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この娘、TS転生者らしいです  作者: 白詰 七葉
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第5話 女子の入浴、戸惑うミーシャ!

はい、また遅れました。引き伸ばしておいてさらに遅れました。でも力作です。許してください。

今はそれしか言葉が見つかりませんが、どうぞお楽しみくださいませ。

  パーティーの夜。語らいの中で、少女は静かに、固い決意をした。それと同時に、また別の感情が動いていることに、本人はまだ気づききっていない。

しかし、その幼馴染にして親友には、理解できてしまう。静かな決意も、それと同時に灯りかけた淡い感情の火も。


  そんなパーティーは、もう終わった。そして、ある洗礼が行われようとしている。といっても、宗教的なものでは断じてない。


「そんなわけでぇ、お風呂の話なんだけどぉ」


「どんなわけだよ!」


  もう真夜中という時間帯になりかけていても、ミーシャのツッコミは冴えを見せていた。しかし、何事もなかったかのようにリカの話は続く。


「いろいろ考えてみたんだけどねぇ、わたしは一緒に入っちゃったほうがいいと思うんだぁ」


「ちょっと待って!」


 次のツッコミはシャムルからだ。


「ミーシャ元々男の子だよね?  裸見られちゃうんだよ!?」


 女子なら確実に突っ込むところだ。現在は肉体的には同性だが、精神としては異性である。先ほど意識させられてしまったので余計に力が入っている。


「うーん、わたしも恥ずかしい気持ちは勿論あるんだけどねぇ、まずこの世界での生活に慣れていないから、お風呂でトラブルが起こるかもしれないんだよぉ」


「それはまぁ……」


「確かにそうだな」


 珍しくきちんとした根拠を示されて、頷くしかない2人。


「それとねぇ、元に戻りたいと言ってもぉ、いつになるかわからないし、まず戻れる保証もないからぁ、一応女の子慣れしておいてもらったほうがいいと思うんだよねぇ」


 リカは、ほんわかとした声のまま、少し重みのある声で続けた。そしてシャムルは思い出した。以前、このようになったリカを自分は止められなかったことを。彼女は柔らかそうな印象とは裏腹に、自分の決めたことをやり通す頑固さを持っていたことを。


「うん、そういうことなら……仕方ないかな。私も協力するよ。抵抗がないわけじゃないけどね」


 よって答えは1つ、渋々承諾することだった。

無神経気味なミーシャもさすがに止められないと悟った。それと同時に、女の子2人と入浴できるという状況に対するワクワクが湧き出してきたため、そちらを抑える方に意識を向けせなければならなくなった。


「ミーシャも、それでいいよね?」


「え!?  あ、ああ。いいんじゃないか?」


 平静を保とうとするも、不可能だった。そのうえ、


「あ、もしかして女の子2人……いや、ミーシャも含めて3人分の裸が見られるから興奮してるぅ?」


  なんて、リカがからかってくる。ミーシャはリカをもっと清楚系な子だと思っていたようだが、人は見た目によらないということらしい。


「……やっぱり、私パスでいいかな?」


「ダメだよぉ〜」


  結局、3人で一緒に入浴することとなった。


「で、なんなんだよここは」


  再びミーシャのツッコミが飛ぶ。それもそのはず、連れてこられたのは、村の外、山道を歩いて約20分の岩場である。周囲は湿気が多く、遠くの風景は霞んで見てる。


「ま、もうちょっと進んでみなよ」


 シャムルがそう言うので、もう少しだけ岩を越えて進んでみる。すると……


「これは……温泉?」


「あたりだよぉ〜!  天然ものの大浴場だよぉ!」


 そう、そこは山の中に湧く自然の温泉スポット。しかも、岩場なのでうまく周囲から見られることなく入浴できてしまうのだ。


「服は岩陰にでも置いておいてね」


「女の子としての初入浴だねぇ」


「あ、ああ」


 入浴の準備を整えた3人。ちなみに全員タオルを巻いている。山道での話の中で、綺麗な意見の一致が起こりこうなった。


「お湯加減は大丈夫そうだね」


 シャムルはしっかりと確かめた。しかし、


「まず、体を流さないといけないよねぇ」


 体を流す、ということはつまり……


「あ!そうだね……ミーシャ、一応あっち向いてくれると嬉しいな」


 やはり、女子としての防衛ラインはあるので、そこは譲れない。


「わかったよ」


 やけに素直に向きを変えるミーシャ。実は、自分の体のことだけで頭がいっぱいになってしまい、これ以上見たら何か大変なことになる気がして、まともに見ようとは思えないようだ。


