住処に扉つけるって概念ある?
「おい」
流石にそれはどうだろう?じゃあ可能性としては、誰かテイマーのモンスターだったのかな?あっそれならつじつ/
「おい!レン、あれはお前の兄貴じゃないのか?!」
「え?」
其処には傷だらけで倒れてる太郎がいた
「っ…ウホー!」
ホウカの警戒せよとの声が掛かる。バタンっと建て付けの悪い扉が閉まってしまった!
グレンと二人でハッとする。何かが頭上から降りてくる気配がして、ヤバイっ間に合わないと思ったら、ろろんが僕の頭を踏みしめてジャンプしてくい止める
「ぐえっ!」
「ホウカ!兄貴背負うの手伝え!一旦屋敷の奥へ逃げるぞっ!」
「ウホっ!」
ホウカが太郎の所までの30mをひとっ飛びし、素早くおんぶする。グレンがその身体能力に目を見開いたが、すぐに切り替え僕の腕を引っ張ってホウカの所まで走る。
「走れっ!全力で逃げるぞっ!」
ホウカが先を導く様にスイスイ廊下を曲がる。
一つの部屋にホウカ、グレン、僕の順になだれ込んだ。
ろろんは大丈夫だ、引っ張られながら僕の魔力を送っておいた。ろろんを頭に浮かべると優勢で影を上手く操っているようだ。だから、今のうちに疑問を解いておかなければ…
「ホウカ聞きたい事がある」
うん、僕も。
「ウホ?」
この際太郎はちょっと待ってもらう。気絶してるようだけど。
「お前はこの屋敷に前来た事があるのか?」
ホウカから距離を取りながら、目をジッと見る。喋らないホウカは道中の時からそうだったが、少ないイントネーションや仕草、目で気持ちを語る。僕らをここに誘い込んでさっきろろんを思い浮かべた時に確認できた、あの黒い液体の魔物に襲わせる気だったのか?敵か、それとも一緒に逃げてきた運命共同体のままか?
「「「………………」」」
「違うね、ホウカは敵じゃない」
だってあんなに真っ直ぐな目では人を騙したりはできない。たかが5才、けど、されど5才だ。僕達子供は確かに騙される。けどそれ以上に友達の気持ちには敏感だ。ホウカとはさっき出逢ったばかりだけど、確かに繋いだ出来立てホヤホヤの絆がある
「ふーっ…そうみたいだな…。」
グレンも同じだ。あの必死に皆んなに声を掛けて引っ張ってくれた行動は僕達を騙す事からくるものじゃなかった。この屋敷の事に詳しいホウカに念の為確認しただけだろう。まぁ屋敷の事教えてくれたのグレンだけどね。
じゃあ太郎の手当てとホウカの話をあの魔物が来る前に済ませてしまおう
「ウホ!」
信じてくれてありがとうとホウカが言った。
「ホウカ、救急箱とかこの屋敷にない?いや、こんなに古ぼけてたら腐っちゃってるかな…」
太郎の傷具合をみながら命に別状は無い事を確認する。タタタタッと何処かに走っていったホウカが小瓶を持って戻ってきた。…ポーションだ、でも腐ってる。
「おい、それ使えるのか?かなりおどろおどろしい色に変わっているが…」
グレンが微妙な顔をする。微妙というかこれはアウトだ。まぎれもないアウトだ。アウトって言ったらアウト。
「ちょっ?!やめてー!ホウカストップ!ストップっ」
太郎の真上から手で瓶を握り潰して、腐れポーションをぶっ掛けるという兄殺しを必死に止める。やっぱり命狙われてたのかもしんない。5才は立派な幼児です。
「はぁ、仕方ないな…貸せ。」
グレンがホウカからポーション(命を削る魔の水)を取り上げる。
「どうするの?」
「一か八か魔法で時間を戻してみる」
「「ウホっ!えっ?!それって高等魔術じゃんっできんの?!」」
「…分らない、術式は暗記してるし集中力は魔術本を読み漁る内に必要なくらいは高めれていると思う。ただ魔力量がギリギリ無くなるまで時間を巻き戻す事になりそうだから、敵の反撃に力分けなくなるかも知れない」
「いや…それはこっちでなんとかする。ろろんが幸いな事に食い止めてるし、太郎も起きたら強いよ」
一回負けてるみたいだけど。いらない勝負仕掛けた癖に負けてるみたいだけど。
「頼んだぞ」
グレンがポッケから白いチョークを出して村でもそこら辺の魔術本でも見掛けた事がない複雑な魔法陣を描いてゆく。すごい…よく暗記してるな。僕が取り憑かれた様にモンスター図鑑を読むように、グレンも魔術本オタクなのだろう。あの陣は勉強してないと無茶になる。日頃から手に馴染む程に本を読んでる証拠だ。神経質そうな顔の通り狂いなく綺麗に描かれた陣の中心へ魔の水を置く。力を込めるように手を置き魔力を流しはじめた…
ーーー1分経過
まだ変化なないみたいだ
ーーー5分経過
大分色が変わってきた、水々しいポーションとは逆の禍々しい物へ。
ーーー10分経過
グレンは集中する為に目を瞑り続けているので知らないのだろう。ヘドロの様な色から毒々しい紫へ今はもはや真っ黒に色が変わっている。
時間は戻ってない、着々と退化している様に見える。
どうしよう…僕らは経験不足の5才児だ。
声をかけるタイミングを見失った。
ーーー15分経過
……。
さっきまでホウカとどちらが教えるか議論をしていたが私は喋れないからと断られてしまった。悔やまれる。言葉を繰り出せる自分が恨めしい…
ピカッピカァァァア!!!
何々?!一体何?!
え?爆発?爆発すんのあれ?やっぱりあれ毒を超えちゃったんだ…このままじゃヤバイんじゃ
ホウカが体当たりしてグレンを止めた。光っていた毒は輝きを沈め、3人で呆然と魔法陣の中心を見つめるる。
そこには綺麗な薄っすら輝く不死鳥の涙のようなポーションがあった。図鑑でしか見た事ないけど。
「うっ…水、 ガタっキュポン カラカラ…ごくごくごく。」
起き抜けに一杯太郎が魔の水を飲んだ。勝手に。僕の兄は野生児なのだろうか?
「うっウゥゥゥ」
「太郎…」
「ウゥゥゥウゥゥゥウゥゥゥ」
「太郎っ!!」
「うめーーーー!!!!」
「あっそう…」
「「…………」」