5話 闇商人の対価
商人や冒険者、または貴族や平民や貧民というお客等で賑わった街、アズガルド。
いつも通り、商人たちはあれやこれやの手段で商品を売ってはるみたいで全くもって騒がしい限りである。一種のお祭り騒ぎ的な感じやな。
あぁ、でもお祭りやともっと騒がしくなるか。
因みに、ウチとシグルドはんはお察しの通りすでにアズガルドに到着しております。
今朝方はやくに起床して、準備をすまし、ウチの研究所から出発。
北へ北へと徒歩で数時間ほど歩きます。魔物に出くわして討伐。まぁ、魔物言うてもレベル的にはウチらよりかは低かったし、シグルドはんの剣術もそれなりの強さやったから楽勝やったんやけどね。
それに研究所からこのアズガルドの距離で危険になるような魔物はそうそう現れん。その距離で注視すべき危険と言えば、魔物の軍勢である。
時折、ウチの研究所からアズガルドまでの距離には魔物の軍勢が現れることがある。魔物のレベルが弱いとはいえ集団で襲われると、普通の人が一人やったり、商人の馬車はまず生きてはいまいだろう。
ウチかて、レベルは高いけど魔物の群れに出くわすと全滅させるのは一苦労である。なのでシグルドはんとアズガルドへ向かったわけやけど、どうやらその必要はなかったみたいや。
「んで、ミハル。……ほんとに、この魔道具貰っていいのか?」
「フェイドソードのことか?ええよぉ別に。
どうもそれは、シグルドはんに馴染んでるようやし。ここまで安全にこれたお礼でもあるからね」
というような表向きの理由を言っているが、正直アズガルドまで来る際に魔物を倒しに倒しまくったおかげで、商品としての価値が無くなったという理由が本音でもある。
もともとあのクレーマー達の交渉材料やったけど、交渉が決裂したおかげでこのフェイドソードの処理に困ってたことも確かやし、丁度ええということには変わりないんやけどね。
何にせよ、アズガルドには到着した。
ならもうシグルドと一緒に行動することはないと考えたウチは、自分の目的を果たそうと思い、アズガルドの出入り門で別れようとしたのだが、
「ちょっと待て、こんな人混みの中で仲間探せとか鬼畜だろ!!」
「いや、知らんやん」
というやりとりをした。
つまり、今現在も一緒に行動中である。
ウチとしてはすぐさま目的を達成して研究に没頭したいんやけども、このままウチの後をついて来られるのも面倒なんで、シグルドはんをある場所へと誘導中。
人混みの中を突っ切りながら、ウチとシグルドはんはとある場所に赴いた。
そこは、商業区から少し離れた中央街道区。
商業区は様々な商店が多く存在するが、この中央街道区ではこの世界の街全てに存在する『ギルド』という組合がある。
ギルドは、船や商会、鍛治等といった専門的な事をする組合である。この街、アズガルドでも数は少ないがギルドが存在しており、また必ずといっていいほど冒険者が必要とするギルド『冒険者ギルド』も存在するのだ。
「なるほど、冒険者ギルドなら確かにいろんな奴の情報が得られるな」
「まぁ、シグルドはんが探してる転生者の情報があるかどうかは知らんけど、それなりの情報は期待できるんちゃう?
それに、この機会に冒険者登録でもしとけば何かと便利やと思うけどね」
「そうだな。それに、この手の仕事っつーか憧れを抱いてる奴もいるからな」
「そうなん?おにーさん、冒険したいん?」
「いや俺じゃねーよ。俺の友達の方」
「ふーん、変わった友達なんやな」
「まぁ、変人だからな」
変人が友達ってどうなん?
