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7話 2人目の転生者

 貴族というのは、生まれながらにしての高位な地位に属する人間である。

 金、名誉なら当然のこと。貧民や平民とは比べ物にならない豪邸。衣服の装飾も豪華なもの。それに加えて、吾輩の商会。

 様々な製品の魔道具を最低価格で販売し、売上上場。さらには、自社のオリジナルブランド製品の販売をし、さらに売上上昇。その元となる物がなんなのか知らずに購入していくお客は言わばお金を持ってくるカモ同然なのである。


「グフフ、お金は溜まっていく一方じゃのう」


 大商人バグデルは貴族区の大きなや自分の館でワインを飲んでいた。

 バグデルの館は、貴族区の中では、それなりに大きく豪邸といっていいほどの館であるので、このような星が見える夜の時間帯に自室で窓から景色を眺めることだってできる。

 まぁ、ワイン片手に持っている姿が似合うかどうかは今はどうでもいいが。


「で? 執事ワールよ。売上は今日も順調だったのじゃろう?」

「はい、我が主がおっしゃるとおり今日の売上も右上がりにてございます。これも全てバグデル様の宰領がよかったからにございますでしょうな」

「そうじゃろう、そうじゃろう!!」


 大商会バグデルと話をしている執事服を着用した老人は名をワールといい、バグデルが生まれた時からの付き合いと聞く。どうもこの爺さん、主に甘いような気がするが、今はそんなことはどうでもいいだろう。


「それに、自社ブランドを製作するにあたってアンジュから引き抜いた魔道具職人数十名も、バグデル様のご要望を完璧にクリアしたのもさすがというものでしょう。売上が伸びているついでに彼らに褒美を与えてみてはどうでしょうか?」

「……ふむ、ワールの言うことも一理ある。だが、奴らにはまだ褒美を与えるのは早いじゃろうて。いつもどおり、最低限の食うところと寝るところ。そして、我が社の最低賃金でも渡しておけばよかろう?」

「恐れながらバグデル様。それでは、奴らに反感を買うことになりますぞ? そうなれば、苦労するのはバグデル様自身となりましょう」

「ふむ、ならば奴らの食うものを少々豪華にしておけば問題ないじゃろう? 働く者、健康管理は大切にしなければいかんじゃろうて」


 下卑た顔をしながらバグデルはワールにそう言った。

 ワールはバグデルの答えに畏まり、近くにいた者を呼んでそのことを伝えた。まぁ、料理の質を上げられてもウチやったら満足せえへんけどな。


「して、ワールよ。例の件はどうなったのじゃ?」

「例の件と申しますと、貧民区の泥棒のことでございましょうか?」

「そうじゃ、それ以外に何がある?」

「それでしたら、先程、傭兵ボルグが仕事を終えたようで館に帰ってきておられます」

「さすが腕利きの傭兵じゃな! 高い金で雇ったかいがあったわい!!

 仕事の成果を聞きたいからはよう呼べ!!」

「かしこまりました」


 ワールはお辞儀をしたあと、館の使用人に声をかけて雇われ傭兵のガリアを呼ぶように指示を出した。

 因みに、何故ウチがバグデルの自室にいるのかという疑問が思い浮かんだのなら、簡単に、順を追って、説明するとや。

 まず、傭兵達の後を追う、というかもう潜入したほうが早いだろうと判断したウチは他にレイラの仲間が居ないか探していたであろう警備兵の一人を瞬殺して身包みを剥ぎ、仲間のフリをしてバグデルの館へ潜入成功!!

