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6話 貧民区での捜索

 貧民区。

 そこは貴族区や平民区と違い、廃れた家などが多く存在している。そしてそこに住まう住民たちの服装も帰属のような豪華な装飾はなく、平民のような平凡で一般的な服装もなく、質素な服装をしていた。

 それこそ、最低限肌を隠せるぐらいの布一枚というようなものだ。

 まぁ、貧民からしてみらば布一枚だけでも有難いやろうけど。


 さて、ウチは今現在貧民区にいます。

 何故かと問われると、そりゃおにーさん……情報提供者を探す為ですよー。

 それしかないですやん。

 ウチかて、用がなければ貧民区なんぞのとこに好き好んできたりせぇへんよ?

 シアン闇商店で対価として依頼を受諾した後、次の目標としてその情報提供者を探すことにした。

 シクロアが言うには『貧民区の中のどこかにいるよー』という曖昧な返答しか貰えなかった。

 唯一の手がかりが手配書に描かれた人相絵だけど、これがまた何とも言えないもので顔がぼやけているのだ。

 というか……これ描いた人、画力なさすぎやろ。

 この手配書で分かることといえば、体格は小柄であり女性っぽい言うことだけや。

 後は黒っぽいマントのような服を着てるぐらい。

 髪型は二つに結んでお下げみたいな感じやろか?まぁ、何にしても女性ということは確定やろう。

 これで男性やったらさすがに引くわー。


 そして、ウチがシアン闇商店を出る際に少々気掛かりな事があったのでついでにシクロアに聞いてみた。


『そういや、シクロアは転生者って知ってる?』

『んー……知らないかなぁ。その転生者って何?何かの種族?』

『何でも、違う世界から転生した人のことや。……ここに来るまでに出会ったんやけど、ウチが知る限りで変なスキル持ってたし、強さも一般的なレベルは超えてるんよねぇ。

 多分ウチと戦ったら全力で相手せなアカンぐらいのな』

『へぇ、ミハルちゃんにそこまで言わせる相手なんて……ちょっと興味そそるなぁ』

『はいはい、興味あるんやったらちょっとそういう奴の情報言うか、居場所、調べといてくれへん?』

『別に調べるのは構わないけど……何で?』

『後々、必要になるかもしれへんから』

『ふーん……まぁいいや。僕も気になるし、調べてみるよ』


 というようなやり取りをした後に、貧民区へと足を運んだわけである。

 シグルドの仲間集めを手伝おうという気は毛頭ない。だが、転生者のシグルドの強さはウチ自身が見た限りでは異常なものやった。

 一般人とは言われへん強さを持つ力。転生者。

 シグルドが言うことがホンマやったら、この世界に数名の転生者が存在している可能性があるということになるやろう。やとするなら、ウチが非合法の依頼やらをする限りそのどこぞの誰かともわからん強い転生者さんらと戦闘することになる可能性もなくはないということや。

 それならば、予め情報は知っといたほうがええやろう。

 ウチかて非合法の依頼を実行してたら強い奴現れて殺られてもうたわー的な状況になりたくはないからな。


「にしても……ホンマ、情報提供者さんどこおるんやろ?」


 貧民区で数時間、情報提供者さんを探し回ってもう夕日が沈みかけてるぐらいの時が過ぎてる。

 真っ赤な日の光が明るいわー。ウチお腹すいてきたんやけども……。

 貧民区は以外に広いけどその分、人が住まう居住区は少ない。というか、家と呼べる建物が貴族区、平民区と違ってあまり建てられていない。

 というかそもそも、ほとんどが廃墟か崩壊してるから家とも呼べない。そのおかげで、人探しは楽な方かなぁと思うてたんやけど……どうもウチの予想は的外れやったらしいわ。

 やっぱ人探しは疲れる。

 何より、手配書に描かれてる人をこの広い貧民区で探すのが一苦労やわ。こんなんやったら、シクロアに頼んでウチはテキトーに宿屋で休んどいたらよかったなぁ。

 次からはそうしよか。うん。そのほうがええわ。


 とりあえずは、貧民区周辺は見て回ったし、今度は誰かに聞いてみたりした方がええんやろうな。聞き込み調査いうやつ?