いや、まぁウチにも変な知り合いはおるから他人のこと言われへんねんけども……。
シグルドの友達言うことは、もしかすると転生者という可能性もあるということやろうし、一応気をつけといたほうがええか。色んな意味で。
何にせよ、とりあえずはシグルドはんを冒険者ギルドへと導いたから後のことは自分次第言うことや。
ウチにも用事があるしな。
「ほな、シグルドはん。
今からウチ別行動させてもらいますわ」
「あぁ、ミハルにも用事あるんだっけか」
「せやでー、やから転生者探しはシグルドはんだけでやるんやでー」
「はなからそのつもりだよ。
……まぁ、ここまで連れてきてもらったことと、この魔道具くれたことには感謝するよ。ありがとさん」
「はいはい、ほなさいない」
そういうやり取りをしたあとに、ウチは冒険者ギルドを後にした。
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商業区の路地裏。
そこは表の通りより人気がなく、よそから来た人間が迷い込むと必ずと言っていいほど貧民のゴロツキ達に襲われる場所である。襲うといってもその殆どが身ぐるみ剥がされたり等の軽犯罪だ。よそから来た人間以外にも、貴族も迷い込むとその対象となる。貧民の中には貴族を恨んでいる者もいるらしい。
「まぁ、襲われたところでウチ……強いから問題ないんやけどな」
路地裏の通り道には、ウチに挑んで簡単に倒されたゴロツキ達が転がっていた。
シグルドと分かれたウチは、商業区の路地裏へと足を運ぶ。目的の店が商業区の路地裏にあるからだ。なのでこの路地裏を通らなければならなかったんやけど、どうもこの路地裏に都合よくたむろってたみたいで、ウチはすぐさま絡まれました。
多分、よそから来た人とか思われたんやろうねー。実際のとこよそから来たのは来たんやけどずっと前やからね。
それに、アズガルドに住んでないから顔も知らんわけや。
あぁ、でもよう顔合わすゴロツキ達には知られとるかな?今はおらんみたいやけど。
さてはて、今現在ウチが向かってるところは魔石や武具を売ってくれる商会のところです。勿論、こんな路地裏に店を構えてる時点で普通の店ではないことは確かです。
結果的に言うたら闇商人が営業してる店やねんけど、その店は普通の店と違って希少な魔石や武具を売ってくれるとこです。因みにもひとつだけ言うとくとウチ……と言うか、グランディア家のほとんどがその店のお得意様になってはるんよね。
何故かとか聞かれるとどう説明したもんかと迷うんやけど、とりあえずは高い金を払わんでも希少な魔石や武具を売ってくれるということやろうね。まぁ、“高い金”はやけどね……。
「っと、ここやな。……にしても、相変わらず趣味が悪い看板やなぁ」
紫というか何というか、見た感じはドロドローと謎の液体が乗っかってるというか……そもそも、これは液体なんやろうか?魔物とかやないやんな?いや、確かにドロドロしてる魔物とかおるけどさすがに……。
何にせよ、ここ『シアン闇商店』の看板は見た目最悪なんよねー。
とりえず、奴がおるか確認するためウチは扉をノックした。
「すんませーん、誰かいはりますかー?
