魔法の練習をしました
家を抜け出した俺が向かったのは家から20分程の距離にある林の中だ。
大人の足なら10分で来れなくもないくらいか。
幼児は足が短いしすぐ疲れるし、大変だよホント。
何もする前からすでにちょっと疲れた。
この場所はサーナさんに買い物に連れて行ってもらった時に目を付けていた場所だ。
パンプキン家は町から少し離れている。
ハニエルパパが魔石製品の貿易商を行っている関係で町よりも少し港寄りに居を構えているのだ。
この世界は俺がいた日本の現代よりも文明が遅れている。
俺たち一家が住んでいるのは大陸中でも一番大きな街であるカレントに近いそこそこ大きな町で、言うなれば都会なのだけど、元日本人な俺の感覚からするとまんま田舎。
少し町を離れると街道付近でも結構深い林や森が広がっていて、草原なんかもある。
野生の獣も普通にひょいひょい出てくるので子供だけでは町の外には出してもらえない。
俺なんか家が町からも離れてるから家の外にも出してもらえなかった。こっそり出てきたけど。
町へ続く街道を少し外れた林の少し奥に木々が薙ぎ倒されて出来た小さい公園くらいの原っぱ。
昔猪の魔獣が出たことがあって何人もの冒険者を雇って討伐した。
ここはその跡。
魔獣の暴れた跡なわけだ。
魔獣というのは野生の獣が魔力暴走を起こして変異する化け物。
普通の獣の何倍もでかくて、凶暴性も増す。
なかには魔法を使うものもいるらしい。
俺は地べたに座り一息ついてから、スカートのポケットに手を突っ込んで中から布の袋を取りだした。
中身はハニエルパバにねだって買ってもらった色んな花や木の種。
それを無造作に地面に撒いて、イメージする。
まずはにょろって感じに出てくる蔦っぽい植物。
少しすると雑草の隙間から俺のイメージした通りの植物が生えてくる。
ここまではすでに慣れたものだ。
俺の魔力属性は土がメイン。
他の属性魔法、たとえば火とか水とかの魔法も使えなくはないが、
威力や消耗する魔力量が全然違う。
これは魔法書を読みあさって研究と練習を繰り返した結果分かってきたこと。
通常の土魔法というのはそのものズバリ土を動かす魔法で、土で壁を作ったり地面から土の針を生やしたり、より上位の魔法になれば土のゴーレムを作って動かしたりするものだが、俺の場合は土属性に適性のある人間に稀についてくる植物属性という特殊属性なるものもあったようで試しに本に乗っていた植物魔法を使ってみたら庭の木が枯れた。
それ以来俺の魔法練習は植物魔法メインになっている。
今では詠唱なしでイメージだけでの発動が可能だ。
俺は次に生えてきた植物をうねうねと動かすイメージをする。
よし、成功。
一歩離れて地面に落ちていた木の枝を投げ、蔦がそれを絡めとる。
成功。
準備運動は終わり。
ここからは家の庭ではできなかった練習をする。
まずは植物を大人の背丈まで成長させて、手の中に小さな火の玉をイメージ。
そう、今からするのは火の魔法。
どうせなら派手な火属性魔法やその他の属性魔法も使えた方がカッコいいだろっ!ってわけで。
土魔法以外は被害がヤバそうで庭では練習しにくかったってのもあったんだよ。
俺は火の玉を飛ばし自分で生やした植物を燃やす。
で次は水をイメージして火を消す・・・、ヤバい消えない。
もう一度っと。
ひたすら二時間ほどそれを繰り返した。