10・チョコレート
「魔石?」
ひょいと赤色の魔石を拾い上げてみる。
「これはファイアーボールの魔石かなあ? この魔石に魔力を込めれば魔法を使えるんだよ」
「ま、魔法ですか! あの、魔法使いや一部の神官しか使えない奇跡!」
「う、うん。奇跡かどうかは分からないけど、一定の魔力を込めれば一般の人にだって使える優れもの」
でもこれだったら、精々一回使ったところで魔石が割れてしまうだろう。
この通り、ドンデリーの森はダンジョンということもあり魔石が落ちていることもある。
魔石をギルドに届ければ、少ないけど報酬金を得られることも出来るのだ。
「持って帰ってお父様とお母様に自慢――きゃっ!」
フローラが短い悲鳴を上げて尻餅を付く。
フローラの体が木に当たって、揺れる反動で葉っぱが落ちてきた。
パンツ! パンツが見えてるよ!
パンツ丸出しで、頭に木の葉を何枚か乗せたフローラは、
「なんですの……ホント。こんなドジは普通しないといいますのに」
「きっと疲れているんですよ」
みんなと行進しながら、ドンデリーの森を見ていると……それほど危険度が高いダンジョンではないようだ。
っていうか、今まで一匹のモンスターも現れてないし。
でも足場の悪いダンジョンをこれだけ歩いたのだ。
疲れが溜まっていても可笑しくないだろう。
「レイラさん。そろそろ休憩しませんか?」
一人だけ(私もだけど)元気なレイラさんに提言する。
「そうねえ。ここらで一回休んでみるのも面白いわあ。さすがに怪我なんかされたら、ジムの人から怒られちゃうからねえ」
おっ、意外にあっさり許可を貰えた。
「休憩! 休憩ですの?」
「うん、フローラ。少し休んでから森の探索を続けよっ」
フローラが立ち上がり、目をキラキラと輝かせる。
「お茶会ですわっ!」
そう言って、フローラがどこからともなく布を取り出し地面に敷いた。
ダイエットコースの生徒、レイラさんを含め今十人くらいいる。
その十人が楽々座れるような大きいシーツだ。
「なんですの、フローラさん? どこから一体……」
「アイテムボックスですわ! 収納量は少ないけど便利ですのよ」
「それは便利ですね。私も帰ってお父様に買ってもらおうかしら」
……うん。私は旅行した時に使っていたから分かっていたけど、アイテムボックスの知名度は低いみたいだ。
ってかアイテムボックスって高かったはずだけど……。
収納量がいくら少ないといっても、家一軒は建つくらいのお金が必要なんだけどなあ。
「今日は家から『これ』を持ってきましたの!」
アイテムボックスから『とあるもの』を取り出し、広げるフローラ。
「これは……」
「チョコレートですの!」
チョコレート!
やった! 大好きなんだ、これ!
高価なこともあってなかなか食べられないけど!
前食べたのはいつくらいだっけな……確か魔王を倒して、城に招かれた時くらいだったかな。
「食べましょう食べましょう!」
率先して布の上に座り、チョコレートに手を付ける。
うーん! 美味しい!
チョコレートを食べると、頭の中までスッキリするような感じになる。
甘くなった口の中を――水筒に入れて持ってきたらしい――紅茶で流すと至福の時間が訪れる。
「ふふふ。ダイエットコースなのに、こんな太りそうなものを食べるなんて……まあ美味しいから今日のところは不問にしてあげましょ」
レイラさんも薄いチョコレートをかじっている。
まさかダンジョンでもお茶会が出来るなんてね!
――小鳥のさえずり。モンスターが「ピーッ」と近くで鳴いている音。
幸せだなあ……天国ってものが本当にあるなら、きっとこういう時間が永遠に続くのだろう。
「って、近くでモンスターが鳴いている……?」
バッと後ろを振り向いて、目を凝らしてみる。
すると……、
「「「ピーッ!」」」
スライムの大群が森の奥から押し寄せてきてるところだった。
「あらあ。スライムの大量発生がある、ってギルドの人が言ってたけど……本当のことだったみたいねえ」
レイラさんが頬に手を当てて、呑気な声を出す。