いつもながら勝手に入りますよー?」
じゃあ何故聞いたとかツッコまれそうな気はしなくはないが、これがいつも通りの対応なのだ。
いつもどおり、誰がいるのかを確認して、
いつもどおり、勝手に店の扉を開けて、
いつもどおり、怪しい店に入り、
いつもどおり―――
「ミッハルちゃ~ん!会~いたかっ「去ねっ!!」」
……いつもどおり、シアン闇商店の店主、シクロア・シアンの鳩尾目掛けて黒い槌を全力で振るったのだ。
ウチの攻撃を受けたシクロアは、大きな音を立てながら店内へと転がった。
うん。変態さんには丁度ええな。まぁ、死んでもらったら困るんやけど、この程度の攻撃じゃ指南相手なんで問題ないやろう。……多分。
「あ、相変わらず、容赦ないよねミハルちゃん」
「……チッ、生きとったか」
「わーホント怖いなミハルちゃん」
シクロアはそう言いながらも、何事もなかったかのように立ち上がって土埃を払った。……全力で鳩尾に向かって攻撃したつもりやねんけど、どうやら服の下に防具を着用していたみたいや。シクロアが付けていた防具は鳩尾部分が凹んでいた。
彼はこの店の店主であるシクロア・シアン。黒色の長髪を一つに結んで、丸眼鏡を掛けた馬鹿である。そして、何故かウチにすごいちょっかいをしてくる変態さんでもある。
シアン家はグランディア家が魔道具製作の際に魔石や武具の提供に協力してくれた事があり、これを機に顧客契約をしたのだ。そして今は、シアン家の二代目であるシクロア・シアンもとい変人が店主として営業をしている。
初代のシアン家は表向きに店を営業していたらしいが、時代の流れと共に闇商売をすることもあり、最終的には闇商売一筋となったと聞く。
ウチとしては、表や裏の商売がどうとか知らんし、研究に使う材料を売ってくれるんなら別にええんよ。
でもな?それでも、この店の悪いとこを言うとするなら……
「何で、こんな変態が店主やっとんねんやろーな」
「愚問だね、そんなことは簡単だよ。
だってこの店にいれば、ミハルちゃんに会えるんだから!!
これ以上の幸せが何処にあるというんだ!!」
「ウチやなく、他の人を幸せにしてあげたらええと思うよー」
「そもそもの始まりは、僕が齢12歳の時! 当時、父上の店を継ぐのが嫌だった僕は、嫌々ながらも闇商売の手伝いをする事となったので隙をみて逃亡をはかろうと考えていた」
「いや、真面目に働きぃや。というか話聞いてー」
「だけど!その時にお客として来てくれたミハルちゃんのお父様についてきた幼いミハルちゃんを確認した瞬間に僕は、心を射抜かれたのさ!!
そして気づいた、僕はあの時、あの場所でミハルちゃんに恋をしたのだと!!」
つまりその時にロリコンに覚醒したんやな、この変態。
幼い頃のウチはどうやら父親にべったりやったらしいね。そして残念なことに、この頃以降からシクロアはよくウチの家に遊びに来るようになったとか……おかげで、シクロアのことは苦手な知人として認識している。
まぁ、言うてしまえば消し去りたい知人No.1ということや。今のところやけど。
「あー、その昔話はそのへんでええから、仕事しよーや」
「おっと、そうだったね。
僕としたことが、本人を目の前にしてテンションが上がってしまったよ!!」
いやぁ、ホントにうざいテンションやわー。
いっそ店ごと潰したろかと思うくらいの殺意が湧いてくる。……殺ったらあかんかなぁ。
殺るんやったら証拠も残さへんようにちゃんと跡形もなく消し去らなあかんけど、魔石や武具を買うにはここしかないやろうし。
「因みに、対価はミハルちゃんとの婚や―――」
「もっぺん殺られたいんか?」
「というのは冗談だよハニー」
次変なこと言うたら容赦なく殺ろう。うん。そうしよう。
―――――――――――――――――――
「希少な魔石と武具、ねぇ」
「無いん?なかったら別にええねんけど」
「いや、あるよ。あるある!でもそうなると、対価がすごいことになるって話さ。
例えば、暗殺、破壊、社会的抹殺とかそういうレベルの対価だよ」
なるほどね。
つまりシクロアは、希少な魔石と武具の対価である非合法な依頼をウチにやらしてもうてええのか確認してはるわけやね。
今までは希少な魔石を少量、武具を購入等やったから比較的に合法的な依頼が多かったけど、今回は希少な魔石と武具の両方。そりゃ対価はえげつない非合法の依頼となるやろう。
それに非合法となると、何かと騎士団やらそういう取締りの人らに目付けられたりするらしい。そういう理由もあるので今までは非合法な依頼とかは遠慮していた。
というか、ウチの性格上邪魔する者はほとんど身体障害か恐怖を植えつけたりしてきたから非合法な依頼を行うと目をつけられてもおかしくないレベルである。
と言っても、シクロアの場合は後処理は完璧に行ってくれるので別に問題はない。あるとするならば自分の欲を優先するかもしれないところだ。
まぁ、シクロアが公私混同するより先にウチは非合法の依頼を喜んで実行するやろうけどね。
「別にええよ。
シクロアさえ後始末を完璧にするんならウチは非合法な依頼でも請負うでー」
「するする。というか……しなければ逆に僕がミハルちゃんに殺られちゃうでしょ?」
「勿論やん」
ウチが即答すると、シクロアは苦笑いをした。
当然やろ。
後始末を完璧にするということでこの非合法の依頼を請け負うのだから、もし条件と違ってウチに目ぇつけられたりするもんなら条件と違う=裏切りにも等しい行為である。やったら、シクロアは裏切り者として潰すしかないやん?
