22・クレイグ復活!
「ど、どうして……」
クレイグさんは愕然としている。
「いや! なんでそんなに驚かれるのが謎なんですけど。なんで私がクレイグさんと戦わなくちゃならないんですか」
「だって……強者と強者は惹かれ合う。エクレアさんだって、戦いたくてうずうずしているだろう?」
「全然!」
この人、戦闘狂だ!
断られると思っていなかったのか、クレイグさんは一歩ずつ下がり今にも倒れてしまいそうだ。
「そんなことより、この惨状をどうするつもりですか!」
中庭にはフローラを含むダイエットコースの人達。
そしてアネットも倒れている。
そもそもこれはアネットから売ってきた喧嘩だ。
この場合、勝者は誰?
もしかして私が最後に立っているから、ダイエットコース側の勝利?
「なにって……君達が喧嘩をしていたから」
「はあ。まあ止めてくれたのは嬉しいですが、なにもいきなり殴らなくてもよかったじゃないですか」
「大丈夫だ。アネットもCランク冒険者。これくらいでは死なないから」
「死んだら困ります!」
なんだかんだでアネットも手加減してくれていたらしい。
倒れたままフローラが、
「うーん、不覚ですわ……体調が悪かったから……」
と呻いている。
本来、Cランク冒険者のアネットにダイエットコースの人達が敵うわけがない。
っていうか、アネットが本気を出したら殺されちゃうしね。
それでも、この程度で済んでるのはアネットが優しかったから。
「きっとこの人は……本当に私達のことを心配してくれていただけです!」
このまま調子に乗って、冒険者ごっこをしていたらいつか手痛いしっぺ返しをくらうだろう。
みんながやられて、ちょっと頭に血が昇ったけど、冷静に考えればアネットの人柄も読み取れる。
「うーん……一体、なんで……? なんで私が倒れているの……? もうやってられないわね……本当」
そんなアネットも地面に顔を伏せて、理不尽な世の中に悪態を吐いている。
「ハハハ! アネットも嬉しいはずだよ。だって僕と戦えたんだからね」
一方的に殴っただけだと思いますが?
「とにかく、私は戦う気ないですから」
「ちょ、ちょっとエクレアさん?」
フローラ達の元に寄る。
うん、掠り傷程度みたいだ。
でも痕なんか残ったら困っちゃうしね。
今すぐ、ジムの中にある救護室に連れて行って消毒してもらおう。
「はい、クレイグさん! みんなを救護室に連れて行きますよ!」
「もちろん、生徒達も大切だけど……まず僕と戦——っ!」
きっ、と視線を向けるとクレイグさんが息をのんだ。
あら、いけない。ちょっと殺気が漏れてしまっていたか。
「行きますからね!」
「……はい」
フローラ達を担いで、救護室へと急いだ。
みんな大したことない傷で、痕も残りそうにないのでとりあえず一安心といったところか。
■
冒険者ごっことかクレイグさんのこととか……。
もろもろあったけど、私の本業ってなにか忘れちゃいけない。
「一、二! 一、二!」
そうです!
私の本業……それはダイエット!
「エクレアさん、リズムに乗り切れてないよー」
「す、すいません!」
今日はダンスレッスン。
息切れしながらも、私はなんとかダンスに付いてい……じゃなくて、合わせるようにしていった。
「一、二! 一、二!」
それにしても、こんな遅い動きでみんなは満足なのだろうか?
ああ! 今すぐ、全部を発散して気持ちよくなりたい!
でも、本気で私が『ダンス』なんてしたら、建物が崩壊するかもしれないので止めておく。
「はあはあ……」
こんな状況でも、私はストレスを溜めていなかった。
ダイエットコースの女の子達と一緒にこうして汗を流す。
これこそが私の望んでいた人生だからだ!
だからこうして体を動かしているのも楽しかったし、「人生、充実しちゃってるな〜」って感じだったなんだけど……。
「ジーッ」
視線を感じる。
ってか相手は隠す気ないのか、「ジーッ」と言葉に出しちゃってるし。
振り向かなくても分かる。
ってか鏡に姿が映っちゃっているし!
「しつこいな……ホント」
ダンスレッスンをしている部屋。
その出入り口にあたるドアのところで、クレイグさんが半分だけ顔を出してこちらを睨んでいた。
「まだ戦うこと諦めてないのかな……」
ぼそっと呟く。
ダイエットの気が散る!
……まあ良いか。
無視だ無視。無視し続けていればクレイグさんだって諦めてくれるはずなのだ。
「一、二! 一、二! ラストスパート!」
でもこの時、私は侮っていた。
Bランク冒険者クレイグさんのしつこさを。




