17・いざダンジョンへ
イメジの洞窟。
今回、私達が挑むダンジョンの名である。
「ジメジメして気持ち悪いですわ〜」
「折角のドレスが汚れますわ」
「さすがダンジョンですね。入る前から恐ろしい」
……もういちいちツッコミを入れるのも疲れる。
ってかダンジョンに出かけるっていうのに、なんでこの人達は煌びやかなドレスに身を包んでいるのだ。
「――みなさん。頑張りましょう!」
「「「「おー!」」」」
洞窟の前で気合いの一声。
明らかに体のサイズに合ってない武器や、防御力皆無な防具(ってか服)に身を包んでいるけど、今からダンジョンに挑むのだ!
とはいってもイメジの洞窟は大したダンジョンではない。
せいぜい、スライムやゴブリンが出てくる程度の――駆け出し冒険者が最初に行くようなダンジョンである。
だけどダイエットコースの人達は戦いに関してはド素人なのだ。
「あら? 意外に中は明るいですのね」
フローラが先頭に立ち――その隣に私、という配置。
後ろががら空きではあるが、神経を張り巡らしているので大丈夫だろう。
「ダンジョンには『魔素』という粒子があります。魔素がダンジョンの壁とかと反応して、明るくさせているんだよ〜」
「あら、エクレア。意外に詳しいですのね」
「……昨日、本で勉強したからね。準備が大事!」
「あら、さすがですわね。わたくし、昨日は楽しみで八時間しか寝てないので……ふわあ」
フローラが大きな欠伸をする。
……突っ込まないぞ。八時間寝れば十分だ、って!
「あっ、モンスターですわ!」
前からトコトコとゴブリンが歩いてきた。
ロングソードを鞘から抜き、さっさと退治しようとすると、
「ここはわたくしに任せてください」
フローラが前に躍り出る。
「ジムで鍛えた剣技……ここで見せつけてやりますわ!」
そんなの一度も習ったことないよねっ?
「フローラさん……カッコ良いですわ」
「フローラさんの奥義――『死地天抜刀』が久しぶりに見られますわね」
うっとりした目でフローラを見ているし!
フローラが右手で持っているのは細いレイピアだ。
重くてろくに振ることも出来ない武器に比べたらマシだけど、力加減を間違えればすぐに折れてしまう。
「行きますわよ……はあ!」
フローラがレイピアを振り上げてゴブリンに特攻する。
「……あっ! あそこにイチゴのショートケーキが落ちている!」
わざとらしく声を上げて、ゴブリンとは全然違う方向を指差す。
今だ!
みんながショートケーキ(嘘)に気を取られている隙に地面を蹴る。
ゴブリンが悲鳴を上げる暇もなく、ロングソードで両断してすぐさま元の場所へと戻った。
「はあ!」
あっ、フローラ転けた!
「痛いですわ……くっ、さすがダンジョンの主……」
ただのザコモンスターだから!
本来、モンスターの前で転けるなんて「殺してください」と言っているようなものだけど、その間に私がゴブリンを倒している。
鼻を赤くさせたフローラが顔を上げると、
「……あら」
真っ二つになっているゴブリンが。
「や、やりましたわよ! モンスターを倒しましたわよ!」
それを見て、小さく飛び跳ねるフローラ。
「みなさん! わたくしの勇姿を見ててくれましたか?」
「……もちろんですわ。さすがですわね。剣豪と呼ばれた腕は衰えてないみたいですわね」
「すいません。速すぎて見逃してしまいましたわ」
「ふふふ。もったいないことをしましたわね。良い? 今のは一振りで百もの攻撃を繰り出すフローラさんの奥義で……」
……うん。
フローラが無事だったら良いんだ。
『フローラ転けただけじゃん!』
なんてことは間違っても言ってはいけないのだ。
「この調子でどんどん奥に進みますわよ!」
これで気をよくしたのか、フローラの足取りも軽くなる。
「そろそろお腹が空きましたわね〜」
「フローラさん、ここらでお茶会を開きませんか?」
「いいえ――ダンジョンでお茶会を開くのは愚の骨頂とも言えるでしょう」
フローラのやけに真剣な表情。
前、ドンデリーの森で愚の骨頂をやらかしたのは口にしない。
ってかまだダンジョンに入って十五分くらいなのに早くない?
「――わたくし、こういうものを持ってきましたの」
ダイエットコースの一人が袋からなにかを取り出す。