 館の入り口には、執事ワールがいて、傭兵ボルグは仕事を終えたから自室で休むと言って自分の自室へと行き、ウチ以外の警備兵は、捕らえたシグルドとレイラを牢屋へぶち込む為に地下へと連れて行った。そしてウチは今回の仕事の成果をワールに伝えた後、ワールに連れて行かれて、今回の標的であるバグデルの警護を頼まれて現在に至るというわけや。

 いや、うん。何とも潜入に関しては簡単でして……このまま、バグデルを暗殺できんとちゃうやろかというぐらいです。

 何せウチの前方にいはるんやし。

 少々離れてはるけど、この距離ならウチの魔法で何とか出来そうな気がする。まぁ、それこそ執事ワールの目を盗んで魔法を発動せなあかんねんけどね。

 でも此処でそれを行えば怪しまれるんはウチやろうね。それこそ、向かいのガラス窓からの狙撃やったら暗殺者の所為に出来たんやろうけど残念ながらウチは狙撃スキルは持ってない。


 というような、バグデル暗殺計画を頭の中に巡らせていると、使用人に呼ばれたであろう傭兵ボルグがバグデルの自室へとやってきた。

 傭兵ボルグ。多少ながらウチはその人物の話を聞いたことがある。

 神嵐流剣術の使い手であり、その技で倒した魔物や人は数知れない。傭兵稼業を生業としており、頼まれた依頼は完璧にこなしてきたと言う。また、剣士としても名が知れている為、ボルグを倒す為に挑んだ剣士も居たそうだが、全員返り討ちにあったという。

 シクロアからは凄腕の傭兵を雇ってるって聞いたけど、まさかボルグを雇ってるなんて……ウチには荷が重い気がするんやけど、気の所為やろか?


「俺に何か用か? バグデル」

「口を慎みたまえボルグ。貴殿の雇い主であるぞ?」

「ワール、そのくらい良い良い! 我輩は今回の成果を聞きたいだけなのじゃから」


 ボルグは依頼主のバグデルに対しての態度は変えないみたいだ。

 まぁ、依頼主がバグデルやとウチでも態度は悪くするやろうな。それぐらい、印象的に嫌悪感が湧き上がる豚のような姿をしとるし。


「して、泥棒は捕まえたのじゃろうな?」

「ああ、抜かりはない。貧民のガキ共を殺すと言ったら簡単に捕まってくれたわ。

 だが、余計な虫も一匹いたのでそいつもついでに捕らえたが良かったか?」

「余計な虫? 構わんよ。どのみち奴らは明日に処刑するのじゃから」


 バグデルはさも当然だというような顔をしながらそういった。

 処刑って、マジかー。

 つまりあれやんね? 処刑言うことは今日捕らえたレイラやシグルドを殺してしまういうことやんね?

 シグルドは別にええとしてもレイラを処刑されるんはちょっとなー……まだ、確かな情報は聞いてないし。処刑されても困るんやけど。


「ほう、奴らを処刑するのか」

「無論じゃ。奴らは吾輩の情報を知りすぎた。それに、吾輩の売った商品を盗むという罪も犯したのじゃ。

 吾輩に刃向かう者など処刑するに越したことはない……ふむ、この際公開処刑でもしてやろう。さすればもし、吾輩の秘密がバレても刃向かおうと考える者など居なくなるじゃろうて!!」


 バグデルは良い案を思いつたと言わんばかりの高笑いをした。

 なるほど、公開処刑をしてアズガルドの皆に恐怖を植え付ける策略か。

 公開処刑をすれば、もしバグデルの秘密を知ってもうた奴はその秘密を公開でもしようものなら、邪魔する者として排除するいうことを知らしめれる。

 バグデルに逆らったら殺されるぞーというような感じに。

 処刑する人物はバグデルのブランド商品を盗んだ泥棒レイラなのだからこれほど効果的になる人物はほかにいないだろう。

 ……シグルドは、多分ついでみたいなもんやろーけど。


「……前から気になっていたが、その秘密とやらはなんだ?」

「……ふむ、いいじゃろう。今回の褒美に教えてやる」

「バグデル様、そのようなことこやつにお教えするわけには……」

「構わん。そやつに話したところで、興味はないのじゃろう?」

「ああ、俺は、興味ないがな」


 ボルグは不敵な笑みをこぼしながらそういった。

 ……一瞬やけど、あいつこっちをみてたような気ぃする。もしかして、ウチが潜入したことに気がついてはるんか?

 いやいや、そんなことはない……はずや。殺気とかは全く放ってないんやし、気付くわけないやん。

 それにもし、仮に気付いてたとしたら何で、わざわざ情報を流すような真似をしてんねん。ってなるで?

