歩行
踏み外さぬ様に 下ばかり見て
必死になって 早足で歩く
周りが見えなくて 少し怖くなる
雑音が聞こえぬ様に イヤホン付けて
大音量で よく分からない音楽を聴く
誰の声も届かなくなって 酷く怖くなる
卒倒 転倒 喪失感
罵倒 劣等 罪悪感
主人公って何か特別なモノを持っていて
主人公って何か普通のモノを無くしていて
主人公って何だかんだで前に進んでく
上を向いて 見下してるヤツを
睨み付けて 唾を吐きかける
結局自分に降ってくる
イヤホンを外して 周りの声を
一心不乱に 聴いてみる
結局雑音でしかないのに唖然とする
嫌悪 憎悪 虚栄心
厭悪 羞悪 猜疑心
僕には何か特別なモノなんかなくて
僕には普通の不自由しかなくて
僕は立ち竦み 背後に恐怖してうずくまる
ただ ただ 涙流して
ただ ただ 鼻垂らして
ただ ただ 醜い姿を晒して
消えてしまいたくなった時
君が視せてくれた月を思い出し
君が聴かせてくれた歌を思い出し
僕はもつれる足で立ち上がり
嗚咽が止まらない声で叫ぶ
なんて事が出来るのは主人公だけ
情けない僕に出来ることは
ただ息をする事だけ
息をするのも億劫になってきた
なんて格好付けて
どうすれば良いかなんて
分かる筈もなく
グルグル思考の渦に引き込まれる
そんな中でも記憶で視た太陽があって
どんな中でも記憶で聴いた童謡があって
時に優しく 時に残酷な世界
そんな中で生きてるものだから
特別がなくても 普通の不自由を持って
また歩き始めるんだ
主人公じゃなくても
後ろへ向かっていても
また歩き始めるんだ
もつれる足で 声にならない声で
前も後ろも分からなくなって
それでも一歩
また 一歩
ただ 一歩
そしたらきっとどこかに辿り着けるかなって
それが生きることかなって