表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/38

生まれ変わったら2歳児でした

 ただ流されるまま一週間が過ぎた。


 最初の3日間はショックで茫然自失。

 その後の4日間はカルチャーショックで混乱と驚愕を繰り返しているうちに過ぎていった。


 が、さすがに一週間あれば人間ある程度理性を取り戻しもするし、状況判断もできる。


 結論から言うと、どうやら俺は交通事故で死んで生まれ変わったらしい。

 母親らしい金髪女性の言動から察するに、椅子に乗って遊んでいたところひっくり返り見事に後頭部から落下。意識を失った俺をベットに寝かせて医者を呼びに行こうとしていたところで叫び声が聞こえて慌てて戻ってきたらしい。

 つまり頭を打った衝撃で前世の記憶が戻ったと。

 ラノべなんかでありがちな設定であり、誰しも一度は生まれかわった自分を妄想したことがあるだろう。 妄想のなかでは往々にして現実の自分より見目よくなっていたり、チートな能力を授かっていて無双してたりする。俺なんかは一度どころか生まれてこの方100回くらいは妄想している。

 それこそありとあらゆるシチュエーションで。

 があくまでも妄想は妄想に過ぎない。

 いくら散々妄想でシュミレーションしていたところで、現実に自分に身に降りかかってみれば冷静に受け止めることなど簡単ではない。

 俺はそのことを己の身を以て学習した。


 ようやく現実をなんとか受け止めるのに__というか諦めるのに__3日。

 3日かけて俺は生まれかわったのだと、理解した。


 さて、生まれかわった俺だが、いくつか問題があった。


 一つは、年齢が2才であること。

 一つは、ここが異世界であるらしいこと。 

 一つは、性別が女であること。


 年齢についてはまだいい。

 むしろせっかく生まれかわって前世の記憶を取り戻したけどすでに爺さんだったとかいうよりずっといい。ある意味夢の若返りがかなってこれから新たな未来が広がっていくとか思えば早いうちに思い出したのは幸運だったと思えなくもないから。

 異世界というのも生まれかわりがあるくらいだからあり得るのか、と思えた。

 生まれかわりという超弩級の経験をしてしまっているせいで、感覚が若干麻痺している部分はあるのだろうが、案外あっさり受け入れることができた。

 もっとも生まれかわった自分を理解し、少し余裕ができたかと思えた途端今度は元の世界との違いによる多大なカルチャーショックに悩まされたのだったが。


 一番俺的に深刻なのが、性別が女だということだ。


 ちなみに前世の俺を簡単に説明すると。


 伊藤健司、17才、男。

 平々凡々で少しばかりオタクなどこにでもいる男子高校生。

 そう男である。


 考えてみてほしい。

 いたいけな2才の幼女の中身が17才の男。

 アンバランスな事このうえない。

 2才の子供、それも女の子が17才男子の言動をしていようものなら前世の俺は確実に「うえ、気持ち悪いガキ」と思う。よくて「変なガキ」だ。


 なので俺は2才の女の子になりきることにした。


「ティオナ、何してるの」


 窓枠によじ登り外を眺めていた俺を母親が抱き上げる。


「ダメよ。こんなところに登ったりして」


 ふわりといい匂いがする。

 俺は胸に顔を埋めてくんかくんか鼻を鳴らした。

 ついでに両手で胸をわしづかみ。

 ああ、幸せだ。


「もうティオナは甘えん坊ね」


 おぶぅ。

 奥さん加減を覚えた方がいい!

 ぎゅっと迫ってくる柔らかい凶器に窒息しそうで、ギブギブと両手をばたつかせていると、母親の後ろからまだ年若い青年と言うべき男性が笑いながら話しかけてくる。


「カタリナ、そんなにきつく抱きしめたらティオナが苦しいよ」

「あなた」


 青年は俺の父親だ。

 名前は知らない。

 だって母親は「あなた」と呼んでいるし、何人かいるメイドさんや執事っぽいおっさんは「旦那様」と呼ぶ。

 年は20代前半、濃いめの茶髪に切れ長の緑がかった青い瞳。

 若干ひょろいがなかなかのイケメンだ。

 母親よりもいくらか年下に見える。

 ちなみに母親は20代後半あるいは30代はいっていると思う。

 一見若く見えるが抱き上げられて間近に見ると隠しきれない小じわに気づく。残念。


 いや、美人なんだよ?


 俺はというと、完璧母親似である。

 金髪に水色の瞳、肩にかかる髪は癖毛でふんわり波打っている。

 我ながら将来有望といえるだろう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 2才女児になりきると決めた俺だが、しばらくはそれほど気張らなくてもなんとかなりそうな気がしている。何故なら今の俺は2歳児なのだ。

 17才男児らしくしようにも無理がある。

 言語はよくわからないし、身体も元のようには動かない。

 朝起きたら股とシーツがびしょ濡れだったくらいだ。


 記憶を取り戻す前のティオナとしての記憶も少しずつ思い出している。

 おかげで二歳児レベルのこの世界の言語や常識は身に付いている。


 俺は子供らしく人前ではおもちゃで機嫌よく遊んでみたり、母親に甘えてみたりしながら陰でこの世界のことを勉強していった。

 



 





 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