 シクロアが言うには、この手配書の情報提供者さんは結構有名な人で貧民区の人なら誰でも知ってるという。

 まぁ、その情報提供者さんの手配書には名前いうか通り名みたいなもんが書かれておるわけで、その通り名は『蒼電のレイラ』と呼ばれている。

 何故そのようにと呼ばれているのかという興味がないわけではない。なので、話してる途中にでも聞いてみてもいいかもしれない。



 何にしても、まずその情報提供者さんをみつけなければ話なんてできないんやけどもね。

 やから、通り過ぎたり、崩れかけの建物におった貧民たちに話掛けてみた。その結果、


『蒼電のレイラ? 知らんな』

『そこらへんにいるぜぇー…ヒック』

『あん? あんな泥棒に会いてえなんて物好きだな』

『そんなことより、金くれよねーちゃん』


 といった具合になったのでとりあえず、全員ボコった。

 誰や手配書とかみせたら教えてくれる言うた奴。

 全然教えてくれへんやん。というか、貧民の皆さん全然知らんやん。どないなっとんねーん!!

 と叫びたくなる結果になったわ。

 シクロアが言うには有名人やから聞いたらすぐ見つかるはずて言うてたんやけど、どうやらその情報は嘘みたいや。よし、後でシクロアに会ったら一発殴っとこう。攻撃力MAXで。

 しかし、聞いた情報があてにならないとなると次はどうしたもんかと考えてしまうな。

 いっその事、貧民区の誰かを人質にして、その情報提供者さんを探させるかそれとも、貧民区で暴れ回って騒ぎ立てようか?

 いや、でもさすがにそれはでけへんな。

 貧民区には人があまり近寄らない言うても、騎士団の目が行き届いていないとは限らへんし、何より騒ぎ出した貧民たちが騎士団の連中を呼ばへんとも限らんやろう。

 それこそ、非合法の依頼をこれからやろういう時にそんなことになったら余計に動かれへんようになってまうからな。


 というか、わざわざウチが騒ぎ起こさんでも相手の情報提供者さんが騒ぎ起こしてくれたらええやない?

 そうすれば、ウチは騎士団に目ぇつけられんで済むから今回の依頼も楽に達成できる。それに、情報提供者さんは泥棒?という有名人やから目立ってもさほど問題にならんやろう。

 まぁ、そういう冗談はやめとこう。

 だってそれこそ情報提供者の奴が騎士団なんかに捕まってもうたら、依頼どころの話ちゃうやろ?

 でもさすがにこのまま会えず仕舞いは不味いし、何か派手なこと起こして群衆でも呼び寄せたろかな?


 というような、危険な事を考えていた時だ。

 考えていたことが実行されたかのように、何処からか大きな爆発音が鳴り響いた。

 その爆発音のなった方角に目を向けると、なにやら黒煙が立ち上がっているじゃありませんか。

 ウチは火事か何かだろうかと思うてボーっと眺めていたが、その黒煙から逃げ惑う貧民たちは逃げている最中こう言ったのだ。


『な、なんだよあれ!』

『おい! 向こうでレイラが暴れてるってよ!!』

『はぁ!? そりゃまた、なんで?』

『知るか!! とにかく、俺たちも逃げねぇとやべーよ!!』


 ……ごめん、やっぱ無しで。

 いや、いやいや待って。何なん?なんでなん?

 確かに何か騒ぎ起こして目立ってくれれば見つけやすい言うたんウチやけどさ。まさかホンマに向こうから騒ぎ起こしてくれるとは思わへんやん。

 というか、さっき逃げてった連中、絶対騎士団呼びに行ったよな?

 あかんやつやん。捕まるやつやん。なんでやねん。

 

 ウチは内心焦りながらも、黒煙が立ち上がっているエリアへと足を運んだ。

 



