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20・アイスクリーム

「意外にしょぼかったですわね……」


 みんなのテンションが下がっている。

 おそらく、報酬金のことであろう。

 私の感覚では八十万セルビというのは大金だと思うけど、ダイエットコースに通っているお金持ちのみんなにとっては少ないのであろう。


「でも楽しくありませんでした?」


 フローラが問う。


「確かに……モンスターを倒す時の快感は忘れられないですわ」

「わたくしの力はダンジョンでも通用するみたいですね」


 みんなの顔に笑みが戻る。

 一匹もモンスター倒してないし、力が通用したかどうかというよりも使ってないけどね!

 というような野暮やぼなツッコミは入れないのだ。


「ふう……なんだかどっと疲れた」

「エクレアは仕方ないですね。ダンジョンに付き合わせてすみませんでした」

「いいよいいよ。私も楽しかったし」


 今になって疲れがきた。


 でも――やっぱりダイエットコースのみんなとお出かけするのは楽しい。

 今日は帰ってぐっすりと寝よー。


「あら? こんなところに……」


 先頭を行くフローラの足が止まる。


「みなさん、お腹が空いたでしょう? アイスクリームを食べてから帰りませんか」

「アイスクリーム?」


 聞いたことのない名前だ。

 目の前に屋台のようなお店がある。

 フローラ達は次々と店主に注文を告げ、アイスクリームとやらを手に入れていく。


「ほら、エクレアもどうぞ」


 フローラがアイスクリームを差し出してくる。

 アイスクリームは茶色のコーンの上に丸いクリームのようなものが乗っているお菓子(?)であった。

 でもクリームは固形状になっており、私が想像しているトロトロふわふわではない。


 私は恐る恐るクリームのところを舌でペロッと舐める。


「冷たい!」


 でもアイスクリームはとても甘い。

 冷たさが体に染み渡っていき、ダンジョンに行った疲れもなくなっていくようであった。


「冷たいスイーツですわ。クリームの部分を舐めているだけでも美味しいですけど、コーンまで辿り着いたらどうかご一緒に食べてみてくださいませ」

「美味しい!」


 サクサクのコーンとクリームの冷たさが絶妙にマッチしている。

 あっという間にアイスクリームはなくなってしまった。


「美味しかったですわ」

「一仕事終えた後のアイスクリームは格別ですわね」


 みんな、私と同じような感想を抱いたみたいだ。


「確かに報酬金は少ないかもしれません」


 口元にクリームが残ったままのフローラが続ける。


「でも――みなさんとの絆は深まりましたし、最後にこうやって甘いものを食べるのはお金では換えられないものだと思えませんか?」


 フローラの言った通りだ。

 アイスクリームを食べることによって、今日の疲れが全て吹っ飛んでしまう。

 気付けば――辺りは真っ暗になっている。


「よーし! 明日からダイエット頑張るぞー!」


 夜空の星に向けて私は拳を突き出した。


  ■


「勝手なことをしないでください!」


 しょぼーん。


「なに勝手にダンジョンに行ってるんですか? もしそこで怪我……で済んだらまだ良いものの、死んでしまったらどうするんですか! あそこの冒険者ジムでは危険なことを教えてる、という噂が広まったら責任取れるんですか!」


 翌日、ジムに行ったらトレーナーが血相変えて問い詰めてきた。

 どうやら私達がダンジョンに行き、ギルドで一騒動起こしたことは筒抜けだったらしい。


「すみません……わたくし達、自分の力を試し」

「今回はたまたま運が良かったもののですね!」


 フローラが反論するが、トレーナーは聞く耳を持たない。


 仕方ないよねー。

 悪いことをしたのは私達なんだし。


「どうしてわたくし達の完璧な計画がバレたのでしょう?」

「きっとギルドにいた酔っぱらい様がチクったのですわ」


 もちろん、ギルドからの通報もあったかもしれない。

 私は椅子に座って本を読んでいたレイラさんを見る。


『ふふふ。生徒が怒られているのを見るのは快感だわあ』


 というような笑みを浮かべていた。


 間違いない。レイラさんがチクったんだ。

 あの時はバレてないけど、どうやらわざと気付いていないふりをしていたみたい。


「……だったらあの時、止めてくれればいいのに」


 なのにあえて泳がせたのは、こっちの方が面白そうだからだろう。

 レイラさん、恐るべし。


「とにかく! 次回からは――」

「ふん。冒険者の真似事?」


 トレーナーが話を終えようとしたら、横からもう一人の少女が登場した。


「アネットさんあなたが口を挟むと余計にややこしくなるからどっかいっておいて!」

「わたしはこうやって、冒険者気取りのお嬢様が大嫌いなのよ。少し話しをさせてちょうだい!」


 どうやら、現れた少女はアネットさんというらしい。

 年頃は私やフローラと一緒くらいだろうか。

 ツインテールで勝ち気な瞳をした少女である。


 アネットさんは歩幅を広くし近付いてきて、


「いい! あなた達は所詮、ダイエットコースなの。冒険者の真似事なんかして、クレテール冒険者ジムの評判が落ちたら迷惑だわ」

「……失礼ですが、あなたは?」

「わたしのことを知らないの? このクレテール冒険者ジムのエースで、Cランク冒険者だわ!」


 親指で自分を指して言い放った。


 ……Cランク。

 微妙〜。

 ってな空気がみんなの間に流れる。

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