27・古代種
ゴゴゴゴゴゴ!
洞窟全体に響き渡る地震。
「な、なにが起こってるの?」
急いで立ち上がる。
ただの風が肌にピリピリと染みる。
「な、なんだ! このモンスターは……グハッ!」
クレイグさんの声が反響する。
「クレイグさんっ?」
……よし、地震も収まった。
でも、この肌に染みるような気配はまだ収まっていない。
「なにかおかしなことが洞窟で起こっている?」
「ぴ、ぴぎぃ……」
スライムが体を小さくして、洞窟の隅で震えている。
「大丈夫。私が守ってあげるから」
スライムを抱きかかえて、私はクレイグさんの声の方へと駆け出した。
クレイグさんのところまで行くと、大きなモンスターが立ち塞がっていた。
「ふんおっ! ふんおっ!」
一言で言うなら、気持ち悪いモンスター。
クレイグさんが見上げなければ、全貌を見ることは出来ない。
でかい毛虫、というような風貌。口から「ふしゅー、ふしゅー」と息を吐いている。
「こ、これは……!」
見たことのないモンスターだ。
魔王を倒す旅行に行ってた時にも見たことなかったかも……。
「エクレアさん! 下がっておいて、君ではこのモンスターに太刀打ち出来ない!」
クレイグさんがモンスターに剣を振るいながら、必死に声を出す。
でもクレイグさんが剣で攻撃しても、モンスターにはちっとも効いている感じがしない。
固い石に剣を突き立てているようなものだ。
「ぐはっ!」
モンスターにとっては、少し体を動かしたくらいだったのだろう。
モンスターの体当たりによって、クレイグさんが吹っ飛び壁に激突する。
「クレイグさん!」
倒れているクレイグさんの元へと駆け寄る。
「ぐっ……一体、なんなんだ、このモンスターは……Bランク冒険者の僕でもこんなモンスター……見たこと亡いぞ!」
息も絶え絶えのクレイグさん。
体中に掠り傷が血が付いており、立ち上がることも難しいように見える。
「あらあ? 一体、なんなのかしらあ?」
後ろから聞いたことのある声が耳に入った。
「レイラさん!」
「これは一体、なんなのかしらあ? こんなモンスター、イメジの洞窟にいたっけ?」
レイラさんであった。
それだけなら良かった。
でもレイラさんの後ろに連なっているのは……。
「あ、あれはなんなのかしら……」
「わたくし、聞いたことありますわ。ダンジョンにはボスモンスターがいるって」
「じゃあ、あれを倒せばダンジョン攻略なのかしら?」
ダイエットコースのみんなだ!
「みんな!」
ってなんで付いてきてるの!
レイラさん、明らかに危険っぽいんだからみんなを止めてよ!
「ふしゅー!」
モンスターがそれを見て興奮状態に入る。
「ふふふ……もしかして、これは……古代種?」
「こ、古代種!」
レイラさんの言葉によって、記憶が引っ張り出される。
——古代種。
確かモンスターってのは、私達が生まれていないずっとずっと前から存在していたらしい。
でも人間がモンスターを狩っていき、いくつもの魔王を打倒したことによって、だんだん弱体化していった。
だから——今、この世界にいるモンスターは大昔に比べたら弱いっていうことになる。
でも。
「古代種、と呼ばれる大昔のモンスターが全滅していない、ということにされているわねえ。アタシでも見るのは初めてだけどお」
「私も!」
……そう。
こんな風にして、古代種と呼ばれるモンスターがたまに地上に現れるのだ。
その力は魔王にも匹敵すると言われ、国が一つ……いいや。最悪、世界を滅ぼすまでに強力だと言われる。
今まで百年間に二度だけ出現したことがある、と言われる。
でもその二回とも、高い知能があり平和的な古代種だったため、全面戦争には至らなかった。
「ふしゅー!」
でも目の前にいるモンスター……いや古代種。
とても知能なんか備わっているように見えない。
それどころか、クレイグさんが中途半端に攻撃をくらわせたこと、そしてレイラさんを含むダイエットコースのみんなが来たことによって、今にも襲いかかってきそうだ。
「でも……そんなレアな古代種がなんでこんなダンジョンに? 今まで散々、ここは攻略されてきたというのに……」
レイラさんが顎に手を置いて考えている。
「一体、どうしてでしょうか! なんでこんな強力なモンスターが!」
「……一つ考えられるのわねえ」
「え?」
「この古代種、もしかして封印されていたのじゃないかしらあ。だから今まで現れてこなかった。でも最近、なにかしらの『衝撃』のようなものが与えられて封印が解かれてしまった。そういうところじゃないかしらあ」
封印が解かれた?
一体、なにが原因で……。
『持ち帰りましょう。これはダンジョン制覇の記念にしましょうよ!』
……あっ。
もしかして! あの時、持ち帰った水晶のような石が!
「ふしゃー!」
「危ない!」
古代種が口からなにかを吐き出す。
「スフィア・シールド」
レイラさんがすぐさまそう叫び、それによって魔法の結界が私達の周りに張られる。
だが古代種が口から吐き出したものによって、結界は一発で粉砕。
衝撃波によって、私とレイラさん以外のみんなが尻餅を付いてしまう。
「ふふふ、まあ封印が何故解かれたとかそういう話はどうでもいいわあ」
古代種が吐き出したものは……唾液?
ただ紫色で洞窟の床にへばりついている液体は、石を溶かし蒸発させていた。
見るからに触ったらヤバそうだ。
「一つだけ確かなことがあるわあ」
「な、なんでしょうか!」
もしかして古代種の倒し方とか!
「アタシじゃ古代種に太刀打ち出来ない、ってことをね」
「ダメじゃん!」