――――──────―――――――――――――




 黒煙が立ち込めるエリアへと辿り着いたウチは建物の物陰に隠れながら、周囲の様子を伺っていた。

 逃げ惑う貧民たちが言うには、情報提供者のレイラは此処で暴れているということやったので、今現在の状況はどうなってるんやろ?と思ったからの行動である。

 何より、自分の身の安全と厄介事に関わることを避けるためでもある。


 情報提供者のレイラが暴れてるということは、何かしら暴れる必要がある状況が起こった可能性があるわけや。例えば、騎士団に見つかってもうたとかね。

 レイラは聞くところによる泥棒やし、その状況がありえないという事もないわけであり、戦闘している相手がもし騎士団の連中ならウチも迂闊には手を出されへんということや。


 しかし、その心配はどうやら杞憂で終わりそうや。

 黒煙が立ち込める場所を隠れて覗いてると数名の姿が確認できた。

 まず、三人の見知らぬ男勢。

 騎士団ではないようやけど、その内の二人は多分、何処かの警備兵やろう。んで、もう一人は雇われた傭兵のような出で立ちである。

 ウチとしては、騎士団やないだけマシやけどね。

 そして、その男勢三人に相対するのは、噂の情報提供者の蒼電のレイラ。

 ウチが持ってる手配書によく似た容姿をしており、なかなかの可愛らしい人物や。

 ……そして、その可愛らしいレイラの隣におったのは、ウチがつい最近知った人物。転生者(仮)のシグルドやった。


 なんでやねん。

 ウチ的にはもう会わへん気でおったんやけど。

 というか、絶対なんかトラブルに巻き込まれてるやろあの人。

 トラブルに巻き込まれる天才かあいつは。……いや、ウチも人のこと言われへんけどな。

 しかもなんか、片膝ついてるし疲れてるし、やられかけか? 力強いはずやのに?

 ということは、相手の傭兵さんは意外にも高レベルの相手いうことか?

 またはシグルドを凌げる術を持っているとか?

 何にしても、今出ていくんはあかんな。

 もうちょっと、事の成り行きを見守っておこう。


「時雨流の使い手と聞いて期待したが、まだまだ未熟のようだな。そんなことでは、俺には勝てんよ」

「くそ……この野郎」


 雇われ傭兵は、相手をしたシグルドを見下しながらそう言い放った。そして、シグルドを放っておいてすぐ近くのレイラへと目を向けた。


「さて、俺の雇い主さんは貴様を捕まえるように申してきたんでな。捕まえれるならどんな手段を使っても構わないとな」

「……だから、貧民区の子供たちを狙ったの?」

「ああそうだ。貧民区のガキどもを餌にすれば、貴様が食いつくと思ってな。どうだ、いい作戦だと思わねぇか?」


 不快な笑みを見せつけながら、雇われ傭兵はレイラの後ろに隠れていた貧民区の子供達に向かって右手で所持していた刀を見せつけるように向けていた。

 ふむ。情報を整理するにどうやらあの雇われ傭兵とその一行が、貧民区の子供達を襲ったんやと思われる。

 んで、それを助けるためにあの情報提供者のレイラが暴れて、何かしらの爆発まがいなことをしたということやな。それで、多分……そこに居合わせたんかどうかようわからんけど、それを目撃したシグルドがレイラと子供たちを助けたってとこやろか?

 そして雇われ傭兵に負けたって感じかな?

 まぁ、ウチ的にはシグルドが負けても別にええんやけど……ウチが製作したフェイドソードを使用して負けられるんは癪にさわるな。

 次あったら説教や説教。


「いい作戦、とは思えないわね。関係ない子供達を巻き込むなんて、どうかしてるわ」

「ふん、泥棒風情が綺麗事を抜かすな。貴様も雇い主の売った品を手段を選ばずに盗んでいると聞いているぞ」

「それは……!」


 レイラは雇われ傭兵の言った事に、言葉が詰まってしまった。

 んー、情報提供者が泥棒ってどうなんやろ? まぁ、情報を知ってるんやったら別に相手が泥棒やら暗殺者やとしても構わんけどな。

 ウチ強いから、もし襲われても撃退できるし。


「まぁ、そんなことはもうどうでもいいがな。

 で、どうするお嬢さん? 抵抗さえしなければ、貴様の後ろにいるガキ共には手を出さないと約束しよう」

「……もし、抵抗すれば?」

「無論、貴様以外は生かしておけないな」


 うん、聞いてる限りの悪党っぷりやね。

 清々しいくらいや。

 え? いやいや、ウチはこんなやつとちゃうで?

 やるんなら情けかけんと綺麗に潰すで?