 ウチはそのようなことを頭で思考していたが、バグデルはそんなこと気にもせずガリアが聴いてきた内容を答える。


「ボルグよ、そちは吾輩の商会で製作しているオリジナルブランドの魔道具。これは何をベースにして製作していると考えておる?」

「……あんたらの話を聞いてる限りじゃ、ろくなもんじゃねーだろう。推測するに、売り物にならなくなった魔道具じゃねえのか?」

「ふむ、良い線はいっているのぉ。さすが、凄腕の傭兵じゃ。

 だが……残念ながら不正解じゃ」

「じゃあ、正解は一体なんだ?」

「吾輩の商会の魔道具職人はある魔道具を新品にする技術を持っておるのじゃ。じゃが、新品といっても使い物にならない修理不可能レベルを新品に加工したところで、商品としては使えん。なれば……手軽な場所から、修理不可能レベルではない古い魔道具を奪えばいい話じゃろうて」

「なるほど……そういうことか」


 ボルグはバグデルの話を聞いて納得したかのように頷いた。

 まぁ、ウチもその話を聞いて、色々と納得してもうたわ。しかし、それならどうしてレイラはバグデルの売った商品を盗ったりしとるんや? 関係性がまったくもって見えてこやへんな。

 ウチは少々、レイラのことを考えながらもその他に……今回の依頼とは全く関係のないある可能性も考えていた。

 そして、その可能性も考慮しながら、話の内容を改めて整理したのだった。





――――――――――――




錆び付いた鉄の匂いがし、閉じられた目を開けた瞬間に広がる薄暗い闇。

意識があった時の俺は確か、神嵐流の剣術使いの傭兵と戦っていたはずだ。んで、あの傭兵に一太刀入れることができそうな状態になった瞬間、第三者による魔法が飛んできてそのあとは多分……意識を失ったんだろう。


 今の現状を確認するのにはさほど時間はかからなかった。

 まず、両手は自由に動かせないようにと鎖でつながれていた。自分の初級魔法でどうにかできないだろうかと試してみたものの、魔法が発動しない。ということは、この鎖に何かしらの細工が施されてるということだ。

 俺の所持していた武器も、どっかに持ってかれたんだろう。

 そして、錆び付いた鉄の匂いがするということは、今現在俺がいるところは牢獄ってとこだろうか?

 だが、どこの牢獄かは結果的に分かっていない。


「んー、どうすっかなぁ……」

「……気が付いたのね」


 俺の呟いた声を聞いて、誰かが言葉を返してきた。

 その声は、つい最近聞いたことのある声であり、意識ある瞬間まで聞いていた声だ。

 俺は地べたに寝転がる体勢から体を起こして、声がする場所に目を移す。そこには、俺と同様に鎖でつながれたレイラが体育座りをしながらいつも通りの眠そうな目でこちらを見ていた。


「この状況を察するに、俺とお前は捕まったのか?」

「どこからどうみても捕まったわ。この状況を察するに……ね」


 レイラはため息をつきながら、そう答えた。

 ため息をつきたいのは俺も同じだが、今はそんなことをしている時ではないのでやめておこう。


「因みに、貧民区の子供たちはどうなったんだ?」

「全員無事よ。……貴方が気絶した後、私はあいつらの要求通りにしたわ」

「……そうか」

「……怒らないの?」

「……いや、イラついてる。イラついてるけど、要求通りにさせちまった俺自身が情けなくてな」


 俺はそう言いながら、自分の両手を見つめていた。

 この世界に来て、友達を守るために学んだ時雨流だったんだけど、それが俺の未熟のせいでどこの誰かも知らない神嵐流の使い手である傭兵に負け、結果がこのザマなら話にならないだろう。

