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9・いざダンジョンへ

 冒険者ジムでの生活も少しずつ慣れてきた。


 力の加減も分かってきたもので、あれからジムが騒がしくなるようなことは起こしていない。


 相変わらずみんなの動きはスローだけど……。

 それが良い方向に働いてくれている。


 きっとジム初日での失態のことはみんな忘れているはずだ。

 いやー、ダイエットライフ最高……頑張った後にはフローラ達とお茶会もしているしね!


 そんな時であった。


「ふふふ。ジムは久しぶりねえ」


 冒険者ジムの空気が凍り付いた――。


 いやダイエットコースの生徒はいつも通り。

 その他の現役冒険者、ジムトレーナー達の動きがその女の人を見た瞬間固まったように感じたのだ。


「前、ジムに来てからどんだけ経っているんですか」


 ジムトレーナーの一人が女の人に近付く。


「ふふふ。丁度、二週間ぶりくらいだったと思うわあ」

「全く……今日は働いてくれるんですよね?」

「暇潰しに、ね」

「じゃあ、丁度期待の冒険者がいるんですよ。稽古付けてもらえ――」

「好き勝手にやらせてもらうわよお」


 いつも通り、にね。


 そう付け足して、女の人はトコトコとダイエットコースの生徒達の前に来た。


「初めましてえ。アタシはレイラ・マドレッド。あんま来ないけど、ジムトレーナーをしているわあ。今日はダイエットコースを見てあげるわあ」


 妖艶でキレイな人であった。

 大人の女性、っていう感じの雰囲気が出てると言っていいかな。

 眠そうな目はとてもセクシーで、女の私でもドキッとしてしまう。


 でも――この人を見て思ったことはそれだけじゃない。


 ――この人、もしかして強い?


 ジムの中にいる人達と明らかに違う空気を身にまとっている


 足運びだったり、視線配りだったり……。

 ふとした動作が彼女を『強者』だと証明している。

 なにも知らない人から見ると『怠そうに行動する人』という認識しか出来ないかもしれないけど。


「レイラさん! レイラさんがダイエットコースだなんて……今日のメニューも決まってま――」

「あっ、そういやクレイグを倒したって子は誰?」


 謎のジムトレーナー、レイラさんが他のトレーナーの話を無視して問いかけてくる。


 ジーッ。


 えっ! もしかして、私のこと?

 ってか私のことに決まっているだろう。


 ダイエットコースの生徒の視線が私に集中する。


「そ、そんな人いませんよ! レイラさん……ですよね? レイラさん、あんまりジムに来てませんから、デマを掴まされたんじゃないですかっ!」


 焦って、顔の前で手をブンブンと振りながら嘘を吐く。


「ふーん……まあ大体見当は付いているけどねえ」


 意味ありげに目を向けてくるレイラさん。


 もしかして気付かれた?

 いや! 気付かれたとしてもここは隠さなければ! じゃないと、私の普通の女の子ライフに影を落とすことになってしまう!


「まあ良いわあ。直に分かることでしょうしねえ」


 レイラさんはくいっと体をくねらせ、


「今日は――ダイエットコースのみんなと一緒にダンジョンに行きたいと思うわあ」

「「「「ダンジョン?」」」」


 みんなの声が重なり合う。


「ダンジョンだなんて……私達ダイエットコースよ? 冒険者になりたいわけじゃないのに……」

「モンスターと会ってアザなんか出来たらどうしましょうかしら」

「アザなんかで済んだら良い方よ。もし死んだりなんかしたら……」


 次々に不満、心配が口を出る。

 そんな様子をレイラさんは楽しげに見つめて、


「大丈夫よお。行くのはドンデリーの森、っていう初級ダンジョンだしねえ。それにアタシもいるから、危険なことにならないわあ」


 その言葉を聞いて、生徒達がほっと胸を撫で下ろす。


「……だと良いわねえ」


 最後。

 レイラさんがポツリと言ったことを私は聞き逃さなかった。


  ■


 ドンデリーの森。


 それは凶悪なモンスターが潜むダンジョンである。

 私もクレテールに来てから、こんなとこ来たことない。


 だから気を引き締めなければいけないんだけど……、


「あっ、このキノコはなんですのっ! 食べていいかしら……」

「足元も悪いし……歩きにくいですわ。ヒールなんて履いてこなかったらよかった」

「その分、足が引き締まりますわよ!」


 我が、クレテール冒険者ジムのパーティー(ダイエットコース)は呑気なものであった。


「ふふふ。楽しんでもらえて光栄だわあ」


 うっとりとしたレイラさんの瞳。

 うん、多分この人、Sだ。


『モンスターに襲われて、大怪我すれば面白いわあ』


 とでも思ってそうな顔だ。


「エクレアさん」


 ん?

 声のする方を振り向いてみると、フローラがしゃがんでなにかを見ていた。


「フローラ! ダメだよ。エクレア、って呼んでくれなきゃ」

「ですが……わたくし、昔から人のことは呼び捨てにしてはいけないと教育を受けてましたから」

「私だけ呼び捨てじゃ変じゃん! エクレア、って呼んでくれなきゃ絶交だよ」

「むむむ」


 顔を歪ませるフローラ。


「わ、分かりましたわ……エ、エクレア」

「はい! フローラ……どうしたの?」

「これは一体、なんでしょうか?」


 フローラと一緒になってしゃがんでみる。

 見てみると、木の根元を指差してみる。そこにはツルツルで赤色の石があった。


「ああ、これは魔石だね」

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