「……本当に、手を出さないんでしょうね?」

「ああ、約束しよう」

「なら、あなたたちの要求通りに……す――――」

「すんじゃねーよ!!」


 レイラの言葉を遮るように、シグルドは大声で叫んだ。

 片膝をついて、下を向いていたのだが大声を出した後にゆっくりとふらつきながら立ち上がった。そして、今現在相手にしている傭兵を睨みつけていた。


「レイラ! お前、こいつらの要求を簡単に受けてんじゃねーぞ?

 お前がいなくなればここの奴ら……特に、子供たちはどう思う!!」

「……でも、拒絶すれば皆……貴方だって、殺されちゃうんだよ!!」


 殺される。それがさも当然かのようにレイラは叫んだ。

 確かに、冷静に考えてみればこの状況は非常に不味いやろうね。

 シグルドたちが相対している傭兵は少なくとも何人かは殺してるような奴やろう。やから、レイラに言うたように、この場のシグルドや子供たちを殺すことも簡単にできると考えてもええ。現にシグルド自身もこの傭兵に倒されかけてる。その手段はうちは知らんけど相当できるやつということには変わりないやろう。


しかし、シグルド自身はそうは考えていないみたいだ。


「殺される、か。……確かに、アイツにはそれが可能かもしれない。

 だが、俺は……俺の流派は、殺されるのを黙って見過ごすような流派じゃねーんだわ」


 シグルドはそう言いながら、自分に攻撃をした傭兵に剣……魔道具フェイドソードを向けた。


「貴様。格好つけるのも大概にしろよ? そんな未熟な技で俺の神嵐流の剣術が防げるとでも思ってるのか?」

「あぁ、思ってるね! 

 少なくとも今ならアンタに一太刀浴びせることができると思うが、やってみるか?」

「戯言を……!!」


 シグルドの挑発に苛立ちを隠せなかった傭兵は、持っていた刀をシグルドに向けて構えた。


 そして、数分ぐらい静かな時が過ぎたが、先に動いたのは神嵐流の剣術を自称する傭兵の方であった。

 神嵐流は、攻撃こそ最大の防御と考え剣術の全ては数多の攻撃を繰り出す剣術であるが故の行動であるだろう。

 簡単に言えば攻めてなんぼという事だ。

 そしてその剣技は武器に炎を纏い、攻撃をする際にはその攻撃が躱されたとしても炎を纏った武器はその近くに寄るもの全てを焼き続けるという。

 傭兵も自身の刀に炎を纏い、そして攻撃をするスタイルである。


「神嵐流剣術……炎舞、散嵐!!」


 傭兵のその言葉とともに、シグルドに放たれたのは炎を纏った刀の数多の刺突である。

 端から見た限りその光景は、刀自体が数十本で刺突されているような剣技である。対するシグルドは、フェイドソードを真横に構えて真正面から受けて立つような構えをした。それで全ての攻撃を受けきる。とでも言うような感じだが、実際は違った。


 傭兵の刀による数十本くらいにみえる刺突攻撃を、シグルドは剣の広い面部分を使い、炎を纏った刀の刺突攻撃を受け止めたと同時に、真横に面の部分を見せつける剣を若干斜めにし、剣と刀が擦れる音を出しながらも、シグルドは体制を低くして、受け流し、流れるように傭兵の懐へと入り込んだ。そして、


「時雨流弐ノ型、―――流傾時雨!!」


 懐に入ったシグルドは、傭兵に一太刀喰らわすように時雨流の剣術の剣技を叫んだ。


 しかし、それと同時に、初級炎魔法のファイアボールがシグルドに向かって飛んできた。

 それに気がついたシグルドは、すぐさま剣技を止め防御に回ったが間に合わず後方へと飛ばされた。


「な……んだと?」

「シグルド!」


 飛ばされたシグルドを心配して、レイラはシグルドの方へと駆け寄っていった。

 さすが、人間やな。騙し討ちもお手のもんということや。

 シグルドは敵を傭兵だけやと思ってたようやけど、傭兵以外の二人は魔法も使えるようで、そのうちの一人が初級炎魔法のファイアボールを発動させたんやろ。んで、傭兵に一太刀浴びせようとするタイミングを見計らって魔法を当てたということや。シグルドもまだまだ甘いようやけど、それを考える敵はクズやな。

 剣士としては、まったくもってつまらん結果に終わったいうことちゃうやろうかこれは。


 どうやら、ウチの予想は当たったらしく。傭兵の方は少々お怒りのようや。顔がすごい歪んではるわ。


「おい、貴様。何故魔法を使った?」

「こんな茶番に付き合うほど俺たちは暇じゃねえからな。それに、あの生意気なガキには少し痛い思いをしてもらおうと思ってな!」

「ふん、まぁいいだろう。……手間が省けたわ」


 いやいや傭兵さん。絶対そう思ってないやろ?

