16・素人の武器選び
「冒険者に大切なものってなんだと思いますか?」
ダンジョンに向かう最中。
先頭に立つフローラが得意気な表情を浮かべてそう言った。
「お金じゃないでしょうか。備えあれば憂いなしでしょう」
「バカね。モンスターでも買収するつもり? 強力な魔法に決まっているでしょう。禁忌魔法とかでモンスターを葬れば解決ですわ」
「回復アイテムよ。死者さえも蘇らせると言われる伝説の黄金ポーションがあれば……」
各々が思う答えを次々に口にするみんな。
的外れ、というわけでもないけど世間知らずというか……。
「ふふん。違いますわ」
フローラが自信満々に笑みを浮かべ、
「武器ですわ。素手でモンスターと戦うわけにもいかないでしょう?」
「おお」
思わず私は声を上げてしまう。
もっと素っ頓狂なことが飛び出すと思ったけど、意外とマトモだ。
「そこで……まずダンジョンに向かう前に武器を買いに行きましょう」
「賛成!」
私は手を挙げる。
……いや、今更新しい武器を買っても、使いこなすことは出来ないので付け焼き刃になるだろう。
でも素手よりは安全だと思うしね。
「武器……か」
クレテールに来てから勇者時代の武器はほとんど捨ててしまったしなー。
唯一残っている武器を持ってきたら勇者だとバレるかもしれないし。
ダンジョン内では木の棒で代用するつもりだったけど、この際新しい武器を買うのもいいかもしれない。
「着きましたわ!」
フローラが立ち止まり、目の前の建物にビックリしてしまう。
「え……ここは……?」
「もちろん! 武器屋ですわ!」
――何故なら。
そこは宝石店かと見間違うくらい、キラキラと光り輝いていて武器屋にはとても見えなかったからだ。
「わあ……ここが武器屋なのですね」
「わたくし、こんなところに来るの初めてですわ」
店内を歩き回りながら、みんなが珍しそうに武器を見ている。
「……私もこんなところ来るの初めてです」
「そりゃそうでしょう、エクレア。わたくし、お父様のお知り合いの冒険者にここを聞きましたのよ?」
「その冒険者って……」
「ええ。とある大商人の息子さんが戯れに冒険者をしているらしいですわ」
そりゃそうですよねー。
いや、武器屋なんて勇者時代に何度も訪れた。
でも――こんな高そうな……ってか「これは伝説の武器かなにかか?」っていうくらい高そうな武器や防具が並べられている場所に来るのは初めてだ。
隠しダンジョンの宝庫に迷い込んだわけじゃないよね?
「あっ、この武器なんかどうかしら。とってもキレイ」
「この大きそうな武器が強そうですわ。振り回すだけでモンスターを全滅させられそう」
「やっぱり杖よ。今の時代、武器より魔法ですわ」
みんなは店内を眺めているわけではなく、気軽そうに武器を持ち上げて考え始めている。
落とした時の弁償も考えて、ヒヤヒヤするんだけど……。
ツッコミ所満載なんですけど!
「あのー、そんな無駄なダイヤモンドなんか付いててもダンジョンでは役に立たないんじゃ?」
「それは大剣ですね。確かに攻撃力はピカ一ですが小回りも利きませんし、そもそも振り回せませんよね?」
「いやいや。魔法って……魔法使えないよね」
見当違いなことを言っているみんなに逐一ツッコミを入れていく。
「そんなものより……」
私は近くに置いてあるサーベルを手に取る。
「これなんかは? 軽いですし使いやすいよ」
「そんな盗賊が使うようなものなんか使いたくありません」
バッサリと断られる。
「じゃあ……このロングソードは? なんだかんだでポピュラーな武器ですし、この刀身の輝きが星のようでキレイじゃないかな?」
「うーん、なんだか地味ですわね。この斬れるところはダイヤモンドで出来ているんですか?」
刀身を素手で触りそうになったので、慌てて手を持って止める。
……いや。
地味とかそんなの関係ないから! ダンジョンにおいては見た目より機能性ですから!
確かに店内には(高いけど)よく斬れそうな剣なんかも置いてある。
でも! こんなの買っても素人には使いこなせませんから!
いくら地味でも丈夫で初心者でも使いやすい武器が一番だから!
「エクレア」
ポン、と私の肩に手を置くフローラ。
「あなたの言いたいことは分かりますわ」
「わ、分かってくれる?」
「ええ。エクレアは地味な武器が好きなんでしょう? でもそれだったら、誰かに見られた時にどうするつもりで?」
「誰に見られるの!」
「モンスターです」
ダンジョンで婚活でもするつもりだろうか。
「はあ……」
溜息を吐く。
まあ良っか。
いくら言っても聞いてくれそうにないし……。
「私がいれば大丈夫だしね」
おっ、このロングソードは丁度良いっぽいな。
うん。安いけど壊れにくそうで手に馴染む。
ダンジョンに向かう際は決して油断しちゃいけないけど……まあこれくらいでも大丈夫だろう。
「わ、わたくしっ! この斧にしますわっ!」
「ちょ、ちょっと! 転けちゃいそうだから気をつけて!」
結局、みんなは役に立たなそうな武器を買って満足げな顔をしていた。