 まぁ、それで自信を失うほど俺はヤワではないが……落ち込まないといえば嘘にはなる。


「……剣士っていうのは、私にはよく分からない」

「……あん?」

「よくは分からない。……けど、あの戦いは無効試合、だと思う。

 ……第三者の介入もあったし、逆にそれが無ければ貴方はあの男に一太刀、浴びせることが出来てたと思うから」


 俺が落ち込んでいることを察したのかレイラはそんなことを俺に向けて言った。

 んー、女性にフォローされるとは思っていなかったな。そこまで落ち込んでるわけではないんだけども。

 でもまぁ、あのレイラにしては珍しいといえば珍しいものだ。


「お前、励ましてくれんのな。

 昔は無口で何考えてんのか分かんなかったけど」

「……酷い言われようね。励まして損した」

「いやいや、損することねーだろ!? これでも結構感謝してんのに!!」

「どのへんが? 感謝してるなら、それなりの言葉で対応すればいいでしょ」

「お、おぉう……正論だな」

「私は、昔から、正しいことしか言わないから」

「お前、よく言えたな? 昔は口が開いたと思えば嘘をついたりしやがったのに」

「昔は昔、今は今、よ? それに、過去にこだわる男は、女性に嫌われる」


 レイラは本日二度目のため息を吐いた。

 いや、確かに過去にこだわる男は女性に嫌われると言われているが、今正直それについては別にどうだっていい話である。

 というか俺は女性に好かれたいという願望とかないからね?

 確かに、女性に好かれることは好ましいことかもしんないけどさぁ。俺はそういったことには疎い人種なんですよコノヤロー。

 

 女性に好かれる好かれないとかいう話はさておき、いま牢獄に一緒にいる女性の名はレイラ。アズガルドで『蒼電』という名で呼ばれている泥棒である。

 ……世の中では泥棒という言葉で紹介されているが、ある一部のとこでは義賊と言われている。やり方はアレだが、物を盗むという行為は行っているわけなのでただの泥棒じゃねーかと考える奴と、物を盗むだけで彼女は人は一切傷付けていない。それに、噂では盗った物をあるべきところに返しているという。それならば奴は義賊ではないかと考える奴がいて、アズガルド内では泥棒か義賊かという意見で分かれているらしい。

 まぁ、俺個人としては泥棒でも義賊でもなんでもいいと思っている。

 確かにレイラは昔は無口であり、何を考えているのかわからない時もあったし、口を開いて喋ったと思ったら、あることないことテキトーに言ったりして俺を騙していた時もあったが……今現在で自分の置かれている立場が違うとしても、それを放っておくということはするべきじゃないだろう。

 なにせ彼女は俺と同じなのだから。


「んで、ここはどこなんだ?」

「……監獄よ」

「いや、うん。監獄なのは分かるからな? そうじゃなくて、ここがどこの監獄なのかって聞いてんの」

「なら、ちゃんと分かるように伝えたほうがいいわよ?」

「……個人的にはすげー分かりやすく伝えたつもりだったんだが?」

「……この監獄はバグデル館の一部。今私たちがいるところは、貴族区に建てられている無駄に豪勢なバグデル館の地下ね」

「……え? まさかのスルーですかレイラさん」

「普通なら、騎士団に身柄を渡して、騎士団の牢屋にぶち込まれるはずだったけど……ね」


 俺の話はスルーし続けながらも今の現状を説明しているレイラ。

 ちゃんと伝えるように言ったつもりなんだけどそんなに分かりにくかった?無視されるほど分かりにくかったか!?

 というようなツッコミを入れようかと思ったが、多分この手の奴には無駄だと思うので諦めて少しため息を吐いた。


 とりあえず、レイラの話を聞く限り此処はバグデルという奴の館の地下牢ということになるだろう。それに、貴族区ということはバグデルという人物は貴族だということになる。

 つまり、俺らはお金持ち相手に捕まったというわけになる。


「つまり、そのバグデルっていうやつが俺らを捕まえたのな。……何の為に?」

「それは―――」

「蒼電のレイラ、及びその協力者を排除する為やろうねぇ」


 レイラが俺の問いに答える前に、それを遮るかのように誰かがそう答えた。

 その声は、俺とレイラがいる牢の鉄格子の外から聞こえてきた。まさか、この館の警備兵が聞いていたのだろうか?それとも、バグデルの仲間だろうか?という疑念を抱き、レイラはその場で身構えた。