 めっちゃ嫌な顔してたやん。絶対、あの警備兵後で殺されるわ。


「さて、今度こそ一緒に来てもらうぞ?泥棒……いや、蒼電のレイラ。でないと……わかってるな?」

「……分かった。分かったからここの子ども達には手を出さないで」

「あぁ、俺は約束は守る。……それと、その男も捕縛しておこう。後で騒がれても厄介だしな」

「な……!? シグルドは、関係ないじゃない!!」

「残念だか、こいつは貴様とも関係あるようなのでな。依頼に影響を及ぼす不穏分子は手に届くとこに置いときたいのさ」

「……くそ」


 傭兵と警備兵はシグルドを縛り、そしてシグルドとレイラを連れ去ろうとしているようだ。

 

 さてはて、どうやら情報提供者のレイラさんはどっかにつれてかれるみたいやねー。シグルドと一緒に。

 まぁ、シグルドは別にどうなっても構わへんねんけど、情報提供者であるレイラを連れて行かれるんは非常にまずいな。かといって、今助けに入ったとしても多分、あの傭兵さんを倒すんは少々骨が折れるな。警備兵二人はなんとかできるとしても、それこそ時間がかかりすぎる。

 先程の貧民区の爆発で貧民の連中が騎士団を呼びに行ったやろうから、そろそろ騎士団の数名はこっちに向かってくるはずや。情報とかまだ聞いてないのに騎士団に見つかるんはさすがにまずいよなぁ。

 んー、どうしたもんか。


「おい」


 この際、あいつらを尾行するっていうのはどうやろうか? それならこの場で時間を無駄にせず騎士団に見つからずに済むけど……


「おい、貴様。聞こえているのか?」

「うるさいなぁ、さっきからなんやの? ウチ考え事してるんやけど……って、どちらさん?」

「貴様が今隠れて覗き見している奴らの仲間だが……貴様は何者だ? 返答次第ではただじゃ済まさんが?」


 おっと、まさかのもう一人おったんかーい!!

 いやいや、まぁ確かに考えたら他に仲間おることぐらい考えれるか。でも、今ここで暴れられたら面倒やしなぁ。それこそ、向こうにいてはる仲間呼ばれたら災悪やな。そないなことされたら、ウチの尾行計画がって……いや、これはもしかするとチャンスやない?


「どうなんだ? 答えろ!」

「あ、おにーさん!今後ろにレイラの仲間が!!」

「な、何ぃ!?どこだ!!」


 ウチの言葉をきいて驚いた警備兵はウチに背を向けて、居もしないレイラの仲間を探した。

 その隙を見逃さなかったウチは、勿論容赦なく、力を込めて持っていた黒い槌で警備兵の頭を鎧ごと叩きのめしたのだった。そして……



「ん? おい。遅いぞ貴様。何をやっていた?」

「スマンスマン。子どもに物をぶつけられたので、大人の世界を思い知らせていた。」

「おいおい、どんくせぇやつだな。……それで兜が凹んでんのか? 格好つかねぇから帰ったら新調しとけよ?」

「あぁ、わかったわかった。んじゃ帰るぞ。帰って依頼報告して飯にするぞー」

「……いや、帰ったら飯にはするが貴様。そんな声だったか? もっとこう図太い声だったような気が」

「き、気のせいだろ? ほら行くぞー」


 いや、うん。鋭い同僚やな。

 まぁ、ウチに変装技術とか言われてもそないなこと無茶やけど……この状況では仕方ないやろう。できるだけ、バレへんように傭兵の後ろについとくというのが条件やけどね……。


 傭兵は前を歩き、その後ろにレイラそしてその後ろがウチ。他の2人は縛ったシグルドを交代で運ぶ為に後衛を並んでいた。

 そして、傭兵の進む後を、レイラ、シグルドを含んだウチ(警備兵)は何処かへと足を運んでいくのだった。



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