まぁ、そうならんと信じてるけどね。
「で、そろそろ本題に入りたいんやけど、その対価とやらはどういう依頼?」
「そうだねぇ、ミハルちゃんが求めてる希少の魔石と武具の対価となると……あれでいいかなぁ」
シクロアは店に置いてある戸棚を探り、分厚い本を手にとった。その分厚い本には何枚か紙が束になっておりそして、分厚い本のからある羊皮紙を一枚取り出した。
その羊皮紙は、冒険者ギルドで見かけるような依頼が書かれた羊皮紙と少々似ていた。
言わば依頼書みたいなものだ。
まぁ、希少な魔石や武具の対価が非合法とは言え、依頼なわけであるからこういう似たようなことをするのも当然といえば当然だろう。冒険者ギルドみたく依頼にランクのようなものがないのは非合法な故やろうけどね。
とりあえず、ウチはシクロアから渡された依頼書を手に持ちながら眺めた。
「依頼内容は、とある商人の社会的抹消もしくは暗殺だね。
依頼主は教えることはできないけど、この依頼を達成してくれれば希少な魔石と武具は大量にゲットできるからそこは安心していいよ~」
「……社会的抹殺か暗殺て、もう殺っちゃってもええんちゃうんか?
というか、そのとある商人さんめっちゃ恨まれてるやん。何したんよ」
「いやーミハルちゃんの疑問はもっともだけど、簡単に殺っちゃえない商人さんなんだよねー。
どうもその商人さん、凄腕の傭兵さんを雇ったみたいでその傭兵さんの目を掻い潜って殺っちゃうのはまず不可能なんだよねー。
まぁ、簡単に殺っちゃってくれたらそれこそ騎士団とかの目がついちゃうかもしんないから依頼内容は社会的抹消か暗殺になったのさ」
確かに、シクロアが言うように簡単に殺してしまえば注目されるだろう。
例えばそのとある商人が商売をしているとこをウチが訪れて殺っちゃうとしよう。するとどうなるか?
