知らない場所で目覚めました
目が覚めたらどことも知れない部屋に寝ていた。
木がむきだしの天井に、ぼんやりと光る石の入ったカンテラが釣り下がっている。
時刻は昼なのか、窓から入る日の光がカンテラよりも明るく俺の眠っている
ベッドを照らしている。 寝返りを打つとずきりと頭に痛みが走り、顔をしかめる。
どこかで頭を打ったのだろうか?
寝起きの為か記憶が曖昧で思い出せない。
ひとまず転がったまま、記憶を思い起こしてみる。
順を追って、今朝-いやもしかしたら昨日かも知れないか?-の事から思い出してみよう。
普通に起きて普通に出かける用意をして-そうだ、漫画の新刊が出る日だったから、いそいそ出かけていってお目当ての新刊を2冊買って家まで待ちきれず交差点の向こうに見えたファーストフード店に入って見るつもりで、信号待ちを・・・、
そこまで思い起こしたところで、あれ?となる。
もしかして俺死んだんじゃね?
いやいや待て。
生きてるだろ。
死にかけたけど助かった。うん、これだ。
俺が思い出した交差点での記憶。
それは信号待ちの列に突っ込んでくる大型トレーラー。
避ける間もなく突っ込んできたそれにおもいっきりぶち当たって飛ばされた。めちゃくちゃな痛みに声もでないまま多分意識を無くして、
ここにいる、と。
と、いうことは、だ。
ここは病院ということだろうか。
ずいぶん古風な趣だが、それ以外は考えられないだろう。
にしてはチューブを繋がれたりしてる気配もないし、医者の姿も看護婦の姿も見受けられないが。
しかし今俺はどういう状態なのだろうか?
大型トレーラーに撥ね飛ばされのだ。
それなりに大怪我を追ったはず。
内臓破裂や脊椎損傷くらいは覚悟するべきだろう。
そのわりには痛みがあるのが頭だけというのはおかしい。
神経がヤられていて頭以外痛みが感じれないとか?
いや、それなら頭は痛いというのもおかしい気がする。
それに、そう手足の感覚はちゃんとあるのだ。
なんだか変な感じはするものの、ちゃんとある、と思う。
試しに両手を握ってみる。
握って開いて握って開いて握って開いて。
動く。
足を動かしてみる。
バタバタ。
うん、動く。
けど、なんか違和感。
なんだか妙に軽い?
そっと頭を動かして、視界に入るだけの景色を見回す。
壁も床もむき出しの木造家屋。
俺が寝ているベッドの脇には小さなテーブルと椅子が一脚置かれていて、奥の壁際に古そうなチェストが二つ並んでいる。
目に見える家具はそれだけでテレビや医療機器らしいものは見当たらない。痛みをこらえて逆に寝返りを打つと、目に移ったのはベッドのサイドボートに置かれた水差しと布。
後は部屋のドア、それにドアの脇に立て掛けられた等身大の姿見。
俺は身体を動かすたびに大きくなる違和感に引きずられるようにゆっくりと起き上がる。
頭は痛いがゆっくりなら動ける。
我慢できないほどではない。
その事実がますます俺の頭を混乱させる。
大型トレーラーに撥ね飛ばされて病院に運ばれたはずなのに、我慢できる程度の痛みって、変だろう。
それとも大怪我が治るほどの長い時間眠っていたとでもいうのだろうか。
昏睡状態とか、植物人間とかってやつか?
それにしては身体はちゃんと動くが。
大怪我が治るほどの期間、それこそ何ヵ月か、-それとも年単位か?-もの間寝たきりだったとしたら筋肉が痩せ衰えて指先を動かすのも困難なものじゃないのか。
よくわからないが、ドラマとかではそんな感じだ。
とにかくまず目で見て確認を、と姿見に向かおうとベッドに腰掛けて足を床に下ろし・・・、愕然とした。
転がるように姿見の前へ向かい、あまりの衝撃に硬直。
「なんじゃこりゃ~!?」
俺の叫び声に「*******〜!」とよくわからない言葉を発しながら女性が一人ドアを開けて入ってきた。
慌てた様子で俺に駆けよる女性は看護婦には見えない。
金髪の髪に、水色の瞳。
どこかのテーマパークみたいな民族衣装。
ぎゅむっとなかなかグラマーな胸に抱きしめられ、推定2、3才な俺の身体は悲鳴を上げた。