  そんな間に2人はひそひそ声で話す。


「やっぱり体洗ってあげたほうがいいよねぇ」


「自分の体も直視できないようじゃそうなるよね」


「実は本人がそう思ってるだけで、肉体的には興奮するようなことじゃないんだよねぇ、時間が経てば馴染んでくれると思うなぁ」


 ミーシャに対する思いやりなのだが、まるで悪巧みだ。ところが、


「……ねぇ、リカ」


 シャムルは、先ほどまでとは全く違い、どこか真剣な眼をリカに向けた。


「リカって、ミーシャが知らないようなあの子の秘密、知ってるんじゃないの?」


「……やっぱり、シャムルちゃんには何も隠せないねぇ」


 観念したように、呟く。


「異世界から魂がこの世界に入ってきたことは、これが初めてじゃないみたいなんだよねぇ。これは前に本で読んだんだけどね、異世界で、何かできる可能性があるのに、それを潰されてしまった人間の魂がここに来るんだって」


「じゃあ、ミーシャも?」


「その可能性が高いと思うなぁ。それと……その時の身体なんだけど……」


 一瞬、口を止めようとするリカ。この先は言ってしまっていいのか? そんな迷いが彼女にはあった。しかし、今証明された通り、2人はお互い、幼馴染で、親友だ。隠していても、すぐにバレる。それならいっそ……


「おーい! まだかよ!」


 2人の空気を切り裂いたミーシャの一声。


「今行くよぉ〜! 」


 咄嗟に対応するリカ。さらに、シャムルだけに聞こえるように


「じゃあ、続きは寝る前でいいかなぁ?」


 と言って、持ってきた桶を構えてミーシャの方に向かおうとする。

シャムルはその言葉を受け取り。ついて行こうとする、が、しかし、


「リカ! タオル! 忘れてる!」


「あぁ!」


 リカはシャムルから受け取ったタオルを急いで巻き、ミーシャの方に向かう。そして、豪快にもミーシャからタオルを外し、


「じゃあ、しっかり流そうねぇ。女の子の身体だから丁寧にぃ」


 そこにシャムルも加わり、洗いっこ、というより、ミーシャが一方的に洗われていた。

 それから、皆で地面にできた天然の湯船に浸かる。


「ふぅ〜」


「あー、疲れが取れるー」


「……こういうお風呂も、いいな」


 などと言いながら、リラックスして、空を見上げる。そこには満天の星空。その全ての星々が、自分が一番輝いている、と主張するようだった。


「父様! 母様! 同じ空を見ていると信じて、私は2人を探すから! 待っててね!!」


 シャムル、その星に負けないように、自分の全てをさらけ出すような大声で叫んだ。

 それとは逆に、リカはしみじみとした声で、


「じゃあ、ちょっとだけお別れかもねぇ……ミーシャも、元に戻る方法、探しに行くでしょ?」


  話を振られたミーシャは、


「ああ、そうだな。シャムルについて行ってみる。まだこの世界のこととか、色々よくわからないけど、絶対、何かのためになると思うんだ」


 そう、女の子の声で、男らしく言った。


  それからしばらくの間、静かに空を見上げながら、温泉に浸かっていた。ミーシャがのぼせかけたあたりで、それは終了するのだが。


  そして、夜は更け、すでに3人は布団の中だった。

  ミーシャは早く寝てしまったようだが、念のため小声で、リカが話し始める。


「さっきの続きだけどねぇ、実は魂が入る身体はね……この世界の誰かの中から、ランダムで1人なんだぁ」


「えっ?」


  シャムルは、一瞬、時間が止まったように感じた。内容のせいか、それとも眠気のせいか、内容を頭が理解してくれなかった。


「……別の世界の人間が、この世界の生きている人間をランダムで乗っ取っているってわけねぇ」


「……元々の人の魂は、どうなるの?」


「それは本には書いてなかったねぇ。でも、」


「でも?」


「ミーシャを見るに、中で眠っているか、消えてしまってるか、だよねぇ」


  シャムルは、聞き返すことをやめた。


「……なんか、ごめんねぇ。でも、シャムルちゃんには、言うしかなかった……ていうか、言っておくべきだって、思ったんだよぉ」


「……うん」


  もし、リカがいうことが本当なら、ミーシャは無意識のうちに、誰かの人生を奪っていることになるのではないか、そんな思考が、彼女の中で渦を巻き始めた。それをどうにか止めるため、


「……おやすみ、リカ」


  眠りに落ちることを選んだ。


「おやすみぃ……」


 リカも、そのまますぐ眠りにつく。元々早く寝るタイプなので、少し無理をしていたのかもしれない。

そして、


「ボクは……この身体は……」


 まだ1人、起きている人間がいたことに、2人は気づいていなかった。


お風呂回、サービスとかギャグだと思いましたか?なんとシリアスでした。それに対するクレームは一切受け付けておりません。

さて次回は、旅立ちです。お楽しみに。

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