 しかし、俺は身構えることをしなかった。というか……身構えた所で無駄だと思ったからだ。

 何故なら、その声は聞き慣れていたからだ。

 俺がこのアズガルドに到着して別れるまでに聞いていた声。つまり、ここにきて初めて知り合った人物。


「何してんだ? ミハル」

「やぁやぁ、おにーさん。捕まってる姿も様になってるやん」

「喧嘩売ってるだろお前」


 ここバグデル館の警備兵の格好をしたミハル・グランディアはにこやかな笑顔を見せてそう言いながら現れたのだった。


 さも、嬉しそうな顔をしながらこちらを見るミハル。

 彼女とは、冒険者ギルドに到着した際に用事があるとかという理由で別れたのだが、まさか再開するとは思わなかった。しかも、このバグデル館で。


「つーかお前。何でこんなとこでそんな格好してんだよ。

 まさか、用事ってのは警備兵の仕事とかか言わねーよな」

「んなわけないやろ? 魔道具研究者であるウチがバグデルなんぞの小汚い商人の護衛なんかするかいな

 ウチは別件でこの場所におるだけやよ」


 ミハルはさも当然かのようにそう言っているが、俺にとっては全くもって分からないことだらけなのでそんな、こいつマジかよ的な顔されてため息を吐かれてもどうしようもない。

 状況説明をしてくれないミハルにもなにか問題があると思うのだが、それを言ってしまえば余計話がややこしくなると思うので言わないでおいた。

 だが、俺はいいとしても俺と一緒に牢獄にいるレイラは良くないと思わんばかりに、驚いているわけである。それもそのはずだ。

 なんせ、容姿も似ていて、言葉遣いも俺らが知っている奴と同じというのだから驚かずにはいられないだろう。まぁそれも、俺と同じならではの話だが。


「……シグルド、これはどういうこと? 何でミハルがここに」

「あぁ、ちょっと待てレイラ。お前が思ってることは多分、俺も思ったことがあることだけど残念ながら別人だ」

「別人って……。どこからどうみても、ミハルでしょ?」

「残念やけど、シグルドの言うことはホンマやで? ウチはアンタらが知ってるミハルさんとはちゃう。

 魔道具研究者のミハル・グランディアっていう人やねん。以後お見知りおきをー」


 そう、残念ながらコイツは俺らが知っている“ミハル”ではないのだ。

 にこにこと笑顔で話をしているが、その性格ときたら敵対する相手に対して非情であり、遠慮容赦など一切しないのだ。例え、相手を倒したとしても、そいつの息の根を止めるまでコイツは攻撃をやめない。

 そう言えるような行動をこの目で確認したのだから、間違いはないだろう。


「んで、そのミハル・グランディアさんはこんなところに何用ですか?」

「うわー、冷たい態度やなぁ……。数時間行動を共にしてたとは思われへん扱いやわ。

 ウチちょっとショックやわぁ」

「知るかこの野郎。そんな茶番はいいからはやく要件済ませろよ」

「……はぁ、つれへんなぁ。まぁええけどねー。

 さてさて、話聞いてたとおりやねんけど用事があるんよねー。そこのお嬢さんに」

「わ……私に?」

「そうそう! シグルドと同じ転生者であるレイラさんに、な」


 レイラが転生者であることをその場で告げながら、ミハルは不敵な笑みをこぼした。

 どうやらミハルはレイラが転生者だということを理解した上で、彼女にそう言ったのだと考えていいだろう。

 どうやってレイラのことを調べたのかは知らないが、ミハルは俺と一度会い、転生者のことを少しだけ知っている。俺のステータスも確認している。といういことから、転生者の特徴も把握しているということになるだろう。

 なればこそ、彼女は俺たち転生者のことをある程度理解できているのだと考えてもいいだろう。


「こいつは……厄介な奴に知られちまったかな?」


 俺はそう呟きながら、ミハルに対して少々後悔をあらわにしたのだった。




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