答えは簡単。すかさず注目の的となり、周囲一体は騒ぎ出す。そして、その情報は自ずと騎士団へと行き渡り、すぐさまウチを確保しようとするだろう。
ウチの力なら、騎士団なんてもんは簡単に潰せることができるやろうけど、その後に目をつけられたりするのは困る。魔道具の研究はウチにとっての生きがいやからな。邪魔されるんは何かと面倒や。時間の無駄になるやろうし。
「さすがに、騎士団に目ぇつけられるんは嫌やし。簡単に殺ることは無いよ。
請け負ったからにはちゃんと依頼内容に従うわ」
「だと思ったよ。
あぁ、それとこのとある商人が目標になってる理由は、簡単に言ったら詐欺が原因だねー。
多種多様の魔道具を売買してる他に、自社ブランドも売買してるんだけど……その自社ブランド製品が問題でね。
その自社ブランド製品の元は使い古された魔道具。
中古の魔道具は使い古されてるし壊れてるものもあるけどテキトーに修理して、外見だけあたらしくして自社ブランドですよーと言っちゃえば簡単に売れちゃうのさ。
まぁ、それを自社ブランド製品と勘違いして購入しちゃう客も客だけど」
つまり、その商人さんは古い魔道具をテキトーに修理し、外見だけ新しく変えて自社ブランドやでーと嘘付いとるわけだ。
魔道具には中古の商品もあるが、それはそれで安い値段で販売されとるから合法やけど、今回の件は古いものを何かしらの技術で新しくして売ってるという詐欺まがいの内容だ。
そりゃ、暗殺とか依頼されるやろうね。……主に騙されたお客とかに。
「因みに、使い古された魔道具言うことは、どっかのゴミ捨て場とかから持ってきたもんか? それともどっかの中古屋さんとかと連携しとるん?」
「んー、まぁ僕もそっちの線で考えて調べてたんだけど……残念ながら、そういった協力関係にある中古屋はないし、かと言ってアズガルド付近で使い古された魔道具が溜められてるゴミ捨て場とかの存在は確認されていないんだよねぇ」
「じゃあ、何で使い古されたもんやと?」
ウチの疑問に対して、シクロアはもう一枚の羊皮紙を分厚い本から取り出して渡してきた。
今度は依頼書というようなものではなく、何者かの人相が描かれた羊皮紙であった。
依頼書というよりこれは……手配書?
何か高価な値がついてはるし、賞金首かなんかやろうか?
「その紙に描かれた人は今回の情報提供者さ。
何でも、目的の商人が使い古された魔道具をどうやって入手しているのかを知ってるみたいでね。
詳しいことはこの人に聞けば早いかな」
「……って、聞いてないんかい」
「いやーだって、この人ちょっとした有名人だし。家も分からないんじゃ聞きに行けないからね。
というか、出会ったのも僕が情報探ししてる時に酒場で会ったぐらいだし。
情報を持ってるって言うから奢って、少し話聞いてたんだけど……途中騎士団が来たからその人逃げちゃったんだよねー」
なるほど、この情報提供者は騎士団に追われるような有名人ということやな。
手配書もあるみたいやし、盗賊かなんかやろうか?
賞金額は万単位やし、相当な厄介な奴なんやろうなぁ。いや、ウチも手配書とかに載ったら相当な額になるやろうけどな。
理由?そんなん厄介やからに決まってるやん。
別に張り合っているというわけではないが、事実今までの非合法の後処理はシクロアによって完璧に消されているわけであるので、もしそのシクロアの後処理がなければすぐさま騎士団に目をつけられて手配書とかも発行されていたであろう。そして懸賞金もバカにならないほどつけられていたと思われる。
いやうん。そこらへんはシクロアに感謝せんといかんな。ホンマに。
婚約とかそういう話は勿論なしやけどな。
「でも、その人が縄張りにしてる場所は知ってるからそこに行ってきて探してみるといいさね」
「縄張りて……その情報提供者さんの場所知ってはるんやったら自分で聞いてきたら良かったやろ」
「やだなーミハルちゃん。僕は非戦闘員だよ? わざわざそんな人が、貧民区に行ったら生きて帰って来れる補償がないじゃないか~」
「アンタ、そこは闇商人としてどないやねん……。
でもまぁ、場所もわかってるんならええよ。ウチが聞きに行くわ」
ちょっと面倒やけど、情報をくれるんなら問題ないやろ。この手配書見た感じは、その情報提供者さんもイカれてるような性格はしてへんと思うし。……多分。
まぁ、イカれていたらそれはそれでウチは引いてまうけどね。
「そういや、今回の依頼の目標であるその悪徳商人の名前は?
まだ聞いてなかったやん」
「悪徳商人って……まぁ、間違ってないか」
シクロアは少々笑いながらも、その悪徳商人の名前を告げた。
「その商人の名前はバグデル。ちょっとした名家のお坊ちゃんだよ」